「誰でもいい」殺人はなぜ起きる 元家裁調査官が行き着いた答え
「殺す相手は誰でもよかった」。無差別に人を襲い、容疑者がそう動機を説明する事件が、後を絶たない。
千葉市で起きた殺人事件では、逮捕された中学生が同様の供述をした。
なぜ「誰でもいい」と考えるのか。背景にはいったい何があるのか。20年以上にわたって家裁調査官を務めた橋本和明・国際医療福祉大教授(犯罪心理学)に聞いた。【聞き手・平塚雄太】
居場所がなかった?
――千葉市若葉区の路上で女性(84)を刺殺したとして、中学3年の少年(15)が殺人容疑で逮捕されました。
少年は女性と面識がなく、「誰でもよかった。複雑な家庭環境から逃げたくて、少年院に行きたかった」などと供述しています。この事件をどう見ていますか。
◆これまでの報道などの限定的な情報で考える限りですが、家庭でも学校でも居場所がなく、孤独感を募らせた少年が事件に及んでしまったのではないかと推測しています。
どこかで寂しい思いをして、「もっと自分に目を向けてほしい」という願望があったのではないでしょうか。
――少年は祖父母や父親らと暮らしていました。家族によると、中学に入ってから干渉を嫌がるようになり、家族との会話が乏しくなっていったようです。
◆子どもが中学生になり、しかも男子だと「自分の話を聞いて」とはなかなか家族に言いませんよね。親に反発するようにもなるでしょう。
ただ、中3は受験も近付いて進路のことを考えなくてはいけなくなる年齢です。将来への不安や葛藤を抱えている中で、母親がおらず、家族と会話が十分にできなかったのかもしれない。何らかの寂しさや不安をため込んでいたのではないでしょうか。
――そう思うのは、家庭裁判所で少年事件の調査や非行少年の更生を担う調査官を長年務め、多くの子どもたちを見てきたからでしょうか。
◆そうです。今回の少年のように「(対象は)誰でもいい」と言って犯罪に及んだ少年たちとも面接してきました。
それだけ聞くと、とても乱暴な言葉で、自暴自棄になっているように思えます。ところが、面接を重ねて信頼されるようになると、本音のようなものが次第に見えてきます。
「誰でもいい」の本音
――どのような本音でしょうか。
◆多くの場…