米利下げ観測に勢い、景気軟化の兆しで-トランプ氏要求実現に現実味

債券市場で年内の利下げ観測が高まっている。米景気減速を示す兆しが表れ、米連邦準備制度にとって、トランプ大統領が求めてきた金融緩和を正当化する理由になるかもしれない。

  米金融政策見通しに密接に連動する担保付翌日物調達金利(SOFR)のオプション市場では、年内の残る3回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で毎回利下げが決定され、年末までにフェデラルファンド(FF)金利誘導目標が計75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げられる可能性に備える動きが目立つ。9月の次回会合での50bp利下げを見込む取引も見られる。

  先週発表された米雇用統計の弱さを受け、市場では連邦準備制度が景気下支えで利下げに動くとの確信が一層強まった。トランプ氏は利下げを繰り返し求めているが、金融当局は要求に応じていない。米供給管理協会(ISM)が5日発表した7月の非製造業総合景況指数で経済活動の停滞が示され、市場の不安が増幅された。

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  TDセキュリティーズの米金利ストラテジスト、モリー・ブルックス氏は「7月の雇用統計を受けて市場が神経質になっているのは間違いないが、9月会合までにはまだ多くのデータが発表される」と指摘し、連邦準備制度の認識を変えるには、一つの指標や一つのデータポイントだけでは不十分との見解を示した。

  スワップ市場が現在織り込む利下げ幅は計約60bpで、雇用統計発表前の約30bpから大幅に拡大した。米国債利回りもこうした見通しの変化を反映し、10年債利回りは最近4.20%近辺に低下した。先月は一時4.49%を付けていた。

  フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ダン・カーター氏は「成長減速とインフレの落ち着き(関税を除く)、金融緩和に近づく状況を背景に利回りは今後数カ月にわたり低下傾向をたどるだろう」と分析した。

  トレーダーが米国債のロングポジションを積み増すなど、現物市場でも強気のモメンタムが強まっている。JPモルガン・チェースの最新顧客調査によると、アウトライトの米国債ロングは4月以降で最も高い水準にある。

  FOMCメンバーの間でも金融緩和に傾く兆しがうかがえる。 サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は4日、利下げの時期が近づいているとの認識を示した。米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事とボウマン副議長は、7月のFOMC会合が政策金利の据え置きを決めた際、0.25ポイントの利下げを主張し反対票を投じた。

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原題:Bets on Fed Rate Cuts Are Sweeping Through the US Bond Market(抜粋)

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