【核爆発の衝撃で進む恒星間移民船「オリオン」】実在した飛行実験モデルと幻の計画とは?(スペースチャンネル)

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オリオン計画のイメージ 出典:スペースチャンネル(AI)

冷戦時代、アメリカが本気で考えた宇宙船の推進方法は、ロケットエンジンでも原子炉でもありませんでした。その名は「オリオン計画」。宇宙船の後ろで次々と核爆弾を爆発させ、その衝撃波で推し進めるという、前代未聞の“核パルス推進”構想をご紹介します。

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爆弾で宇宙を飛ぶ宇宙船

オリオン計画のコンセプト 出典:NASA

オリオン計画は1958年、NASAなどの国家機関の支援を元にスタートしました。

仕組みはシンプルで過激。核爆発による膨大なエネルギーを「プッシャープレート」という巨大な金属板で受け止め、衝撃吸収装置で乗員に伝わる加速度を和らげながら宇宙船を加速させるというものでした。理論上は、化学ロケットをはるかに超える効率と推力を兼ね備え、火星まで125日で往復可能とNASAは試算していました。

推進効率(比推力)は、通常の化学ロケットが数百秒に対し、その10倍以上を誇る4,000秒。推力はメガニュートン級という、もはやどの程度かわからないほどの驚異的な性能を誇ります。

恒星間飛行にも使用可能?

オリオン計画のイメージ 出典:スペースチャンネル(AI)

このオリオン型宇宙船の構想は、理論上は光速の数%に到達可能で、太陽系のお隣の星系である「アルファ・ケンタウリ星系」への航行さえ射程に入ると考えられていました。搭載可能なペイロードはおよそ2万トンに及び、数百人規模の「小さな町」を維持できるだけの規模を持っていたのです。

機体は非常に巨大で、燃料として使用される約30万発、1発1トンほどの核爆弾を含めた総質量は40万トンにも達するとされました。推進方法は、3秒ごとに核爆発を起こし、その反動で宇宙船を加速。乗員が耐えられる重力加速度「1G」を維持したまま10日間加速し続けることで、光速の30分の1にあたる秒速1万キロメートルに達する、と想定されていました。この速度なら、地球から最も近い恒星系アルファ・ケンタウリまで約140年で到達できる計算です。

とはいえ、このような超高速で進んだ後に「どう減速するのか」という課題が残ります。そのため当時の設計案では、到着時にブレーキをかけられるよう宇宙船を2段式にするアイデアも検討されていました。技術的なハードルは数多く存在するものの、現時点で人類が考えうる「恒星間移動の最も現実的な方式」のひとつとして評価されています。

実験と中止の理由

試作核パルスエンジン「Hot Rod」出典:National Air and Space Museum

1959年には化学爆薬を使った小型モデル実験に成功し、模型は高さ約100メートルまで飛び上がりました。しかし本格的な核実験は行われないまま計画は頓挫します。最大の理由は核実験禁止条約(1963年部分的核実験禁止条約)の成立。宇宙や大気圏での核爆発は禁止され、オリオン計画は政治的に不可能となったのです。さらに、アポロ計画が進行していた当時、政府に「核爆発で宇宙へ行く」強い動機もありませんでした。

オリオン計画の模型は現在、米国スミソニアン博物館に展示されています。以後も「デダロス計画」「ロングショット計画」など、核パルス推進を改良した構想は続きました。近年では反物質を使った小型爆縮型の研究も進められています。

ただし、地球環境や国際条約を考慮すると、地上からの打ち上げは現実的ではありません。仮に採用されるとしても「宇宙空間でのみ起動する」形になるだろうと専門家は指摘します。

幻の宇宙大航海計画

オリオン計画により構想された宇宙船 出典:NASA

オリオン計画は、人類が持つ核兵器の力を「破壊」ではなく「探検」に使おうとした、極めて大胆な試みでした。半世紀以上を経た今も、この構想はSFだけでなく、現実の宇宙工学において「もし実現していたら…」と語り継がれる“幻の宇宙船”なのです。

もしオリオン計画が実現していたら、人類はすでに太陽系を自由に飛び回っていたかもしれませんね。皆さんは、後ろで核爆発を起こしている宇宙船に乗ってみたいですか?ぜひコメントお待ちしています。

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