経済・物価見通し実現なら政策調整、良い道筋へ努力=氷見野日銀副総裁
[東京 30日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は30日、一橋大学政策フォーラムで講演し、先行きの金融政策運営について、経済・物価を巡る日銀の見通しが実現していくとすれば「それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べた。「良い道筋をたどれる可能性をできるだけ高くできるよう、適切な政策運営に努めていきたい」とも話した。
日銀は24日、政策金利を0.5%に引き上げることを決めた。氷見野副総裁は「利上げ後も実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」とし、引き続き経済活動をしっかりサポートしていくと述べた。
氷見野副総裁は「金利のある世界」をテーマに講演した。2022年、資源価格の高騰などを受け、中長期の予想インフレ率を2%に抑制するために米連邦準備理事会(FRB)が急激な利上げを実施したのとは対照的に、日本では「予想インフレ率が2%をはっきり下回った状態から徐々に2%に近づいていき、経済のスラック(需給の緩み)も少しずつ縮小していく中で、政策スタンスも金融緩和度合いを少しずつ調整してきた」と説明。政策調整の理想像は「成長と分配の好循環が進み、緩やかな物価上昇が定着していく中で、自然な形でゆっくりと『金利のある世界』に入っていくという姿」だと述べた。
「金利のある世界」では単に金利があるというだけでなく「成長のある世界、賃上げのある世界、一つ一つの商品の価格が凍り付いていない世界、積極的な投資が行われ、生産性も改善していく世界でもある」とし、企業行動が変化することで「もしかすると自然利子率も少し上昇していくかもしれない」と話した。その上で、経団連が実施した会員企業へのアンケートで「金利のある世界」についてポジティブな印象を有する企業が約7割に上ったことに触れ、徐々に理想的な姿に近づいていっているとの見方を示した。
氷見野副総裁は14日の横浜市での講演に続き、この日も実質金利について論じた。「ショックやデフレ的な諸要因が解消された状態であれば、実質金利がはっきりとマイナスの状態がずっと続くというのは普通の姿とは言えないのではないか」と改めて述べた。
日銀は経済に対して中立的な実質金利である自然利子率について、マイナス1%程度―プラス0.5%程度との推計を示している。氷見野副総裁は「推計値のうち、マイナス1%前後の値は過去の強い緩和時期のデータに引きずられすぎているのではないかという見方もあるが、他方、ゼロ近傍の値の方が正しいのであれば、実質金利がはっきりとしたマイナスにある中で需給ギャップの推計値がなぜ目立って改善していないのか、という疑問もある」と指摘した。
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