けんかをやめて○○を食べよう 中国人漫画家が描く日本のリアル
東京出入国在留管理局で面倒な在留資格の更新を終えた後、下町の商店街で買った包子(パオズ)を食す。ほっとひと息ついた主人公の胸に去来した、ある思いとは――。
異国の地に暮らす外国人としての日常を、「食」というフィルターを通して描く漫画家がいる。ウェブ漫画サイトで「ニーハオ、おいしい東京日和。」を連載中のZON(ぞん)さん(29)=性別非公表=だ。
SNSでは、在日外国人に関するデマや外国人への嫌悪感をむき出しにした投稿が後を絶たない。
「『食』は人が生きていく上で欠かせないもの。国籍関係なく、共感してもらえることを描きたいです」
<主な内容> ・タクシー運転手の「ぼやき」 ・日本のアニメ愛が高じ留学へ ・「共感」を広げたい理由とは
・日中関係悪化 父からの電話
中国の旧正月(春節)期間中の2月中旬。日中関係の悪化で、中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけている。だがZONさんは成田空港で、中国に帰る両親の背中を見送った。
「母がたくさんおいしい料理を作ってくれました。日本にいる友達も家に来て、みんなで温かい春節を過ごしました」
親子で神奈川県内を観光して回った。道中で利用したタクシーの運転手が親切だった。
「中国人だ」と明かすと会話が弾んだが、そのさなか「政治は嫌だね……」とこぼした様子が印象に残っている。
ZONさんは中国南西部の四川省成都市出身。2018年秋に留学ビザで来日した。日本語学校やイラストの専門学校を経て京都府内の大学院に進み、2年にわたって漫画を研究した。
現在は日本で留学生に関連する仕事に就く傍ら、ウェブ漫画サイト「トーチweb」で作品を連載している。
夢を追い、日本へ
幼い頃は漢字の読み書きが苦手で、漫画やアニメから学んだ。日本のサブカルチャーに自然と親近感を抱くようになった。
「ポケモンやデジモン、名探偵コナン、ドラゴンボールなどが好きでした」
小学生の頃、自作漫画をノートに描き始める。
「1ページ20コマくらい。例えば自分や友達、ポケモンのような動物が登場して冒険する物語とかです。クラスのみんなに見せたら好評でした」
漫画家になる夢を温めつつ、地元の農業大に通う中で、日本への留学を決意する。父親は「自分のやりたいと思うことがあれば、サポートする」と応援してくれた。
来日直後は言葉に不慣れで、役所での手続きに四苦八苦した。
アレルギー症状が出た際の治療で医師に説明できず、腫れた唇やまぶたを指さして何とか伝えた。
大学院生時代は京都・鴨川の風景に魅せられた。「ママチャリで往復50キロ、鴨川沿いを走って宇治川まで行ったこともありました」
差別らしい差別は受けたことがない。
だが一度だけ、アルバイト先で人間関係のささいな行き違いがあり、バイト仲間が「最悪だ、きっと中国人がやった」と何度も…