80歳でも噛み締めで奥歯が割れる?「あごを整えること」がアンチエイジングにつながるワケ(東洋経済オンライン)
整骨のプロ柔道整復師・薩摩宗治氏が42万件を超える症例の末たどり着いたのは、すべての不調の根源は骨盤でも、肩甲骨でもなく“あご”だということ。このたび、薩摩氏はその理論の集大成として「疲れはあごが9割 24時間戦う脳と身体をリセットする技術」を一冊の本にまとめました。現代社会において、なぜ今あごが大事なのか。口内環境の専門家であり、本著の監修を担当した歯科医師・馬場裕史氏とともに、あごや口内環境の悪化からはじまり全身へ広がる不調連鎖について語ってもらいます。後編はあごと若返りの関係についてです。
■80歳でも歯が割れる? 衰えない噛む力 薩摩先生:最近、アンチエイジングに関して「若返りは可能」という論文が数多く発表されています。「不老不死」は人類の長年の夢ですが、死なないという「不死」は難しくても老けないという「不老」は可能な時代がやってきたと、世界中のアンチエイジングの専門家が語っています。
馬場先生:昔、私が歯学部で勉強していた頃は、年齢とともに噛む機能も衰えると習いました。ところが実際の治療ベースではそうとは言い切れないんです。
先日も80歳の女性が歯を折られて来院されました。ペットロスがきっかけでストレスが強くなり、気づかないうちに強い力で噛みしめて奥歯が割れてしまったのです。これまで一般的には80歳にもなると歯の硬度も低下し、さらに噛みしめる力も弱くなっていると考えられていたはずです。でも、実際には年齢を重ねても歯を割るほどの機能があるわけです。
薩摩先生:臨床をしていると、医学教科書に違和感を覚えることがあります。
馬場先生:そうなんです。昔の歯科の教科書には「加齢に伴い人間の噛む力(咬合力)は低下する」と書いてありました。でも現場で治療をしていると加齢にともなって変わらないどころか、先ほどの80歳の女性のようにむしろ強くなっているケースさえあります。
薩摩先生:加齢による身体機能の低下は、単なる「年をとったから仕方がない」とあきらめる時代ではありません。むしろ重要なのは、その人がどのような環境でどのような習慣を続けているかにかかっています。
馬場先生:確かにそうですね。昭和の時代は子どもから大人まで抜歯の一番の原因は虫歯でした。しかし、歯磨きの徹底が行き届いてから、小学生の歯科検診でもほとんど虫歯のある生徒さんはいません。これは毎日の歯磨き習慣のおかげです。近年では、歯周病や食いしばりなどによる破折(歯が折れること)が主な原因です。
薩摩先生:歯磨きと同様に機能が衰えないように小さなセルフケアを習慣にしていけば、「老け」を止められると、現場ですごく感じています。
■食いしばりによる唾液減が全身の病を招く 馬場先生:歯科の分野では虫歯予防から歯周病予防がトレンドで、機能といえば唾液にも注目が集まっています。 薩摩先生:前回、お話をしたように現代社会は交感神経が優位な時代。唾液は副交感神経が働くときに出やすくなるので、交感神経が働きっぱなしで食いしばっている状態では、必然的に唾液の量が減ってしまいます。
馬場先生:唾液が減れば口内の細菌バランスが崩れ、口の中の細菌が全身を回って病気を引き起こす可能性もあります。例えば歯周病菌が大腸がんや認知症と関係していることがわかっています。
薩摩先生:「脳腸相関」ならぬ「口腸相関」ですね! だから口内のケアは非常に大事なんです。 馬場先生:口の中をケアすることは、いつまでも健康で、全身を若々しくする、アンチエイジングに直結します。 薩摩先生:口内環境を整える歯磨き習慣と同様に、見た目のアンチエイジングももちろん日々の習慣が重要です。 馬場先生:なるほど。■顔の老けサイン「中顔面の伸び」は防げる
薩摩先生:「老け」というと特に女性が気になるのが、ほうれい線やマリオネットライン、ブルドックラインなどですが、実はそれ以上に顔の老けを感じるのは中顔面が伸びることです。
馬場先生:中顔面とはどこを指していますか? 薩摩先生:目の下から唇の上くらいまでの、顔の中央部を指します。ここが加齢とともに骨が減ることによってどんどん長くなってくるんですね。また、こめかみやほおがこけて見えるのも、老けて見える要因のひとつです。しかし、これも毎日のセルフケアで改善していくことができます。 馬場先生:歯磨きのように、ですか?
