トランプ氏の懲罰関税は中国の「迂回輸出」狙い撃ち、効果は未知数
トランプ大統領は第3国を経由して米国に「迂回(うかい)輸出」されたと判断する製品に、40%の追加関税を課すと警告した。これは主に、米国の関税を回避して中国からの製品が流入することを防ぐための措置だ。
この措置は、ホワイトハウスが7月31日夜に各国の国別関税率を発表する中で明らかにされた。
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だが、米国が迂回輸出と見なすかを判断するために必要な「原産地規則」の詳細は、多くの国にとって依然明らかではない。
キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミスト、リア・フェイヒー氏は1日のリポートで、「この措置が実際にどのように運用されるか、いまだ明確ではない」と指摘した。
米高官は7月31日、原産地規則について今後数週間以内に決定が行われると述べたが、当初は8月1日よりも前に問題を解決すると米政府は発表していた。
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この詳細はベトナムなど東南アジア諸国にとって、とりわけ重要だ。トランプ政権1期目の貿易戦争を受けて多くの企業や工場が中国から拠点を移した東南アジアは、米国への主要サプライヤーとして台頭したが、いまだに生産の部品や原料の多くを中国に依存している。
タイのチャンタウィット商務副大臣は、同国に対する米国の関税率は19%で、マレーシアやインドネシア、カンボジア、フィリピンと同じであり、ベトナムの20%より低いと指摘。そのため競争力を維持できるとしつつ、迂回輸出の問題はまだ解決していないと述べた。
「交渉プロセスと原産地規則については、米国からのさらなる説明を待つ必要がある」と、チャンタウィット氏は1日の発表文で述べた。
また、タイのチュンハワチラ財務相は別の声明で、タイ産品として認められるには、現地調達比率が40%を超える必要があるとの見解を表明。ただ、この詳細について米国と合意には達していないと説明した。
この規則の暗黙の標的は中国だ。トランプ氏は中国が割安な製品で米国の製造業と雇用を空洞化させるため、自由貿易協定を乱用していると非難している。中国を巡っては、2週間以内に訪れる関税導入停止期限の延長をトランプ氏が最終判断することになっている。
米政府の通商交渉官を務めた経歴のあるスティーブン・オルソン氏は、迂回輸出の問題が交渉を複雑にしているとみている。
「中国は迂回輸出の規定を、自らの利益を狙い打ちにしたものであると正しく認識するだろう。継続中の米国との貿易交渉に、それが影響を及ぼすことは避けられない」とオルソン氏は述べた。
中国側はソーシャルメディアでこの問題を取り上げ、ベトナムに「甚大な」影響が及び得ると訴えている。
「『迂回輸出』に対する米国の制限は現在のところ、外国企業に投資の継続をちゅうちょさせ、ベトナムの工業団地や外国投資の計画に影響するだろう」と、中国国営中央テレビ(CCTV)が微博(ウェイボ)で発信する論説媒体の玉淵譚天は論じた。玉淵譚天は貿易問題に関する政府の意向の発信に利用されることが多い。
一方、中国製造業者が米国に製品を供給する能力は、この懲罰的な関税による打撃をほとんど受けないと予想するアナリストもいる。
キャピタル・エコノミクスのフェイヒー氏は、執行面の困難さを指摘し、「あからさまな迂回は減るとしても、結局のところ迂回輸出は続き、中国全体の輸出に対する米関税の影響はそがれるだろう」と述べた。
原題:Trump’s 40% Penalty for Tariff Dodging Missing Key Details (1)(抜粋)