パフォーマンス上がる。ストレスを和らげ、記憶力・睡眠の質も変わった「精油」活用術

さまざまな不調を抱えていた若い頃から、アロマテラピーに関心を持っていました。

一時は専門的に学ぼうと思ったのですが、「若い女性の世界」というイメージが大きく、その世界に入ることができず、「ときどき精油の匂いをかぐ」というかたちで、ゆるく親しんできました。

そこから一歩前進したのは、今年になってから。3月に刊行された『「植物の香り」のサイエンス なぜ心と体が整うのか』(塩田清二著、竹ノ谷文子著/NHK出版)を読んでのことでした。本書には、医学的な研究にもとづいて検証された精油の効果が、数多く記されています。

おかげで、「よくわからないけど、なんとなくの効果はあるのだろう」という漠然とした認識が、「仕事のパフォーマンスや生活の質を増すアイテム」へと一変。積極的に活用するようになりました。

今回の記事では、本書の知見をベースに、精油の効果を紹介していきます。

精油のなかでも、もっともメジャーなものの1つが、ラベンダー。ほかにはない独特の清々しい香りが好きな人は多いでしょう。

そのラベンダーの香りには、抗ストレス効果があるそうです。

ラベンダーの効果を検証した、横浜薬科大学の実験では、参加者を2グループに分け、片方のグループは特に香りはなしの室内で、もう片方はラベンダーの香りを満たした室内で、スピーチや暗算の課題をさせました。

人間は、ストレスを感じると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されるそう。課題の終了後、唾液中のコルチゾールの濃度を測定したところ、香りなしのグループはその濃度が上がっていました。

一方、ラベンダーの香りありのグループは、コルチゾールの濃度上昇は見られませんでした。つまり、通常であればストレスと感じられたことが、ストレスとならなかったわけです。

ラベンダーの精油の主成分は、リナロールと酢酸リナリル。

このうち酢酸リナリルが、抗ストレスの効果を生むことがわかっています。酢酸リナリルは、ベルガモットとクラリセージにも含まれており、ラベンダーと同様の効果が得られると考えられています。

ここ一番で頑張りたいときには「ペパーミント」

長時間の頭脳労働などで起こる脳の疲労を軽減させる精油、ペパーミント。

京都府立医科大学など複数の大学の共同研究で、被験者にパソコンの作業を2時間行なってもらいました。その際、室内の香りの条件を、香りなしから、グレープフルーツ精油の香り、4種類の精油をブレンドした香りなどと変えながらの12日間にわたる実験でした。

結果、ペパーミントの香りが、疲労感を軽減し、活力を上げ、否定的感情を低下させるというもっともポジティブな結果が見られました。これは、ペパーミントによる交感神経の活性化によるものだそう。

ただ注意したいのは、疲労そのものが消えたのではなく、「疲労のシグナル」を隠しただけなので、休息が不要になるわけではない点です。

そのため本書では、どうしても頑張らなくてはいけない場面で使用し、そこを乗り越えたらしっかり休息する必要性が説かれています。

寝つきを良くしたいなら「ベルガモット」

現代人にとって、寝つきが悪い、夜中に目が覚めてしまうなど、睡眠にまつまる悩みは尽きないものです。

これについても精油、とくにベルガモットが力を発揮します。

本書では、柑橘類のベルガモットの精油を使った実験が記されています。マウスを対象にした実験ですが、内容は、ベルガモットの精油と不眠症の治療薬「プロチゾラム」の効果を比較したもの。

これによると、ベルガモットを嗅がせたマウスの寝つき(眠りに落ちるまでの時間)の早さは、プロチゾラムと遜色なかったほか、総睡眠時間も著しく増加しました。

この実験結果が、そのまま人間に当てはまるかは不確かな面もありますが、本書では、寝つきの悪い人は、寝室や枕元をベルガモットの香りを満たすことがすすめられています。

精油の香りで記憶力も高まる?

記憶力を高める精油もいくつかあります。

2019年に発表されたウクライナで行われた研究では、10代の生徒79人に対し、香りなし、ラベンダーの香り、ローズマリーの香りという条件下で、記憶力を測るテストが行なわれました。

テストの内容は、16種類の画像あるいは2桁の数字12個を20秒間見て、その後、どれだけ多くの画像・数字を思い出せるか、というものでした。

結果、ラベンダーとローズマリーのいずれの香りも、香りなしに比べて画像記憶の成績が大幅に向上していたそうです。

一方、数字の記憶については、香りなしとほとんど変わりませんでした。さらにラベンダーとローズマリーとで比べると、ラベンダーのほうが成績が悪かったようです。これには、ラベンダーには、副交感神経を優位にさせ、精神を鎮静化させる効果があるからだそう。

ですが、数字を記憶する場合は、交感神経を優位にした(集中力を高める)ほうがよいことが示唆されます。

今後、多くの研究結果が蓄積されることで、いま取り組んでいるタスクに応じて最適な精油が特定されるかもしれません。

定番セットではじめてみては

ここまで読んできて、精油のパワーについて大きな関心を持たれたなら。

精油活用の最初の一歩として、ペパーミントやラベンダーを含む定番の精油を、セット買いすることをおすすめします。

セット買いといっても、ごく少量の瓶入りから始めるのがいいでしょう。筆者は、Amazonで販売されている「Botanical lab(ボタニカルラボ)」ブランドの「精油 ブレンドオイル」を愛用しています。

これは、ラベンダー、ペパーミント、ベルガモット、ローズゼラニウム、フランキンセンスの5本セット。いずれも5mlしか入っていませんが、効果を得たいときに蓋を開け、しばらく室内に香りを漂わせるという使い方である限り、かなり持ちます。

「Botanical lab」の「精油 ブレンドオイル」

これ以外にも、似たセット商品はいくつもあるので、ネット通販やリアル店舗で、自分好みのものを探してみてはいかがでしょうか。

そして、効果を体感したら、容量の大きな精油を購入し、アロマディフューザーで部屋全体を香り空間にするといいでしょう。きっと、QOLが向上すること間違いなし。

Source: Amazon/Photo: 鈴木拓也

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