新京成線→京成松戸線に 旧陸軍「鉄道連隊」が敷設の歴史 新鎌ヶ谷・新津田沼の駅前開発は 千葉
京成津田沼と松戸を結ぶ「新京成線」。4月1日、運行する「新京成電鉄」が親会社の「京成電鉄」に吸収合併され、京成「松戸線」に変わりました。
新京成線=松戸線といえば、ピンク色の車両とともに急カーブの多さも特徴です。その訳は敷設された歴史にありました。今回の合併の狙いとともにお伝えします。
(千葉放送局記者・茂木里美)
「新京成電鉄」は、京成津田沼駅と松戸駅を結ぶ「新京成線」の運行を続けてきました。路線はベッドタウンの住宅地を通る24駅、全長26.5キロです。
「新京成電鉄」は「京成電鉄」の完全子会社でしたが、4月1日付けで親会社に吸収合併され、路線名は「松戸線」となり、新津田沼駅で記念の式典が開かれました。
駅名・運賃・運行ダイヤに変更はありませんが、駅の看板のデザインなどは新京成線を象徴するピンク色から京成本線と同じ青を基調としたものに刷新。制服も京成本線と共通になりました。
ピンク色の車両も、今後、京成本線と同じ青と赤を基調としたものに順次変わっていくということです。
京成本線の車両なぜ合併?京成の戦略は
合併の狙いについて京成電鉄は、沿線のまちづくりを活性化させることだとしています。特に力を入れるのが、複数の路線が乗り入れている「新鎌ヶ谷駅」と「新津田沼駅」です。
新鎌ヶ谷駅では、すでに駅前の7000平方メートルの土地でマンションや商業施設の建設が進められ、2026年度の開業後はオフィスなども入るということです。
駅前開発が進む「新鎌ヶ谷駅」JR津田沼駅との乗り換え駅の「新津田沼駅」では、駅直結の「イトーヨーカドー津田沼店」が去年9月に閉店しました。
イトーヨーカドーが入っていた「新津田沼駅」の建物京成電鉄は去年10月、津田沼エリアのまちづくりを進めるため、流通大手「イオン」と資本業務提携を締結。
イオンはイトーヨーカドーの跡地を取得し、映画館やイベントホールなどが入る商業施設に改装する計画で、隣接する「イオンモール津田沼」との回遊性も高めたいとしています。
「新津田沼駅」に隣接する「イオンモール津田沼」京成電鉄によりますと、松戸線の沿線は本線と比べて開発の余地が多く残っているということで、合併によって開発を加速させるとともに、経営の効率化などを進めたいとしています。
京成電鉄 三沢建吾 経営統括部長
今回の合併をきっかけに路線への注目も高まっているので、駅前の開発を進めることで沿線の人口を増やし、輸送人員の確保につなげたいと思います。
急カーブが多数 理由は
開発が進められている新鎌ヶ谷駅周辺を航空写真で見ると、前後の線路が大きくカーブしていることが分かります。
ⒸGoogle路線全体を見ても、不自然な急カーブが多数みられます。京成津田沼~松戸間は直線距離で16キロほどですが、線路の長さにすると26.5キロに上ります。
ⒸGoogleなぜ線路にカーブが多いのか。千葉県の郷土史に詳しい西野則一さんに話を聞きました。西野さんは「鉄オタ先生」とも呼ばれているそうです。
西野則一さん路線の大部分が敷設されたのは戦前の昭和初期。前線への補給路として鉄道を敷く役目を担った旧陸軍の部隊、「鉄道連隊」が設置しました。
訓練としての工事だったことから不自然なカーブなどが意図的に設けられ、戦後、民間への払い下げで「新京成電鉄」となったあとも、一部はそのまま使われました。
現存する「鉄道連隊」遺構
そして、沿線には現在も、「鉄道連隊」のなごりが多く残っています。
その1つが、京成津田沼駅と新津田沼駅の間で、JR総武線などをまたぐ形で架けられている陸橋です。鉄製の橋桁は鉄道連隊が設置したもので、補修を繰り返しながら現在も使っているということです。
かつて周辺には鉄道連隊の倉庫などがあり、物資の運搬など使われていたと考えられています。
緑色の橋桁が鉄道連隊の設置したものまた、松戸市の八柱駅近くの線路沿いにある石柱には、「陸軍」という文字が彫られています。鉄道連隊の線路の境界線を示すために設けられ、沿線沿いには同じような石柱が多く残っているということです。
また、鎌ケ谷市の公園には、鉄道連隊が建てた橋脚がいまも残っています。橋を補修する訓練のために建てたとされ、戦後、線路は別の場所に移されましたが橋脚はそのまま残されました。
コンクリート造りの橋脚が4本並ぶ高さ最大6メートルほどのコンクリート造りで、当時の鉄道連隊の訓練が本格的だったことが分かります。西野さんは、最も価値のある鉄道連隊の遺構だといいます。
西野さんは、戦後間もない時期から続く「新京成」の名前がなくなっても、遺構の歴史的な価値は変わらず、後世に伝えていくことが大切だと話します。
西野さん名前が変わるだけであって、作られた歴史は変わりません。「新京成線」には特別な歴史があるので、若い人には電車に乗ることで歴史を知ってもらい、自分たちのこれからの未来を考えていくきっかけにもなればと思います。
兵隊さんはここでどういう訓練をしていたんだろうかとか、それがどのように役に立ったんだろうかなど考えてもらいながら、その事実を知っていることが大切だと思います。