ダークチョコレートで糖尿病リスク低下?-大規模研究で明らかに
テーマ:糖尿病
2024年12月、医学誌BMJに発表された最新の研究で、ダークチョコレートの定期的な摂取が2型糖尿病のリスクを下げる可能性があることが分かりました。一方で、ミルクチョコレートにはそのような効果は見られず、むしろ体重増加につながる可能性があることも明らかになりました。
研究の概要
ハーバード大学の研究チームは、約19万人の医療従事者を30年以上追跡調査し、チョコレートの摂取と2型糖尿病発症との関連を調べました。具体的には、看護師健康調査(1986-2018年)、看護師健康調査II(1991-2021年)、医療従事者追跡調査(1986-2020年)という3つの大規模な研究データを分析しました。その結果、週に5回以上ダークチョコレートを食べる人は、ほとんど食べない人と比べて、2型糖尿病を発症するリスクが21%低いことが分かりました。
チョコレートの種類による違い
チョコレートは、含まれているカカオの量によって大きく3種類に分けられます。
ダークチョコレート
- カカオ含有量が50-80%と最も高い
- ポリフェノールを多く含む(フラバノールが平均3.65mg/g)
- 糖分が比較的少ない
- 乳成分が少ないか含まれない
ミルクチョコレート
- カカオ含有量が約35%
- 糖分が多い
- 乳成分を含む
- ダークチョコレートと比べてポリフェノールが少ない(フラバノールが平均0.69mg/g)
ホワイトチョコレート
- カカオを含まない
- 糖分が最も多い
- 健康に良い成分をほとんど含まない
研究結果のポイント
1. ダークチョコレートの効果
- 週5回以上の摂取で糖尿病リスクが21%低下
- 体重増加との関連は見られない
- 特に70歳未満の人でより強い効果が見られた
2. ミルクチョコレートの影響
- 糖尿病リスクとの関連なし
- 摂取量が増えると体重が増加する傾向
- 4年間で平均0.35kgの体重増加と関連
なぜダークチョコレートに効果があるのか?
これまでの研究でも、ダークチョコレートに含まれる「フラバノール」という成分の健康効果が報告されています。- インスリンの働きを改善する(2008年の研究)- 血管の機能を改善する(2009年の研究)- 抗酸化作用がある(2017年の研究)- 炎症を抑える(2008年の研究)
関連する過去の研究
- 医師健康調査(2015年):週2回以上のチョコレート摂取で糖尿病リスクが17%低下
- 多民族コホート研究:週4回以上のチョコレート摂取で糖尿病リスクが19%低下
- メイン・シラキュース長期研究(2017年):週1回以上のチョコレート摂取者は、ほとんど食べない人と比べて糖尿病リスクが低い
また、2023年に発表されたカカオサプリメント研究では、21,442人を対象にカカオフラバノールのサプリメント(1日500mg)の効果を調べましたが、糖尿病リスクの低下は確認されませんでした。
実生活での活用方法
この研究結果は、「すべてのチョコレートが同じではない」ということを示しています。ただし、以下の点に注意が必要です。
- ダークチョコレートでも、適度な量※を心がける
- カカオ含有量の高いものを選ぶ(50%以上)
- 糖分の多いチョコレートは控えめにする
- 総カロリー摂取量にも注意を払う
※「適度な量」とは?
研究で確認された「適度な量」- 週に5回以上のダークチョコレート摂取- 1回の標準的な摂取量は約28g程度
重要な注意点
- これは観察研究での結果であり、「推奨量」ではありません
- この量でも、1週間で合計140g程度のチョコレートを摂取することになります
- 個人の健康状態、年齢、体重、活動量などによって適切な摂取量は異なります
- カカオ含有量が50%以上のダークチョコレートを選ぶ
- 糖分や脂肪分の含有量にも注意を払う
- 総カロリー摂取量の中でバランスを取る
- 規則正しい食生活の一部として取り入れる
研究チームは、これらの量はあくまでも研究結果として示されたものであり、個々人への具体的な推奨量については、個人の状態に応じて医療専門家に相談することを推奨しています。また、チョコレートの種類や品質によっても、含まれる有効成分の量は大きく異なることにも注意が必要です。
研究の限界と今後の課題
- 観察研究であるため、因果関係は断定できない
- 対象者の多くが50歳以上の白人医療従事者であり、結果の一般化には注意が必要
- チョコレート摂取量が比較的少なく、高摂取での影響評価が限定的
まとめ
チョコレート、特にダークチョコレートには健康に良い効果がある可能性が示されましたが、これは「適度な量 」での話です。研究チームは、これらの発見をさらに確認するため、より詳細な臨床試験が必要だとしています。チョコレートの種類を意識しながら、バランスの取れた食生活の一部として楽しむことが望ましいでしょう。【引用論文】
Liu B, Zong G, Zhu L, et al. Chocolate intake and risk of type 2 diabetes: prospective cohort studies. BMJ. 2024;387:e078386.
松田友和プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です