遠のく「黄金時代」、米景気減速でトランプ離れも-責任転嫁は裏目に

トランプ米大統領は景気減速の兆しが浮上する中、国民に忍耐を求める一方、その責任を前政権に転嫁する姿勢を示している。揺れ動くトランプ氏の姿勢は、経済改善を期待して投票した有権者の支持を失う恐れがある。

  トランプ政権の包括的な上乗せ関税の発表により、世界の金融市場は混乱。足元で消費者信頼感は急低下している。トランプ氏はこれまで「黄金時代」の復活に向けて短期的な痛みに耐えるよう国民に呼びかけていた。

  ところが、第1四半期(1-3月)の国内総生産(GDP)は、関税導入を前にした輸入急増で2022年以来のマイナス成長に陥った。トランプ氏とホワイトハウスはデータの発表を受けて、その責任をバイデン前大統領に転嫁した。

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  それでも、トランプ氏の支持派と批判派の双方から、米経済はバイデン氏ではなく、完全にトランプ氏の手にあるとの認識が広がっているとの指摘が上がっている。トランプ氏が関税政策を通じて、世界経済の再構築を図る取り組みを強化していることが背景にある。米経済の健全度を測る上で、2日には4月の雇用統計が発表される。

政治的リスク

  トランプ氏の支持者の中には、政策が成果を生むまで待ち、経済状況がどれほど悪化してもトランプ氏を支え続ける層が存在する。こう指摘するのは、反トランプ派のサイト「ザ・ブルワーク」を運営し、有権者のフォーカスグループ調査を行っているサラ・ロングウェル氏だ。

  しかし、2020年の大統領選でバイデン氏を支持し、24年の選挙ではトランプ氏に投票した人を中心に、トランプ氏は有権者の支持を失いかねない状況にあると同氏は指摘する。特にトランプ氏支持に乗り換えた有権者は、商才を兼ね備えたトランプ氏や共和党が物価を下げ、景気を良くしてくれると期待していたためだ。

  同氏は、一部の有権者はそれほど気長に待ってくれないという点だけでなく、経済運営に優れているというトランプ氏に対するイメージに疑問を投げかけるという点においても、トランプ氏は脆弱性を抱えていると話す。

  世論調査からはすでに、トランプ氏の経済手腕にして有権者の支持が失われ始めている兆候がうかがえる。米ピュー・リサーチ・センターによると、関税引き上げ、連邦機関の予算削減、DEI(多様性、公平性、包摂性)プログラムの廃止など、就任後100日間の主要な施策に対して、大多数の成人が不支持を示している。

  共和党のストラテジスト、アレックス・コナント氏は「トランプ氏がすぐに状況を好転させるとは誰も期待していないが、悪化させることは許されない」と指摘。「関税は非常に不人気だ」と述べた。

リセッションの足音

  エコノミストは、4-6月(第2四半期)には貿易赤字の縮小により、米経済が持ち直すと予測している。しかし、ブルームバーグが実施した調査によれば、今後1年に景気後退が起きる確率は45%と見込まれている。まずは2日に発表される4月の雇用統計を皮切りに、トランプ関税を起因とする経済の混乱や不透明感が指標に表面化し始めるかもしれない。

  有権者や企業、投資家の不安が高まる中で、2026年の中間選挙は確実に近づいている。上下両院でかろうじて多数派を維持している共和党にとっては危うい状況だ。

  共和党の世論調査担当員ウィット・エアーズ氏は、GDPなど不利な統計についてトランプ氏と側近らがバイデン氏に責任転嫁している点を問われると、トランプ氏が上乗せ関税を発表した「解放の日」以来、「多くの米国人の目には、この経済の責任は完全にトランプ氏にあると映る」と述べた。

原題:Trump’s Effort to Blame Biden for Economy Ignores Tariff Fallout(抜粋)

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