トランプ氏、米軍は「間もなく」イランを離れると イスラエルはレバノンに「安全地帯」
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米・イスラエルによるイランに対する戦争をめぐり、ドナルド・トランプ米大統領は3月31日、イランによる核兵器取得を阻止するという戦争目的は達成できたので、アメリカは「間もなく(イランを)離れる」と述べた。米軍の行動は「2~3週間」で終わる可能性もあるという。イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、一定の条件が整うなら、戦争を終わりにするために「必要な意思」がイランにはあると発言した。
ホワイトハウスは同日、トランプ大統領が米東部時間4月1日午後9時(日本時間2日午前11時)から、イランについて国民に演説すると発表した。キャロライン・レヴィット報道官は、大統領が「イランの最新状況について重要な説明をする」と述べた。
トランプ氏は他方、原油輸送の要衝ホルムズ海峡をイランが事実上封鎖している問題について、「イギリスなど」の諸外国は「自分の石油は自分で取りに行け!」とソーシャルメディアに書いた。
31日にはアメリカのガソリン小売価格の全国平均が、2022年8月以来初めて1ガロン当たり4ドルを突破した。
こうした中、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は同日、 イランと協力関係にあるレバノンのイスラム教シーア派武装勢力ヒズボラとの紛争終結後は、レバノン南部に緩衝地帯を設けると発表。イスラエル北部の住民にとっての安全が確保されるまでは、レバノン北部に避難したレバノン人の帰還は認めないとした。これには欧州やカナダから非難が出ている。
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トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し、アメリカは「非常に間もなく(イランを)離れる」と述べた。米軍の行動は「2~3週間」で終結する可能性があるとも話した。
大統領は、2月末にイスラエルと連携してイラン空爆を開始する前に設定していた目標は達成されたと主張。イランが核兵器を取得できるようになるのを阻止するという主な目標は達成され、アメリカは今「仕上げの段階」に入っていると述べた。
トランプ氏はまた、アメリカがイラン上空の制空権を掌握しており、多くの政治・軍事の上級指導者が殺害されたことにより、体制転換も達成されたと主張した。イラン政府の新指導部については、以前と比べて「過激さがずっと抑えられて」おり、「前より理性的だ」と評した。
さらにトランプ氏は、イランの指導者たちが戦争終結のため、アメリカと「合意したいと懇願している」のだと述べた。トランプ氏が繰り返してきたこの言い分を、イラン側は繰り返し否定している。
トランプ氏はさらに、イランとの合意が成立しなくても、戦争は終わることもあり得るとも付け加えた。
戦争による燃料価格の上昇については、アメリカが軍事行動を終えれば、価格はすぐに下がると話した。
さらに大統領は、「フランスやほかのどこかの国が、石油やガスが欲しいなら、自分でホルムズ海峡を通って行けばいい。あそこまで行って、自分たちでやりくりすればいい」と述べた。
「海峡がどうなるのか、我々は一切関与しない。そういう国々、中国などは海峡を通って、美しい船に燃料を補給し、自分の面倒は自分で見るはずだ。我々がやる理由などない」とも、トランプ氏は話した。
ホワイトハウスでの発言に先立ちトランプ氏は、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、ホルムズ海峡の通航が制限されているため航空燃料を確保できていない「イギリスのような国々」は、「少し出遅れた勇気を奮い起こし、海峡へ行って、ともかく奪う」べきだと書いた(太文字は原文では大文字)。
トランプ氏は、「イランに対する斬首作戦に関与することを拒んだ国々」に対し、「そろそろ自分で戦う方法を学習しなくては。アメリカはもう助けてやらない。そちらが、我々を助けなかったのと同じだ」、「イランはとどのつまりは壊滅している。大変な部分は終わった」として、最後に「自分の石油は自分で取りに行け!」と書いた。
トランプ氏は別の投稿では、フランスが「軍需物資を積んでイスラエルに向かう航空機に対し、フランス領空の通過を認めなかった」など、フランスが「非協力的」だったと非難。「アメリカは忘れない!!!」と書いた。
