欧州債に売り圧力、安全保障強化で支出拡大観測-17日に首脳会議

17日の取引で欧州債が下落。パリで緊急に開催が決まった欧州首脳会議で、安全保障強化に向け支出拡大計画が示されるとの臆測が広がっている。

  ドイツ10年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、2.50%弱を付けた。フランスとイタリアの10年債利回りも同様に上昇。米国債市場は同国の祝日のため休場だが、先物は10年債利回りが4.50%を上回っていることを示唆する。

  フランスのアダッド欧州担当相はブルームバーグテレビジョンに対し、欧州の防衛費増額に対処するため、向こう数日間で欧州共同債を協議する必要があると主張。「ウクライナで起きていることは、欧州とその安全保障の将来にとって、存亡の危機に関わる重要性を持つ。また、どのように安全保障強化の資金を調達できるかを考えるべき時でもある」と語った。

  「このような非常事態に直面し、歴史的な決断を下す時だと思う。実際、例えばユーロ共同債は話し合うべき仕組みの一つだ」と続けた。

  パリでの首脳会議には、ショルツ独首相、欧州委員会のフォンデアライエン委員長と欧州理事会(首脳会議)のコスタ常任議長(EU大統領)、ルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長、イタリアのメローニ首相、ポーランドのトゥスク首相、スペインのサンチェス首相、デンマークのフレデリクセン首相、オランダのスホーフ首相、英国のスターマー首相らが出席する見込み。

  米国が対ウクライナ支援の意欲を失いつつあることを示唆する和平案を示し、欧州当局が軍事投資の強化を探るのではないかとの懸念から、投資家は欧州全域で国債利回りが上昇する可能性があるとみている。 

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、欧州主要国の国防強化とウクライナの防衛には今後10年間で3兆1000億ドル(約470兆円)の追加費用がかかり得ると推定。

  ダンスケ銀行のミナ・クーシスト氏らストラテジストは、「和平合意が金利市場に与える最大の影響は、ガソリン価格下落によるディスインフレ効果よりも、むしろ財政支出の増加によるものだ」とリポートで分析。「財政支出の増加は長期的にインフレ加速につながり、イールドカーブのロングエンドに圧力が加わるだろう」と指摘した。

  売り圧力はユーロにもかかっている様子だ。ユーロは月初からドルに対して1%以上余りしているが、米商品先物取引委員会(CFTC)の直近のデータによると、投機筋はユーロに対するショートを今年最高の水準に積み上げた。

  バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフマーケットストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「米ロの和平協議は、欧州に大きな負担を移管することになりそうだ」と指摘。「防衛費増額と相まって、これが欧州債の長期的な債券供給を押し上げるとの見方が多い」と述べた。

原題:European Bonds Fall as Fears Over Defense Spending ProliferateFrance Says Joint Bonds on Table to Finance European Defense (1)(抜粋)

(第2段落の相場を更新し、第3ー5段落にフランスのアダッド欧州担当相のインタビュー内容を加えます)

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