JAXA天文衛星「XRISM」の観測で超新星残骸「W49B」の特殊な構造が明らかに(sorae 宇宙へのポータルサイト)
JAXA=宇宙航空研究開発機構のX線分光撮像衛星「XRISM(クリズム)」を用いた、新たな研究成果です。 予想外だった“風”の構造 JAXA天文衛星「XRISM」の観測で明らかに 国際研究チーム「XRISM Collaboration」によると、わし座の方向・約3万6000光年先の超新星残骸「W49B」をXRISMで観測し、データを分析した結果、鼓(つづみ)のような形の双極構造をしていることが明らかになりました。 超新星残骸は超新星爆発が起こった後に観測される天体です。爆発した星の周囲に広がるガスを衝撃波が加熱することで、可視光線やX線といった電磁波が放射されていると考えられています。 W49Bの構造はこれまで詳しくわかっておらず、円盤状に膨らんだ構造を横から観測しているとする説が有力視されていました。 円盤状の構造ではなく鼓形をしていることが今回の研究で判明したものの、そのような構造になった理由についてはまだわかっておらず、非対称な爆発だった可能性や、周辺に広がる物質で爆発前に形成されていた空洞を進むように噴出物が膨張している可能性が考えられるといいます。 XRISMの観測で明らかになったW49Bの構造は、星の進化や爆発の理論に新たな知見をもたらすものとして注目されています。
XRISMは2016年に打ち上げられた「ひとみ」(運用終了)の後継機として、JAXAがNASA=アメリカ航空宇宙局やESA=ヨーロッパ宇宙機関などと協力して開発したX線天文衛星です。 小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」とともに「H-IIA」ロケット47号機で日本時間2023年9月7日に打ち上げられたXRISMは、高度約550kmの低軌道を周回しながら様々な天体の観測を行っています。 XRISMには観測装置として軟X線分光装置「Resolve」と軟X線撮像装置「Xtend」が搭載されています。今回のW49Bの研究ではResolveを用いた観測が行われました。 ISAS=JAXAの宇宙科学研究所によると、ResolveとXtendは星間空間や銀河間空間を吹き渡るプラズマに含まれる元素やプラズマの速度を画期的な精度で測定可能とされており、観測を通じて星や銀河だけでなく、銀河の集団が形作る大規模構造の成り立ちに迫ることが期待されています。 参考文献・出典 立教大学 - XRISM衛星による「レアタイプ」超新星残骸の発見に関する記者説明会を開催 Audard et al. - Kinematic Evidence for Bipolar Ejecta Flows in the Galactic Supernova Remnant W49B (The Astrophysical Journal Letters)
sorae編集部