高齢での発症増える「関節リウマチ」 大きな関節に出る割合が高く
関節に炎症を起こす「関節リウマチ」を高齢になって発症する人が増えている。従来、30~50歳代の女性が発症のピークとされたが、高齢社会で発症も高齢化してきた。高齢者はほかの病気があることが多い上、診断が難しい面もある。専門医は「治療法は進歩している。おかしいと思ったら早めに受診してほしい」と話している。
高齢での発症は診断難しく
80歳を超えた人が「関節が腫れている」と訴え、診察すると関節リウマチだった-。相模原市にある国立病院機構相模原病院臨床研究センターの松井利浩リウマチ性疾患研究部長のもとにも、高齢になって発症した患者が多く受診に来るという。
関節リウマチは免疫異常によって関節に炎症が起き、腫れや痛みが生じる病気で、進行すると関節の変形・破壊や機能障害を引き起こす。患者は約80万人で、30~50歳代の女性に多く発症するとされている。
全国の患者のうち毎年1万5千例以上を登録している大規模データベース「NinJa」を用いた調査によると、発症年齢の平均は令和3年度は53.0歳で、平成14年度の46.6歳から19年で6.4歳も高くなった。65歳以上での発症は同じ期間で9.8%から24.7%、75歳以上の発症も1.6%から7.8%に上がった。
最近の動向をみるために、令和3年度時点で罹患が2年未満の登録患者を抽出すると、発症年齢の平均は64.7歳。65歳以上での発症は57.3%、75歳以上の発症が28.3%で、近年、高齢での発症が増えていることが浮き彫りになった。松井部長は「増加の要因は高齢化と診断技術の進歩が考えられる」とみる。
高齢発症の特徴としては男女比が挙げられる。従来の関節リウマチの男女比は1対3、4だったが、高齢発症は1対2くらいに縮小する。また、診断のための目印(マーカー)が陽性になりにくいケースも多い。
専門医に早めの相談を
従来は手指などの小さな関節に炎症を起こすことが多いが、高齢発症は膝など大きな関節に出る割合が高い。「膝の異常で整形外科の病院にかかり、変形性膝関節症と診断を受けた高齢患者が、よくならないからと紹介でうちに来たら関節リウマチだったことがある」(松井部長)という。高齢者に多い「リウマチ性多発筋痛症」と症状が似ていて、診断が難しい場合もある。
関節リウマチの治療は薬物療法が中心で、現在は注射や内服の分子標的薬も使用されている。ただ、高齢になると身体状態が悪かったり、ほかの病気があったりするため薬物の選択が制限されることがある。松井部長は「最もメインで使われるメトトレキサートは腎臓や肺に障害があると適用できない」と説明する。経済的な理由で高価な分子標的薬を使えないケースもある。
松井部長は「年齢を問わず、関節の痛みや腫れが続くようならば専門医に相談して」と訴える。専門医は日本リウマチ学会のサイトで検索できる。
在宅医療に認知機能低下の壁
関節リウマチは薬剤治療が進歩し、寛解になるケースも増えている。ただ、高齢患者が増えており、薬剤管理や服用に問題を抱えることも少なくない。
松井部長が訪問診療をしていた高齢患者は効果のある薬剤を服用し、良好な状態を保っていた。しかし、状態がやや悪化。「変だ」と思っていたら、福祉スタッフから「家に大量の薬が隠されていた」と報告があった。患者本人は「服用した」と述べたという。松井部長は「本人や家族の認知機能が低下していれば、きちんと服用することは難しい」と話す。
慢性疾患である関節リウマチを治療しながら在宅医療に移る患者も増えている。松井部長らは、高齢患者の支援に携わる介護・福祉スタッフに向けたガイドも作成。患者へのケア情報の共有に努めている。
国立病院機構相模原病院では在宅医療に移る前の調整入院も始めた。先日、調整入院した患者は股関節の状態が悪く、このままでは在宅介護に支障が出ると判断。手術をし、在宅治療に移った。松井部長は「高齢患者はさまざまな要因を加味した対応が求められる」と話す。(小川記代子)