60年間気づかれなかった地球の「隠れた準衛星」、発見される

Image: NASA /JPL/USGS

2025年8月2日、ハワイにある「パンスターズ天文台(Pan-STARRS: Panoramic Survey Telescope and Rapid Response System)」によって新たな準惑星「2025 PN7」が観測されました。

実はこの準惑星、これまで存在が気づかれていなかっただけで、数十年にわたり地球の軌道を追従していたのです。

60年間気づかれなかった準惑星

この論文は、学術誌『Research Notes of the American Astronomical Society』に掲載されました。2025 PN7は、太陽のまわりを地球と共に公転する約7つの準衛星の一つです。発見後、科学者たちが過去の観測データを調べたところ、2014年に撮影された画像の中に2025 PN7の痕跡を発見しました。

観測データによれば、この準惑星は60年間安定した軌道に存在しており、さらに今後60年間も同様の軌道をたどった後に、太陽の周囲を公転する地球の軌道との同期から外れていくと考えられています。

2025 PN7の直径は約19mで、地球からの距離は約450万kmから約6000万kmの間にあります。この天体は「みなみのうお座(Piscis Austrinus)」の方向で発見され、南半球の空で見ることができます。なお、今回発見されたこの小惑星は、特別な一群に属する「地球近傍小惑星」の一つでもあります。

地球の天然衛星は月のみですが、地球と似た軌道をもつ小惑星は地球の重力の影響を受けます。その結果、これらの準衛星は実際に地球の周りを公転しているわけではないものの、地球と一緒に太陽をめぐる軌道上に寄り添っているように見えます。つまり、地球の重力に捕らえられているわけではなく、あくまで地球の公転に歩調を合わせている「一時的な旅の仲間」のような存在なのです。

「ミニムーン」との違いは?

ミニムーンと呼ばれる天体は、地球の重力によって一時的に地球周回軌道に引き込まれた小惑星のことで、準衛星とは異なります。ミニムーンは数週間から数か月の短期間、地球の周りを公転しその後、重力の束縛から解放されて再び宇宙空間へと戻っていきます。実際、2024年には小さな地球近傍小惑星が一時的に地球の重力に捕らえられ、約2か月間「ミニムーン」として存在したことがありました。

ミニムーンのほうが準衛星よりも一般的かもしれません。最も有名な準衛星は、2016年4月27日に発見された「カモオアレワ(正式名称 2016 HO3)」でしょう。カモオアレワは細長い地球近傍天体で、大きさは40〜100mと推測されています。今回発見された2025 PN7よりもかなり大きいと考えられています。

2025年5月に打ち上げられた中国の「Tianwen-2」探査機は、モオアレワとランデブーし、試料を採取して2027年に地球へ持ち帰る計画です。これにより、太陽系の起源に関する手がかりが得られると期待されています。

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