スウェーデン、取得する多連装ロケットシステムにHIMARSを選択
米国務省は2026年3月「スウェーデン政府に対してHIMARSおよび関連装備品の購入を目的とした対外有償軍事援助を承認する」と発表し、スウェーデン政府は7日「スウェーデン軍がHIMARS(約10基)を調達することを承認した」「最初の納入は2027年を予定している」と発表した。
参考:Sweden to buy US artillery rocket system and enter Sweden-Finland cooperation on rocket artillery 参考:Sweden signs HIMARS deal, forges rocket artillery pact with Finland
欧州はウクライナとロシアの戦争を目の当たりにして「大規模な地上戦が再び欧州で発生する可能性」と「高度な防空システムの普及で接近拒否が成立する可能性」を認識し、航空戦力に偏っていた火力投射能力を地上戦力に戻す動きが加速しており、自走砲や多連装ロケットシステムの新規取得や追加調達が相次いでいる。
欧州諸国の多連装ロケットシステムの導入動向(枠組み合意の数字も含む) 国 種類 数量 ポーランド HIMARS 506基 Chunmoo 290基 エストニア HIMARS 9基 Chunmoo 9基 ラトビア HIMARS 6基 リトアニア HIMARS 8基 イタリア HIMARS 21基 ルーマニア HIMARS 54基 スウェーデン HIMARS 約10基 クロアチア HIMARS 8基 Chunmoo 18基 オランダ PULS 20基 ドイツ PULS 5基 EuroPULS 最大250基 デンマーク PULS 8基 ギリシャ PULS 36基 ノルウェー Chunmoo 16基 フランス THUNDART 26基砲兵システムに関しては欧州独自の選択肢が存在するものの、多連装ロケットシステムについては独自のシステムがないため米国製のHIMARS(ハイマース)、イスラエル製のPULS(パルス)、韓国製のChunmoo(チョンム/天橆もしくは天武)に人気が集中し、ポーランド、エストニア、クロアチアはHIMARSとChunmooを並行導入、ラトビア、リトアニア、イタリア、ルーマニアはHIMARS導入、オランダ、デンマーク、ギリシャはPULS導入、ノルウェーはChunmoo導入を決めた。
ドイツはウクライナへのMLRS(MARS-2)提供分を穴埋めするためPULSの少数導入を決め、KNDS Deutschlandとエルビット・システムズが提案するPULSの技術を流用したEuroPULS(MARS-3=PULSの技術を流用した欧州生産バージョン)採用が確定的で、フランスは独自開発のTHUNDARTを採用し、今度はスウェーデンがHIMARS調達を決定して注目を集めている。
Sweden will procure around ten HIMARS launchers together with a significant amount of ammunition. The system will enable the Army to engage command posts, air defence, logistics and artillery at far greater distances than today, strengthening Swedish and NATO deterrence. (2/3)
— Pål Jonson (@PlJonson) September 7, 2026
米国務省は2026年3月「スウェーデン政府に対してHIMARSおよび関連装備品の購入を目的とした対外有償軍事援助(推定総費用9億3,000万ドル)を承認する」と発表し、ウルフ・クリステション首相は国営放送=SVTに対して「米国側は我々に購入の意思があれば売却する用意がある。しかし我々はまだその段階には至っていない」と述べていたが、スウェーデン政府は7日「スウェーデン軍がHIMARS(約10基)を調達することを承認した」「この調達にかかる費用は約70億スウェーデン・クローナで最初の納入は2027年を予定している」と発表。
ポール・ジョンソン国防相はMLRSを運用しているフィンランドのアンティ・ハッカネン国防相と「多連装ロケットシステムに関する協力宣言」に署名し、両国は互換性のある米国製システム(HIMARSとMLRS)と弾薬の運用を通じて協力することを約束した。
出典:SAAB
ちなみにロッキード・マーティンとサーブはGLSDBのHIMARS統合、HIMARSやパトリオットシステムなどの弾薬製造を検討するための意向書にも署名し、ジョンソン国防相はBreaking Defenseの取材に「欧州や特にスウェーデンでもっと多くの弾薬を生産する必要がある。サーブとロッキード・マーティンがこの件で協力していることを嬉しく思う」「ここにはサーブとボーイングが共同開発したGLSDB、さらにPrSMや他の長距離攻撃能力との組み合わせも含まれる」と述べたが、この生産はスウェーデンではなく米国のミシガン州にあるサーブの工場で開始することを予定している。
スウェーデンではなくサーブが米国で弾薬生産を開始するのは「スウェーデン国内にPAC-3 MSE、GMLRS、PrSMといった精密誘導兵器の現地生産を持ってくるのは難しいか時間がかかりすぎる」「特にシーカーなどコア部品のライセンス生産は認められない」と分かっているためで、恐らく「サーブの米国法人が米国で米国人を雇用して生産するほうが認められやすい」と判断した結果だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Försvarsdepartementet