市況 - 株探ニュース

経済評論家 杉村富生
「株価急騰の背景は選挙での与党敗北?」 ●国民の生活を守る政策に転換する!

 いや~、すごい相場である。正直、筆者の想定を超えている。確かに、6~7月には「早晩、日経平均株価は昨年7月11日の史上最高値を奪回するだろう」と主張してきた。しかし、それは秋口以降と考えていた。むしろ、8月は急騰の反動に加え、サマーバカンス入りとあって、「調整が必要ではないか」と思っていたのだが……。

 う~ん、株価はシナリオ通りには動かない。日経平均株価は8月13日に、4万3451円(終値は4万3274円)の高値まで急騰した。4月7日の安値(3万0792円)比の上昇幅は1万2659円、上昇率は41.1%に達する。この水準のPER(株価収益率)は17.68倍、PBR(株価純資産倍率)は1.57倍だ。テクニカル的に、「やや、警戒ゾーン」との指摘がある。  今回の急騰劇の背景には外国人買いの急増、企業の経営改革、株主還元姿勢の強化(投資価値の向上)、FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ期待などがあった。自社株買いは年間25兆円のペースだし、2026年3月期の配当金総額は20兆円に膨らむ。9月16~17日のFOMC(連邦公開市場委員会)での利下げ確率は99.9%に高まっている。

 さらに、政策株売却(持ち合い解消)は2025年3月期に前の期比1.5倍の9.2兆円あった。東証、投資家が求める統治改革の成果である。日本勢のM&Aは1~6月に31兆円(前年同期比3.6倍)と激増した。成長戦略の今年度の企業の設備投資額は34.2兆円(前年度比12.4%増)と、史上最高額を更新する。

 問題はトランプ関税の不透明さ、日本の政治の迷走、景気後退リスクなどにある。ただ、トランプ関税については4月初旬がトランプ大統領の強硬論(取引材料)のピークだった。地政学上のリスクはイスラエルとパレスチナの紛争、ロシアのウクライナ侵略など楽観が許されないのは確かだ。とはいえ、最悪の事態は避けられそうである。 ●当面は個別材料株が主役の相場に!  さて、難問は政治だが、実はこれが急騰劇の最大の好材料(原動力)ではないか。「何で?」と反論されるのは間違いないだろう。きっかけは与党(自民党、公明党)の衆院選挙、都議会選挙、参院選挙での3連敗だ。マスコミは「裏金問題」などが与党の逆風になった、と主張する。これは違う。選挙とカネは注目度が低い。では、なにが逆風となったのか。  政治の責務は国民の生命、財産、そして生活を守ること。これに尽きる。近年の政治家は国民の生命、財産を守ろうとしないし、国民の多くが生活苦に悩まされてきた。政府は過去30年、増税、社会保険料の徴収によって、国民の“富”の収奪に走ったじゃないか。今回の選挙結果は人々が既得権を含め、「何かおかしい」と感じ始めたことが主因だろう。  逆に考えると、国民民主党、参政党の躍進は人々の声を反映したもの、との見方ができる。すなわち、少数与党の国会運営の手法は野党の主張(減税、財政出動)を取り入れるしかない。7~8月の株価急騰劇はこのドラスチックな政策転換を先取りしたのではないか。だからこそ、国政選挙での与党の敗北が株高の源泉、と唱えている。

 物色面はどうか。当面(夏場の2~3週間)は主軸株よりも個別材料株が人気を集める展開だろう。具体的には思惑材料を秘めたSMN <6185> [東証S]、アニコム ホールディングス <8715> [東証P]、わかもと製薬 <4512> [東証S]、玉井商船 <9127> [東証S]などに注目できる。

 このほか、仕手的な動きを強めている東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、データセンター関連のデータセクション <3905> [東証G]、農業支援策の追い風を受ける井関農機 <6310> [東証P]、第4次産業革命の本命と目されているNTT <9432> [東証P]、小型衛星のアクセルスペースホールディングス <402A> [東証G] などに妙味があろう。

2025年8月15日 記 株探ニュース

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