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イランのペゼシュキアン大統領は同日、一定の条件が満たされるなら、米・イスラエルとの戦争を終結させるために「必要な意思」をイランは有していると述べた。欧州理事会のアントニオ・コスタ議長との電話会談での発言で、イラン国営IRNA通信が伝えた。
IRNAによると、ペゼシュキアン大統領は必要な条件として、将来的な侵略を一切再発させないための「義務を伴う保証」が含まれると話した。
大統領は「我々は、緊張や戦争を望んだことは全くない」と述べ、「状況正常化の解決策は、(米・イスラエルによる)侵略的攻撃の停止だ」と付け加えた。
イランのアッバス・アラグチ外相は同日、カタールのメディア、アルジャジーラに対し、現在行われているのは「交渉ではなく」、中東におけるイランの「友好国を直接、あるいは間接的に介したメッセージのやり取り」だと話した。
アラグチ外相は、アメリカのスティーヴ・ウィトコフ特使から「これまでと同様に直接メッセージを受け取っているが、だからといって交渉していることにはならない」とも述べた。
外相はさらに、アメリカが提示した15項目の計画について、イランはまだ回答していないと述べた。これは、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)と関係があるタスニム通信が3月26日、「事情に詳しい関係者」の話として、イランが同計画に対し独自の条件で回答したと報じていたことを受けた発言だ。
アラグチ外相は、イランの「戦争終結に向けた条件は明確だ」としたうえで、将来の攻撃が「二度と繰り返されない」ことを確実にすること、そして今回の紛争によって生じた損失に対する補償を受けることが必要だと強調した。
さらに外相は、イランは停戦には応じないとし、「イランだけでなく、地域全体における完全な戦争終結」を求めていると述べた。
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アメリカでは31日、ガソリンスタンドでの平均小売価格が、約4年ぶりに1ガロン当たり4ドルを超えた。
アメリカ自動車協会(AAA)によると、レギュラーガソリン1ガロン当たりの全米平均価格は4.02ドルに達し、戦争開始時より1ドル以上値上がりした。ディーゼル価格も約1.70ドル上昇している。
2月28日に紛争が始まる前、アメリカでのガソリン平均小売価格は1ガロン当たり約2.98ドルだった。
物資輸送に不可欠なディーゼルは当時約3.76ドルで、現在の平均価格は5.45ドルに達している。この上昇は、食料品価格の上昇につながるとみられている。
今回の4.02ドルという水準は、2022年8月以来の高値。全米平均のため、州によってはすでに1ガロン当たり4ドル超の価格を払っている運転者もいる。
ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年6月にガソリンが5.01ドル、ディーゼルが5.81ドルまで上がった時の過去最高値よりは低い。しかし、今回の価格上昇は前回よりも家計への影響が大きくなる可能性があると、金融グループ「ナティクシスCIB」のアメリカ担当チーフエコノミスト、クリストファー・ホッジ氏は警告した。
ホッジ氏は、「消費者は今、2022年当時よりもはるかに厳しい状況に置かれている」と指摘。現状に比べると当時は、雇用と賃金の伸びが今より堅調で、多くの世帯がパンデミック期間中に貯蓄を積み上げていたと指摘した。
イスラエル国防軍(IDF)は31日、過去24時間の間にイラン国内の「政権関連目標」230カ所を空爆したと発表した。攻撃対象は、防空システム、弾道ミサイル発射装置、兵器製造施設だったとしている。
一方、イラン社会保険庁の社会保険投資会社(SHASTA)は声明で、国内最大級の医薬品メーカーの一つが「破壊され、生産ラインも損傷を受けた」と明らかにした。
イラン国内メディアが伝えたこの声明でSHASTAは、今回の攻撃を「敵による残虐な行為」で、「イラン国民の生命と健康を明確に標的にしたものだ」と非難した。
イランのアラグチ外相はソーシャルメディア「X」への投稿で、イスラエルが「医薬品会社を公然と、しかも恥じることなく爆撃している」と非難し、イラン軍は「侵略者を厳しく処罰する」と述べた。
複数のイラン・メディアや元外相のジャヴァード・ザリフ氏によると、被害を受けた企業は「トフィグ・ダル・リサーチ・エンジニアリング」。同社はSHASTA傘下にあり、イスラエル国防軍がXのペルシャ語アカウントで避難警告を出していた地域にある。
IDFは、イスラエルが同社を攻撃したとするイラン側の主張について、「現在確認中だ」とBBCに述べた。
