暫定エアフォース・ワン、飛行試験完了 今夏ロールアウトへ
米空軍は現地時間5月1日、次期大統領専用機VC-25Bの就役までのつなぎとなる暫定大統領専用機「VC-25ブリッジ(暫定機)」について、改修と飛行試験が完了したと発表した。現在は塗装工程に入っており、今夏に新塗装でロールアウトする予定。米空軍で大統領専用機を運用する部隊には、今夏にも引き渡す計画となっている。 【写真】飛行試験が完了したVC-25ブリッジ VC-25ブリッジは、カタール政府から寄贈された747-8を改修した機体で、米空軍は今回「旧カタール国家元首向け747-8i」と説明している。大統領専用機は大統領搭乗時のコールサインから「エアフォース・ワン」とも呼ばれ、現行機のVC-25Aは導入から35年以上が経過している。後継となるVC-25Bはボーイングが開発を進めているが、納入が当初計画から遅れており、米空軍は暫定機で運用リスクの低減を図る。 ◆VC-25B納入は28年に 米空軍によると、VC-25Bの納入は当初の2024年目標から遅れ、現行機VC-25Aの重整備サイクルも長期化している。2025年2月には専任のタスクフォースを立ち上げ、VC-25ブリッジの改修を急ぐ一方、ボーイングによるVC-25Bの生産加速にも取り組んだ。米空軍は、更新後のスケジュールより1年前倒しし、VC-25Bの納入は2028年になる見込みとしている。 VC-25ブリッジの改修は、テキサス州にあるL3ハリス・テクノロジーズの施設で進められてきた。L3ハリスは、VC-25Aや要人輸送機向け通信システム、自衛装備、VIP機改修の経験を持つ。ボーイングは、構造改修に必要な技術データを提供した。 米空軍は2月、次期VC-25Bと要人輸送機C-32に採用する新塗装を公開している。赤・白・金・濃紺を用いるデザインで、今回の発表により、暫定機のVC-25ブリッジもこの新塗装で塗装工程に入ったことが明らかになった。現行の大統領専用機は、ケネディ政権時代から続く水色と白を基調とした塗装をまとっている。 ◆元ルフトハンザ機は訓練・部品取り 米空軍は、暫定機の前倒し導入に向け、複数の747-8系機材を活用。旧カタール国家元首向け747-8iをVC-25ブリッジ本体とした上で、米アトラスエアー(GTI/5Y)の747-8F貨物機をリース導入し、2025年10月から今年2月までパイロットの暫定資格取得訓練に使用した。2機導入した元ルフトハンザ ドイツ航空(DLH/LH)の747-8iは、1機を乗員と整備士の訓練機、もう1機を部品取り用として活用する。 過去に使われた機体を大統領専用機として使うため、複数の政府機関の専門家が技術的リスクを検出し、必要に応じて無力化する手順も整備した。米空軍は、中古機を安全な軍事用機材体系に組み込むための新たな基準になったとしている。ホワイトハウスのスタッフ向けには、VR表示を備えた実物大の内装モックアップも用意し、引き渡し前から習熟を進めている。 トロイ・メインク空軍長官は、747-8iを今から統合することについて「単に空白期間を埋めるだけでなく、重要任務を担う機隊の戦略的な立ち上げを進めている」と説明。訓練やサプライチェーン、維持体制を成熟させ、今後30-40年にわたって任務対応できる体制を整えるとしている。 ◆747は生産完了済み 「ジャンボ」や「空の女王」の愛称で親しまれた747の最新型である747-8は全長76.2メートルで、現役の民間航空機の中で最長の機体。旧世代の747と比べて燃費が16%改善し、エンジンはGE製GEnx-2Bを4基搭載したことで静粛性も30%向上した。旅客型の747-8i「インターコンチネンタル」を58機、貨物型の747-8Fを142機の計200機受注し、実際の納入機数は747-8iが48機、747-8Fは107機の計155機となった。 通算1574機目となった最後のジャンボは、アトラスエアーなどを傘下に持つアトラス・エア・ワールドワイド向けの大型貨物機747-8F(登録記号N863GT)で、2023年1月31日に引き渡した。
Tadayuki YOSHIKAWA