データセンター電力爆食い問題、解決の鍵を握るのは「プラチナ燃料電池」(ギズモード・ジャパン)

イマイチ勢いに乗れない燃料電池にとって飛躍のチャンス。 AIブームの影響で、アメリカの電力網にはかつてない負荷がかかっています。2030年までにデータセンターの電力消費量は国内の総消費量の12%近くに達する可能性があるそうです。 専門家は、急増する電力需要に供給の伸びが追いつかないため、電力網の信頼性が脅かされ、電気料金の高騰を招いていると警告しています。

そこでテック企業は電力網に完全に依存することなく、データセンターの電力を自前で調達する方法を模索しています。 選択肢のひとつが、敷地内に燃料電池を導入すること。水素と酸素から電気を生み出す比較的クリーンな発電装置で、触媒(化学反応を速める物質)が反応を促進します。触媒がエネルギーロスを減らすため、全体的な性能も向上し、燃料電池の稼働寿命も延びるわけです。 ただ問題があって、既存の触媒はデータセンターの要求水準を満たすために必要な活性と耐久性に欠けるとのこと。 どういうことかを分解して説明すると、水素を送り込む側(アノード)では反応がサクサク進むのでノープロブレムなのですが、酸素を取り込む側(カソード)は反応がノロノロなので、ここがボトルネックになって、発電効率も寿命も頭打ちになってしまいます。 なので、この問題をクリアするには、酸素を取り込むカソード側に優秀な触媒が必要になるのです。ここから先は、カソード側の話になります。 8月6日に発表された研究結果では、この限界を克服するために設計された新しいアプローチを提案しています。実現すれば、燃料電池の用途はデータセンターだけでなく、エネルギー集約型テックにも広がるかもしれません。

プラチナは最も効果的な触媒のひとつとされていますが、高価なのがネック。燃料電池メーカーとしては、触媒性能を落とさずにできるだけ使用量を抑えたいところです。 これを実現する方法のひとつが、プラチナの塊を微細なナノ粒子に分解すること。そうすれば、反応物質の分子と接触する表面積が大幅に増加します。 この方法によってプラチナの使用量をごく少量に抑えられるのですが、トレードオフもあるんです。ナノ粒子は燃料電池の稼働中に溶解・移動・肥大化することがあり、性能が徐々に低下してしまうそうなんです。 そこで有望視されているのが、プラチナにコバルトなどの金属を組み合わせて原子を規則正しく並べた、「プラチナ系金属間化合物触媒」です。燃料電池における触媒の活性と安定性を向上できると期待されています。 ただし、プラチナの利用率を最大化し、ナノ粒子を微細かつ均一に分散させた状態を維持するには、700℃以下で合成する必要があります。 ここでまた別の問題が…。この「ナノ粒子を微細かつ均一に分散させた状態を維持」するのは、触媒の活性と耐久性を最大化するために不可欠なプロセスであるにもかかわらず、無秩序な原子配列から高度に規則正しい配列への変化を促すには、この温度では低すぎる場合が多いのだとか。


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セントルイス・ワシントン大学で化学工学教授を務めるGang Wu氏率いる研究チームは、この問題の解決策を見つけたと考えているそうです。 チームは、足場のような役割を果たす炭素ナノ構造体を開発しました。これを使うことで、大量のプラチナ・コバルト金属間化合物ナノ粒子を高度に詰め込みつつ、均一に分散させることが可能になったといいます。 しかも、高温で加熱してもナノ粒子が凝集することなく、規則正しい金属間化合物構造を形成できるようになります。 Wu氏は声明で次のようにコメントしています。 この特殊な炭素ナノ構造体による足場のおかげで、プラチナ・コバルト触媒を1,000℃まで加熱できました。業界が好む高濃度のプラチナを触媒に含有したまま、ナノ粒子を5ナノメートル未満に保ち、均一に分散させつつ、非常に規則正しい構造を形成するのに十分な高温です。 Wu氏によると、このカーボンナノ構造にはナノ粒子を安定させるだけでなく、プロトン(水素イオン)や酸素、水を電極の中で移動しやすくする効果もあるそうです。 同氏は、「その結果、この足場に組み込まれたプラチナ・コバルトナノ粒子は、最高レベルの性能と長期にわたる耐久性を発揮しました」と述べています。 テストにおいて、炭素ナノ構造体は15万回の過酷な電圧サイクル(2万5000時間の稼働に相当)をへても、性能の85%を維持していました。 Wu氏は、セントルイス・ワシントン大学の技術管理事務所を通じて特許を出願済みだそう。今後はさらなる開発と産業界のパートナーとのコラボを通じて、燃料電池触媒の最適化に残された課題をクリアし、データセンター向けのより実用的な電源に育つことを期待しているとのことです。 ちなみに、ここまでずっと「問題はカソード側」という話をしてきましたが、そもそもアノード側で使う、環境負荷が小さいと宣伝されている水素は、どの電源で製造して、どうやってデータセンターまで運んでくるんでしょうか? そこって見逃しがちだけど重要だったりするんですよね。

Kenji P. Miyajima

ギズモード・ジャパン
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