フェラーリが初のEV「エレットリカ」のシャシーを公開「最高出力1000馬力」

Ferrari Elettrica

F1由来の電動パワートレイン技術

フェラーリ エレットリカは、2009年シーズンのF1マシンに採用されたハイブリッド技術をスタートに、フェラーリが積み上げてきた電動技術の全てが結集している。

フェラーリ初となるフル電動モデル「エレットリカ」が投入されることで、そのラインナップは内燃機関、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、BEVが揃い、マルチエナジー戦略が完成することになった。これまでにない新しい革新的なアプローチから生み出されたエレットリカは、最先端テクノロジーとパフォーマンス、そしてすべてのフェラーリに共通するドライビングプレジャーが融合している。

フェラーリの伝統に従い、すべての主要コンポーネントは社内で開発・製造。2009年シーズンのF1マシンに採用されたハイブリッド技術を起点とし、フェラーリの電動化に関する長年の技術研究の集大成として完成。2010年の「599 HY-KERS ブロトタイブ」、2013年の「ラ フェラーリ」、そして初のプラグインハイブリッド「SF90 ストラダーレ」、最近発表された「849 テスタロッサ」に至るまで、フェラーリは電動モデルに関するノウハウを築き上げてきた。

フェラーリは、ブランド史上初の電動モデルの開発に向け、明確な開発目標を掲げている。それは「フェラーリの価値観にふさわしい卓越したパフォーマンスと真のドライビングエクスペリエンスを実現できる技術が確立した段階でのみ、そのモデルを世に送り出す」ということだ。今回、構想が量産段階へと到達し、60件を超える独自技術特許も申請された。

アーキテクチャーは、短いオーバーハング、フロントアクスルに近い先進的ドライビングボジション、そしてフロア全面に統合されたバッテリー構造を特徴とする。シャシーとボディシェルには、初めて75%のリサイクルアルミニウムを採用。1台あたり6.7トンのCO2削減という驚異的な成果を実現した。

バッテリーモジュールは前後アクスル間に配置され、その85%を車体の最も低い位置に搭載することで、重心レベルを大幅に低下。これにより優れたドライビングダイナミクスを実現した。エレットリカは同レベルの内燃機関モデルと比べて重心が80mmも低く、際立った運動性能を手にしている。

運動性と快適性を両立したシャシー

フェラーリのミッドシップベルリネッタから着想を得たシャシーは、ショートホイールベースながらも、バッテリーの搭載位置や足まわりの専用設計により、GTモデル並の快適性が確保された。

エレットリカのシャシーは、ショートホイールベースが特徴だ。アーキテクチャー開発はリヤミッドエンジンのベルリネッタモデルから着想され、ドライビングボジションは前輪の近くに配置される。これにより、純度の高いステアリングフィードバックを体感できる一方、コクピットへのアクセスが良好になり、GT系モデルと同様、快適性も最大限に確保された。

このレイアウトを採用したことで、特にEV特有の車両重量を考慮した際、衝突時のエネルギー吸収に関して、重要な技術的課題が生じることになった。解決策として、フェラーリはフロントのショックタワーが、衝撃時にエネルギーを直接吸収するようにした。フロントモーターとインバーターの配置は、衝撃がシャシーに達する前に、エネルギーを分散させるよう設計されており、安全性を最大化している。

シャシー中央部は、シャシーへと完全に統合されたパッテリーをフロア下部に配置。この設計により、パッテリーとシャシーシステムの全体重量を最小限に抑え、バッテリーパックを車両内で可能な限り低い位置に置くことが可能になった。また、シャシー自体がパッテリーバックの構造的保護の役割も果たしており、モジュールとサイドシルの間に隙間を設けることで、側面衝突時にはエネルギーをサイドシルによって完全に吸収するよう設計されている。

前後アクスルに高効率モーターを搭載

エレットリカはフロントに210kW、リヤに620kWを発揮するモーターを搭載。走行状況に合わせて、駆動を切り替えることができる。

前後アクスルにはそれぞれ独立した電気モーターを2基ずつ搭載。これらが連携してトルクベクタリングを実現し、車両のダイナミクス性能を向上させる機能を持つ。前後アクスルのすべてのパーツはフェラーリが完全に自社開発した。

トランスミッション、インバーター、電動モーターは、完全な制御性能、優れた出力密度、高い電気効率、低騒音を追求して設計されたという。すべて社内で鋳造されたパーツは、二次アルミニウム合金で製作されており、従来の合金に比べて CO2排出量は最大90%も削減している。

フロントアクスルのモーターは最高出力210kWを発揮し、最高速まで駆動を切り離すことが可能だ。これにより、全輪駆動が不要な状況ではリヤ駆動へと切り替え、効率と燃費を最大化することができる。全開加速時には、フロントアクスルは最大で3500Nmのトルクを前輪に供給する。すべてのパワーエレクトロニクスはアクスルに直接搭載される。この設計によりサイズの縮小に加え、効率性と出力密度も向上したという。

リヤアクスルは最高出力620kWを発揮し、「パフォーマンス・ローンチ・モード」では、最大トルクは8000Nmに達する。新開発の「ディスコネクトシステム」は、最先端トランスミッション技術をベースとする高度なギヤ同期技術を採用しており、70%もの軽量化を実現。エンジンの接続・切断をわずか0.5秒で行うことが可能となった。コンディションに合わせて、フロントアクスルにトラクションが必要な場合には、システムが自動的に2基のフロントモーターを作動させ、全駆動での走行が可能となる。

最大航続距離530kmを確保

フェラーリが自社開発した、容量122kWhのバッテリーは、フロア下とリヤシート後方に搭載。最大航続距離は530kmが確保された。

フェラーリが社内で設計・組み立てを行うバッテリーは電力量122kWhで、最大航続距離は530kmが確保された。今回、従来の内燃機関モデルと比べて、重心を80mmも低くすることに成功。車両センター部はバッテリーとシャシーのシステム全体の重量を最小化しつつ、剛性を高めることを目的とした統合的な最適化アプローチで開発されている。

バッテリーセルの配置は、慣性を最小化して重心を低く保つよう設計されており、可能な限りドライバーシート後方に配置された。重量物の85%はフロア下に、残りはリヤシート下部に配置。この設計によりホイールベースを短縮し、慣性を最小化することで、あらゆる状況においてドライビングプレジャーを最大化すると謳う。また、前後重量配分は47対53と、最適なパランスを実現している。

フェラーリはバッテリーを独立したブロックではなく構造要素として「開発の中心に完全統合」。2枚のシェルで必要最小限まで簡素化された。シャシーに取り付けられると、下部バッテリーシェルがボディシェルの剛性に積極的に寄与する。これにより、エネルギー密度ほぼ195Wh/kg、出力密度約1.3kWW/kgという、クラス最高レベルの数値を達成した。

Specifications

フェラーリ エレットリカ

ホイールベース=2960mm重量=約2300kg

重量配分=47:53

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