バイオテクノロジー業界に激震、米ワクチン責任者辞任で-関連株急落

31日の米株式市場で、ワクチンやバイオテクノロジー関連の銘柄が大幅安。米食品医薬品局(FDA)の幹部ピーター・マークス氏の辞任表明を受け、ワクチンや最先端の遺伝子治療の今後を巡り強い不透明感が広がった。

  マークス氏は、FDAでワクチンなどの安全・有効性審査を担う生物製剤評価研究センター(CBER)の所長。新型コロナウイルス禍において、ワクチン接種イニシアチブである「ワープスピード作戦」で中心的役割を果たしていた。またワクチンのほか、希少疾患に対する新しい治療法、特に1回の投与で疾患を治癒し得る遺伝子治療薬の承認を巡り、より迅速かつ柔軟なアプローチを支持していた。マークス氏の辞任表明は28日遅くに報じられ、バイオテクノロジー業界には激震が走った。

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  キャンターのアナリスト、ジョッシュ・シマー氏はリポートで「ピーター・マークス氏は追い出された」とし、「これは良くない」と続けた。

  バイオ医薬品のモデルナは一時13%安。SPDR・S&PバイオテックETFは一時5.5%下げた。ほかにも米ノババックスや独ビオンテック、米サレプタ・セラピューティクスといったワクチンや遺伝子治療薬のメーカーが売られている。

  マークス氏は辞表の中で、ワクチンに対して長年にわたり懐疑的な姿勢を取っているケネディ厚生長官との摩擦について触れた。

  マークス氏は「私はワクチンの安全性と透明性に関する長官の懸念を対処するために働きたいと思っていた。しかし長官が望んでいるのは真実と透明性ではなく、誤情報やうそを従順に受け入れることだということが明らかになった」と記した。

  BMOキャピタル・マーケッツのアナリスト、エバン・デービッド・シーガーマン氏はリポートで、そうした変化はバイオテクノロジーやバイオ医薬品会社にとって「非常に大きなマイナス」だと指摘。それらの業界はFDAの独立性と科学的厳密性に依存していると説明した。

  シーガーマン氏はまた、「マーティー・マカリー医師がFDA長官として承認されたこと自体は前向きに評価しているが、反科学的な姿勢やFDAの政治化は同機関の使命に反するものだ」と記した。

原題:Biotech Industry Shaken After Top FDA Regulator Steps Down (1)(抜粋)

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