太古のオオカミのミイラ、胃から巨体動物の組織片見つかる シベリアの永久凍土で保存
(CNN) 1万4000年前のシベリアの大草原地帯。生後2カ月のオオカミの子が、ケブカサイの肉をがつがつと食べていた。その直後、地下の巣穴が崩壊し、子オオカミとその姉妹は命を落とした。 【画像】子オオカミの胃から見つかった体毛の残る組織片、他1枚 死骸と共に永久凍土に凍りついていたオオカミの胃の内容物から、科学者たちは絶滅前の最後の部類に入るケブカサイのDNA配列を解読することができた。ケブカサイは角のある巨体が特徴で、マンモスとも共存していた。今、オオカミの最後の食事から得られた発見が、ケブカサイ絶滅の理由を解き明かす手がかりとなりつつある。 14日に科学誌「ゲノム・バイオロジー・アンド・エボリューション」に掲載されたこの研究は、ある動物の胃の中で発見された別の動物の全ゲノム(遺伝コード全体)の配列を、科学者が解読できた初の事例となる。スウェーデンのウプサラ大学の研究機関に在籍し、今回の研究論文の共著者を務めた生物情報学者のカミロ・チャコンドゥケ氏はそう述べている。 「ケブカサイが絶滅したこの頃の化石はほとんど残っていないため、非常に興奮している」と、チャコンドゥケ氏は語った。 2011年、トゥマト村近郊の永久凍土から、毛皮に覆われたままのオオカミの子のミイラが発見された。その後の解剖で、胃の中に小さな組織の断片が残っているのが見つかった。科学者たちは1万4000年前のこの組織からDNAを採取。DNA配列を解析した結果、ケブカサイの一種であることが判明した。 チャコンドゥケ氏によるとケブカサイの組織の毛は無傷のまま残っており、子オオカミは餌を消化し始めたばかりの時点で死んだことが示唆されるという。 「形態学的分析から、オオカミたちが生き埋めになったことは明らかだ。彼らは一瞬で死んでしまったため、このように保存された」「消化器系が(ケブカサイの)組織に浸透するのに十分な時間がなかったのではないかと考えられる」(チャコンドゥケ氏) 当該の子オオカミの姉妹は、15年に発見された。どちらも襲われたり怪我をしたりした形跡はなかった。研究からは、オオカミが若いケブカサイを狩ることができた可能性が示唆される。成体のケブカサイは、現生最大のサイ種と同程度の大きさだったと考えられる。 長い毛を持つケブカサイは寒冷な環境に適応し、最終氷期にはユーラシア大陸北部全域に生息していた。研究によると生息域は3万5000年前から徐々に東へと縮小したが、シベリア北東部では生息を続け、1万8400年前以降に絶滅したと考えられていた。 ケブカサイの化石は化石記録の中では比較的よく見られるものの、絶滅と推定される時期の化石はほとんど見つかっておらず、遺伝情報をもたらすものもないため、オオカミの胃の内容物は研究者にとって貴重なものとなっている。 ケブカサイのDNA解析を行うに当たり、チャコンドゥケ氏とその同僚たちは最も近い現生種であるスマトラサイをガイドとして用いた。サンプルのゲノム配列を解読した後、彼らはそれを、シベリアの永久凍土で見つかった1万8000年前と4万9000年前のケブカサイの化石から解読された2つのゲノムと比較した。 3つのゲノムにより、研究者たちは、近親交配のレベルや有害な突然変異の数など、この種の遺伝的多様性が最終氷期を通してどのように変化したかを調査することができた。 この研究では絶滅に近づく中でも遺伝的劣化の兆候は見られず、ケブカサイは絶滅直前まで安定した、比較的大きな個体群を維持していた可能性が高いことが示唆された。 研究者たちは、絶滅は比較的急速に起こったに違いないと結論付けている。おそらく約1万1000年前まで続いた最終氷期の終焉(しゅうえん)に伴う地球温暖化の結果と考えられるという。 2匹のオオカミの子についてはこれまで、初期に家畜化されたイヌ、あるいは飼いならされたオオカミだと考えられていた。しかし25年の研究では、この2匹が人間と接触した証拠は見つかっていないとされる。 今回の研究はケブカサイの進化史を理解する上で「極めて貴重」だと、英ヨーク大学の考古学上級講師、ネイサン・ウェールズ氏は指摘する。同氏はオオカミの子の研究に携わったが、ケブカサイのサンプルに関する研究には関与していない。 ウェールズ氏によれば、絶滅に近づいた生物は個体数の減少や高度な近親交配といった現象が想定されるが、今回確立されたサンプルの分析では遺伝子レベルでの個体群の安定が認められるという。 「論文の著者らは、急激な環境変化といった外的要因が絶滅を引き起こしたとする妥当な結論を導き出している」(ウェールズ氏) ウェールズ氏はオオカミの子の胃の中から植物、昆虫、そしてセキレイも発見されていると指摘。こうした食事の内容物にも太古のDNAの分析法を適用できれば、非常に興味深い研究になるだろうと語った。