ロンドンで多発するスマホ窃盗 その大胆な手口と意外な行き先

 「駅前ではなるべく地図アプリを使わないで」「車道側にはいない方がいい」

 昨年4月にロンドンに赴任した当初、何人もから助言された。スマートフォンの引ったくりが多発しているためである。「知らない街で地図無しは厳しいでしょ……」と内心ぼやいたものだ。

 ロンドン警視庁によると、2024年に盗まれた携帯電話は、確認されただけでも約11万7000台に上る。欧州の都市の中で被害が最も多いとみられている。

日本人も被害

 実際に盗まれた人の話はよく聞く。ロンドンに留学中の日本人男性(30)は、約1年半の間に3度もやられた。

 最初は23年の秋。街中でiPhone(アイフォーン)を見ていたところ、若い男が「そのTシャツいいね」と声をかけてきた。会話をするうちに打ち解けたが、気付くと男の仲間たちも加わっていた。

 男から「友達になろうよ。インスタグラムを交換しよう」と言われてスマホを渡すと、そのタイミングで仲間の一人が話しかけてきた。男の方に向き直ると、スマホが見当たらない。行方を尋ねてもしらを切られ、男たちは突然、走って逃げ出したという。

 3度目の被害は典型的だ。25年の初夏、寮の前の歩道でアイフォーンをいじっていると、車道を走ってきたバイクの男に引ったくられた。男は黒ずくめで目出し帽をかぶり、マスクも着けていた。どちらのケースも「一瞬、何が起きたかわらかなかった。走って追いかけたが、とても追いつけなかった」。

 顔を隠した人物が、バイクやペダル付き電動バイク(日本の「モペット」)に乗りながら歩行者の手からスマホを奪い取り、加速して逃走する。これは定番の手口で、白昼堂々行われることも多い。

「おいしい犯罪」

 社会問題になっているスマホ盗だが、検挙率は極めて低い。ロンドンで24年3月~25年1月に10万台以上が盗まれたのに対し、訴追されたのはわずか495人。先述の日本人男性も被害を警察に届け出たが、「捜査したものの見つからなかった」というメールが後日届くのみだった。

 10年代の緊縮財政による警察の人員・予算の削減が影響しているとも指摘されるが、ロンドン警視庁は捜査に本腰を入れてこなかった。一方、英BBC放送によると、窃盗犯はスマホ1台につき最大300ポンド(約6万3000円)を稼げるという。もうかる上に、捕まりにくい。スマホ盗は犯罪者にとって「おいしい仕事」なのである。ジョーンズ内務省警察・治安担当相は「一部の犯罪者は麻薬取引から携帯電話ビジネスに移行している」と話す。

浮かぶ国際犯罪ネットワーク

 では、盗んでいるのは誰なのか。

 ロンドン警視庁は…

関連記事: