「雑魚は…」田中角栄が特捜検事に託した言葉 ロッキード50年
逮捕状の取得は1976年7月26日だった。
容疑者は田中角栄元首相。大手商社「丸紅」を通じて米国「ロッキード社」から5億円を受領したとする外為法違反の疑いがあった。
捜査の秘密保持は徹底されていた。
資料のコピーは普段なら事務官に任せるところを、東京地検特捜部検事だった松田昇氏(92)が自ら行った。
周囲に感づかれないよう、散歩を装って検察庁に隣接する日比谷公園を歩いたり、コーヒーを飲んだりした後、逮捕状を発付する東京地裁の令状部に向かった。
「マスコミの人も『逮捕はまだ先』と思っていたのか、誰もいなかった」
検察庁舎に泊まり、翌27日は午前4時半に起床。周囲に気付かれないよう5時に車で出発した。
時間調整で靖国神社に立ち寄り、東京・目白の田中邸には6時半ごろに着いた。
任意同行に応じないことに備え逮捕状も持参した。
玄関先で書生に名刺を渡すと、2階に飛んでいった。元首相の妻から勧められ応接室で待った。しかし、元首相はなかなか出てこない。
「『弁護士を呼んでくれ』と言うか。『医者を呼んでくれ』と言うか。あるいは『(容疑者の)権利について説明しろ』か」
過去に逮捕された人たちを思い浮かべながら元首相の登場を想定した。
「様子を見に行きましょうか」と懸念する同行の事務官に「大丈夫だよ」と伝えた。
20分ほどで元首相が2階から下りてきた。
ぴちっと背広を着込み、ひげもそっていた。
松田氏の名刺を手に、立ったまま「君が松田君か」と発した。「そうです。ちょっと地検でお話をうかがいたいと思います」と告げた。
思わぬ言葉が返ってきた。
戦後最大の疑獄とされる「ロッキード事件」は田中角栄元首相が逮捕されてから27日で50年です。事件にゆかりのある人たちから話を聞きました。初回は捜査の主任検事だった吉永祐介氏(故人)の補佐役として、元首相を自宅から検察庁まで任意同行した松田昇氏です 第2回 合致した二つの供述(28日午前7時公開予定)
最終回 米国に弱み握られる恐怖(29日午前7時公開予定)
「偉いもんだな」
初対面の元首相が発した言葉を松田氏は今も鮮明に覚えている。
「うんうん。君は…
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