薩摩先生:そうです。ほとんどの方は歯磨きを忘れることはありませんよね。顔のセルフケアを歯磨きのように習慣化できれば、顔を短くすることも、こめかみやほおのこけを改善することも可能です。その秘策があごなんです。私が紹介しているベロ体操を毎日続けてもらえば、下がったあごの位置が上がり、中顔面が短くなってきます。下顎から、中顔面を持ち上げる効果が期待できるんです。
馬場先生:食いしばりや歯ぎしりで歯のすり減りが進むと歯が摩耗して、歯の高さが少しずつ減って噛み合わせが下がります。噛み合わせも変わるんですね。 薩摩先生:試していただいている方の中には、噛み合わせが変わったという方が少なくないですね。姿勢もよくなるのでぜひ一日に3回くらいベロ体操をとり入れていただきたいです。 ベロ体操の説明
足を腰幅に開いて立ち、肛門をギュッと締める。利き手で反対の手首をつかで下に引っ張ると同時にあごを上げ、できるだけ舌を天井に上げ、そのまま30秒キープ。
馬場先生:前回に続いて、この体操も簡単ですね。 薩摩先生:そうなんです。この体操をするだけで唾液もすごく出ます。 馬場先生:唾液が出るようになれば口内環境もよくなりますから。 薩摩先生:ただしすごく簡単なんですけど、簡単だけにあと回しになりがちなんですね。だから、「トイレに行ったら必ずやる」など生活の一部に組み入れて習慣化してほしいと思います。
馬場先生:まさに歯磨き習慣と同じですね。やはりキレイに磨けている方は、いつまでも歯がキレイですから。
薩摩先生:年齢を止めることはできませんが、日常的に継続をすれば「老け」のスピードを遅くすることはできます。例えば、最近問題になっている美容医療はやったら終わりではないんです。医療を受けた日から老けは進むわけですから、また美容医療が必要になるという負のループに陥ります。それよりも日常生活でケアを続ければ、機能の衰えを防ぐことができるのでいつまでも若い状態を保つことができる。つまりアンチエイジングが可能なんです。
馬場先生:歯科でも同じですね。食いしばりの予防も口内環境の維持も、毎日の習慣がなければ、成果は出ませんから。■若返りは自分次第! ポジティブな思考の力
薩摩先生:まさにその通りです。ただし、これまで何もせずに放っておいた方は改善まで少し時間がかかるかもしれません。でもあきらめずにセルフケアを続ければ、あごが変わり、骨や神経など体の機能が徐々に戻って、必ず若返ります。筋肉だってそうですよね。毎日筋トレを続けていれば、筋肉が鍛えられて80歳を超えてもマッチョな方がいます。小さな努力を積み重ねさえすれば、人は老けない体を手に入れることがようやく広がりつつあります。そのとき、ひとつ大事なのが、「自分は変われる」と信じて、ケアを行うこと。実際に疑いながらセルフケアをしている方と、変わることを楽しみにセルフケアをしている人では後者のほうが圧倒的に成果は出ています。
馬場先生:歯磨きでもそうなんですよ。歯科衛生士が患者さんに「ここ磨けていないですよ」というより、「ここ、キレイに磨けていますね!」とほめたほうが、次の検診のときに歯がキレイに磨けているケースが多いんです。 薩摩先生:ポジティブにとらえて、小さな努力を積み重ねる。つまり若返りは自分次第。多くの方に小さなセルフケアを積み重ねて、あごや口内環境から若返ってほしいと思います。
あごによく効く さつま家電
薩摩氏おすすめのあごに優しいガジェットをご紹介するコーナー。第4回はノートPC用スタンドのUUUK(ウーク)です。 「パソコン背面に貼り付けて使うタイプで、前後どちらのフリップも持ち上がる構造のため、姿勢が自然とよくなるし、なにより画面も見やすい!
スタンドの下には物を置くスペースもでき、私はここに外付けキーボードを置いて使っています。」
薩摩 宗治 :さつま骨格矯正Group総院長/馬場 裕史 :医療法人社団碧心堂やすふみ歯科クリニック院長