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)はこの間、アメリカのテクノロジー企業が「暗殺標的の設計と追跡において、主要な要素」になっていると非難し、マイクロソフト、アップル、グーグル、メタなどを含む18社を標的にすると主張。テヘラン時間の4月1日午後8時(日本時間2日午前0時半)から、中東の事業拠点の周辺1キロ以内から避難するよう命令した。
このほか、テスラ、エヌビディア、シスコ、ヒューレット・パッカード、インテル、オラクル、IBM、デル、パランティア、JPモルガン、ゼネラル・エレクトリック、スパイア・ソリューションズ、G42、ボーイングも、IRGCに名指しされている。
IRGCは声明で、「これらの組織のスタッフには、自分の命を守るため、直ちに職場から避難するよう勧告する」と述べた。さらに、「(中東)地域内のすべての国において、これらのテロ組織の近くに住む住民も、当該拠点から1キロ以内の範囲から避難し、安全な場所へ移動すべきだ」と呼びかけている。
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イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は31日、 ヒズボラとの紛争終結後は、レバノン南部に緩衝地帯を設け、イスラエル国境からリタニ川までの約30キロの全域を管理下に置く方針を明らかにした。
カッツ氏は声明で「作戦終了時にIDFはレバノン領内に安全地帯を設置し、対戦車ミサイルへの防御線として展開する。リタニ川までの全域について治安を維持する」と述べた。
さらに、「北部へ避難しているレバノン南部の住民60万人以上の帰還は、イスラエル北部住民の安全と治安が確保されるまで、リタニ川以南では全面的に禁止される」と国防相は述べた。
また、「国境付近のレバノンの村にある全住宅は、ガザのラファやベイト・ハヌーンと同じ方式で、北部住民に対する国境周辺の脅威を恒久的に除去するため、すべて破壊される」と述べた。
イスラエル当局は、ヒズボラによる攻撃からイスラエル北部のコミュニティを守るため、地上部隊をレバノンに投入したと述べている。これに先立ち、カッツ国防相は、レバノン政府が「何もしてこなかった」ため、イスラエルが行動を取っていると発言していた。
レバノンの首都ベイルートでは31日、イスラエルによる攻撃が相次いだ。
報道によると、レバノンの首都ベイルートは夜間に激しい空爆を受けた。イスラエル軍は、ヒズボラの司令官と別の上級人物を攻撃したとしている。
IDFは、ベイルート全域で「2件の別個の攻撃」を実施したと発表したが、詳細は明らかにしていない。
レバノン国営通信によると、3月2日以降、レバノンでの死者数は1268人に増え、さらに3750人が負傷している。
戦争開始以降、イスラエルはベイルートやレバノン南部に対して定期的に攻撃を行っており、イランが支援するヒズボラに関連する拠点を標的にしているとしている。
ロイター通信は、治安当局者の話として、ベイルート南部郊外のジナー地区からは煙の柱が立ち上り、市内の一部では「激しい」爆発が複数発生したと伝えた。
レバノン国営メディアは、ベイルート南方を走行していた車両が、イスラエルのドローンに攻撃されたと伝えた。
欧州10カ国の外相は同日、共同声明を発表し、レバノンでの紛争が「これ以上拡大」することを避けるようイスラエルに求め、レバノンの「領土保全」を尊重するよう呼びかけた。
声明は、イランに連帯する形で行われたヒズボラによるイスラエルへの攻撃を非難するとともに、レバノン政府が同国全域で「主権を回復」することを支持し、後押しするとしている。
また、レバノンとイスラエルの間での「直接的な政治交渉」を求め、すべての当事者に「即時の緊張緩和」を求めている。
この声明には、ベルギー、クロアチア、キプロス、フランス、ギリシャ、イタリア、マルタ、オランダ、ポルトガル、イギリスの各国外相と、欧州連合(EU)のカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表が署名した。
カナダのマーク・カーニー首相は、イスラエルによるレバノンへの行動を「違法な侵攻」だとして非難した。
首相は記者団に対し、「これは違法な侵攻だ。レバノン侵攻であり、同国の領土主権の侵害だ」と述べた。
さらに、「現実的に見れば、レバノン政府はヒズボラを禁止し、同組織とそのテロ活動、そしてイスラエルへの脅威に対処しようとしている。(レバノン政府が何もしていないというのが)今回の侵攻の正当化理由として示されているが、我々はそれを非難する」と述べた。