MUFG社長、日銀追加利上げ9月決定も-早期実施の環境整う
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規社長は、日本銀行が9月か10月の金融政策決定会合で次の利上げを決める可能性が「十分にある」との見解を示した。足元の強い物価上昇と賃上げの持続に加え、日米関税交渉が合意に至ったためだ。
亀澤氏が1日、ブルームバーグとのインタビューで述べた。日銀による早期追加利上げの可能性について主要金融機関トップが公に明言したのは初めてで、異例でもある。
ブルームバーグがエコノミスト45人を対象に実施した1日の緊急調査では、10月と予想した人が最も多かった。市場では早期利上げの環境が整いつつあるという見解が強まり、日銀が判断する時期に注目が集まっている。
物価と賃上げの情勢から早期の利上げを見込む。亀澤氏は「インフレがかなり強い。値上げ品目が相当増えた」と語った。「人手不足や人材確保の意味合いから賃上げペースが落ちないと考えれば、ある程度見通しがたった」とも話した。
日米両政府による関税交渉の合意も理由に挙げた。米国が日本からの輸入品に課す関税率は15%に決まり、当初の25%から下がった。合意を受けて「日本経済全体にとって、基調としての景気回復は崩れない」との見方を示した。ただ、自動車や電機など一部業種には影響が出かねず、会社ごとに状況を確認する必要があるとした。
今秋にかけて発表される経済指標を注視する。国内総生産(GDP)成長率などが弱かった場合、日銀が利上げの時期をもう少し見極めるだろうとも付け加えた。この場合は来年3月頃になる可能性があるとみる。
純利益2兆円計画は揺るがず
MUFGは今期(2026年3月期)の連結純利益が3期連続で最高益を更新し、初めて2兆円の大台に達すると計画する。米国が日本に課す新たな関税率の影響は織り込んだ範囲に収まっており、計画変更の必要はないと説明した。
同社が4日に発表した25年4-6月期(第1四半期)の連結純利益は5461億円と、今期目標に対し27%の進捗(しんちょく)率となった。政策金利が0.25%上昇すると資金収益ベースで年間1000億円程度のプラス効果があると試算しており、早期利上げが実現すれば、今期の純利益は上振れる可能性がありそうだ。
業績は好調なものの、自己資本利益率(ROE)は足元で10.8%と主要米銀に劣る。MUFGは中長期的に12%まで引き上げる目標を掲げている。
投資銀行・インドに照準
ROE目標は社内の経営資源の活用と、外部の取り込みによる成長との両輪で達成を目指す。金利上昇により、本業で貸し出しから得る利ざやの拡大といった利益の増加を予想する。亀澤氏はさらに、投資銀行業務と新たな合併・買収(M&A)もあわせて実現すると説明した。
投資銀行について「リスクの取り方をもう一段アップさせる」と語った。証券化ビジネスを広げるほか、「データセンターなどの大口プロジェクトファイナンスでもう少しリスクをとる」と意気込んだ。
M&Aのキーワードの一つはインドだ。亀澤氏は高い経済成長率が魅力だとし、「リテール(個人向け)領域とデジタル領域は外せない」と語った。インドは商業銀行に対する外資参入の規制が厳しいため、ノンバンクの方が可能性が高いと説明した。