ChromeはGoogleに依存しているため「他企業がChromeを効果的に開発することはできない」と責任者が証言

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Googleは検索事業に関する独占禁止法違反を理由に、アメリカ司法省から訴訟を提起されており、Chrome事業の売却を迫られています。この訴訟において、Chrome担当ゼネラルマネージャーを務めるパリサ・タブリズ氏が、「GoogleからChromeを分離してもこれまで通りChromeを運用することはできない」と証言しました。

Only Google Can Run Chrome, Company’s Browser Chief Tells Judge - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-04-25/only-google-can-run-chrome-company-s-browser-chief-tells-judge

Google may have to sell off Chrome — and other AI companies are looking to buy https://www.androidpolice.com/compiler-04-27-25/

Why are companies lining up to buy Chrome? | The Verge

https://www.theverge.com/chrome/656613/google-chrome-buyers-openai-yahoo-perplexity

アメリカ司法省は、Googleの検索事業が独占禁止法(反トラスト法)に違反しているとして、Googleを提訴しています。この訴訟の一環で、GoogleのChrome担当ゼネラルマネージャーを務めるタブリズ氏が裁判所に「ChromeはChromeの開発者とGoogleの他部門との17年間の協力関係の象徴です」「この関係を解きほぐそうとするのは前例のないことです」と証言したことが明らかになりました。

タブリズ氏はChromeのシークレット モードや、パスワードが漏えいした場合にユーザーに通知する機能などは、ChromeだけでなくGoogleの共有インフラストラクチャーに依存していると指摘しています。

そのため、タブリズ氏は「(GoogleからChromeが分離すれば、元のChromeを)再現することはできないと思います」と証言しました。

Googleの検索事業が独占禁止法に違反しているか否かを問う訴訟で判事を務めるアミット・P・メータ判事は、2024年8月に「Googleの行為は一般検索サービスおよび一般検索テキスト広告の独占にあたる」として、Googleが独占禁止法に違反しているという判決を下しました。 これに対して、アメリカ司法省はGoogleに対してChrome事業の売却や、検索結果のために収集されたデータの一部を共有すること、デフォルトの検索エンジンに設定してもらうために他企業へ金銭を支払うことを禁止することを求めています。 ChromeはGoogleが開発を進めるウェブブラウザで、世界で最も広く利用されているブラウザでもあります。ウェブトラフィックの解析を行うStatCounterによると、2025年3月時点で世界の66%がChromeを利用しているそうです。

ChromeはオープンソースのChromiumをベースに開発されています。Chromiumは元々Googleによって作成されたものですが、他企業からの技術的貢献も受け入れており、MetaやMicrosoft、Linuxなどからのサポートも受けているそうです。 アメリカ司法省でコンピューターサイエンスの専門家として働くジェームズ・ミケンズ氏は、GoogleがChromeの機能を損なわずにその所有権を他企業に簡単に譲渡できると言及。ハーバード大学のコンピューターサイエンス教授でもあるミンゲス氏は、「Chromeの売却は技術的な観点からみても実現可能です。所有権を移転しても、大きな損失は生じないでしょう」とも語っています。

ミンゲス氏はGoogleからChromeを分離しても、「Googleは自社ブラウザや競合ブラウザの基盤となっているChromiumに技術を提供し続けるというインセンティブを持ち続ける」と指摘しました。なお、GoogleはAndroidにおいてもウェブページを読み込む際にChromiumの一部の機能を使用しているそうです。 一方、タブリズ氏によるとGoogleは2015年以降、Chromiumのコードの90%以上を提供してきたそうで、「GoogleはChromiumに数億ドル(数百億円)を投資しています。今のところ、他企業は有意義な形でChromiumの開発に貢献していません」と語りました。

また、GoogleはChromeに人工知能(AI)を追加するという取り組みを進めています。タブリズ氏はChrome内でデフォルトで使用できるAIアシスタントは、記事作成時点ではGeminiに設定されていることを認め、「ほとんどのブラウザはAIを実験し、機能をリリースしています」と語っています。 また、Googleの内部文書から、同社はChromeを「エージェントブラウザ」にする予定であることも明らかになっています。「エージェントブラウザ」とは、AIエージェントを組み込むことで、タスクを自動化し、フォームへの記入、調査、買い物などのアクションを自動化することができるブラウザです。 タブリズ氏は「私たちは、Chromeが主要エージェントとしてGeminiと深く統合し、それを優先して、消費者と企業の両方の環境でユーザーがウェブ上の複数のエージェントとやり取りできるようにする、複数のエージェントが存在する未来を思い描いています」と語っています。

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