患者置き去りの診療報酬「改悪」 精神医療の現場に混乱招く
患者の母親の話を聞く小児精神科医の渡辺恵里さん(左)。6月の診療報酬改定を巡り「患者は信頼して通院してくれている中、急に現場の都合で混乱させてしまってつらかった」と吐露した=福岡市で2026年6月5日、田崎春菜撮影
かかり付けの医療機関を変更しなければならないの?
診療報酬改定を巡り、精神科クリニックに通う患者や家族の間で不安が広がりました。
その原因と背景には何があったのか。この問題を取材してきた田崎春菜記者が解説します。
「報酬4割引き下げ」の余波
田崎春菜(社会部西部グループ)
6月1日に行われた診療報酬改定が、精神医療の現場に混乱を招いた。
国家資格の「精神保健指定医」を持たない医師である場合、日常的な診療の一つである「通院・在宅精神療法」で算定される報酬が、従来より原則4割引き下げられたからだ。
患者らの間で診療体制変更への不安が広がったことを受け、厚生労働省は改定直前の5月末になって一部を見直す改善策を打ち出した。
ただ、混乱の余波は今も残る。患者置き去りの「改悪」はあってはならない。
精神医療は、精神保健福祉法に基づき強制入院の判断などをする国家資格を持つ「精神保健指定医」と、それ以外の「非指定医」が対応する。
病床がない医院で働き入院措置を判断する必要がなければ、資格を取らない医師は少なくない。
改定により、「通院・在宅精神療法」の報酬点数は非指定医の場合、指定医の6割分しか算定されなくなった。
減算を免れるには、(1)精神病床を持つ特定機能病院など基準に当てはまる医療機関で勤務(2)精神医療に20年以上従事し、かつ過去1年間に行政機関の業務をする--という条件を満たすことが必要になった。
精神科クリニックは「減算回避」に苦心
「もう仕事ができなくなるかもしれない」
改定の詳細が公表された今年3月、福岡市中央区にある川谷医院の小児精神科医、渡辺恵里さん(45)は目の前が真っ暗になった…