スカウト絶賛「プロもできない」…評価急上昇の侍J主将 負けたくない"ドラ1候補"の存在
第45回日米大学野球選手権大会は12日、新潟市のHARD OFF ECOスタジアム新潟で第4戦が行われ、日本(侍ジャパン大学代表)が6-5で逃げ切り無傷の4連勝。13日の最終戦(神宮球場)に全勝優勝を懸けて臨む。日本の主将を務める松下歩叶内野手(法大4年)は「1番・三塁」でフル出場し、2回にソロ本塁打を放つなど5打数2安打1打点。今秋ドラフト候補生としても、今大会で俄然評価を上げた選手の1人である。
人生を変えた驚きの“代表選出” 愛知工業大・中村優斗を成長させた特別な経験(侍ジャパン応援特設サイトへ)2-0とリードして迎えた2回の攻撃。2死走者なしで第2打席に立った松下は、カウント3-1から米国先発の左腕イーサン・クラインシュミット投手が真ん中付近に投じた148キロのストレートを逃さなかった。打球はぐんぐん伸び、左翼席中段へ。チームにとって貴重な追加点となり、松下は「2死走者なしでカウント3-0。長打の欲しい場面だったので、狙いにいった結果、ストレートにうまく反応できたと思います。打った瞬間に手応えがあったので『行った』と思いました」とうなずいた。
これまで今大会全4試合に「1番・三塁」でフル出場し、18打数6安打(打率.333)5打点。所属する法大でも、この侍ジャパン大学代表でも主将を任され、抜群のキャプテンシーでチームを引っ張っている。また、打席でベンチからサインが出た時、瞬時にベンチの意図を理解し、実践してみせるセンスの良さも松下の特長の1つだ。楽天の井上純アマチュアスカウトは「松下選手は長打力もありますが、何より“野球脳”の優秀さが魅力です。ああいう状況判断は、プロの中にもできない選手はいますよ」と高く評価する。
こんなシーンがあった。前日(11日)の第3戦。松下はまず両チーム無得点で迎えた3回、2死二塁の好機に右前へ先制適時打。さらに5回、1死一、三塁の場面で打席に入った。カウントが3-2となり、6球目にランエンドヒットのサインが出た。一塁走者がスタートを切る。松下は外角低めのツーシームをノーステップで確実にバットに当てて遊ゴロを転がし、この間に三塁走者をホームに迎え入れて貴重な追加点をもぎ取ったのだった。「自分としては先制タイムリー以上に、あの内野ゴロを転がせたことが自信になりました」と振り返ったところに、松下の意識の高さがうかがえた。
昨年も選出された2人「飛距離、スイングスピードは誰が見ても凄い」
今、侍ジャパン大学代表の中に、松下が意識するライバルがいる。今秋ドラフトの目玉といわれる立石正広内野手(創価大4年)だ。松下とは強打の右打ちの内野手として共通点が多いが、現時点でプロの評価は立石の方が一枚上と言わざるを得ない。
松下と立石は昨年も、ともに侍ジャパン大学代表に選出され、チェコでの「プラハベースボールウィーク」、オランダでの「ハーレムベースボールウィーク」に出場した仲。松下は「僕はライバルだと思っていますし、負けたくないという気持ちもありますが、立石から吸収できる部分も多いので、一緒にプレーできてうれしいです」と笑みを浮かべる。
その立石が今大会では、13打数1安打(打率.077)の不振。第3戦まで4番を張っていたが、第4戦ではとうとうスタメンを外れ、そのまま欠場した。
それでも松下は「立石のバッティングの飛距離、スイングスピードは誰が見ても凄いですが、誰よりも野球に対して熱い選手です。確かに今は調子が良くなくて、悔しい思いをしているでしょうが、宿舎ホテルで1人で動画を見て試合の反省をしている姿や、夜遅くまで素振りをしている姿を見かけるので、その取り組みが自分にとって刺激になっています」とライバルを称賛する。
2004年の第33回大会以来、日本にとっては21年ぶり3度目となる全勝優勝へ。「最強のチームだったと思われるように……」と、松下は最後までチームを引っ張り続ける。
(神吉孝昌 / Takamasa Kanki)