米議会を襲撃した暴徒の「被害」も補償?──トランプ政権「反武器化基金」の波紋(ニューズウィーク日本版)
共和党のブライアン・フィッツパトリック下院議員は先週、ドナルド・トランプ政権の司法省が発表した17億7600万ドル規模の「反武器化基金」を「潰す」と警告した。 【画像】米連邦議会議事堂「襲撃犯」の現在の姿…「トランプ愛」は不滅 ペンシルベニア州の接戦区を地盤とするフィッツパトリックは、反武器化基金に不快感を示す共和党議員の1人だ。 司法省は5月18日、トランプが米国内国歳入庁(IRS)に対して起こしていた訴訟を終結させる合意の一環として、この基金を作ると発表した。この計画には民主・共和両党の議員が非難している。トランプは、自らの税務情報が不当に流出されたとしてIRSを訴えていた。 反武器化基金は、トランプ陣営が「政治的に不当な捜査の被害者」とみなす人々を政府資金で補償するための基金。トランプ支持者や、2021年1月6日の議会襲撃事件関係者も対象になる可能性があるとして、事実上、トランプ支持者への補償基金ではないかと批判派は反発している。 穏健派として知られるフィッツパトリックは5月20日、反トランプ系メディア「マイダス・タッチ」の動画の中で、基金について次のように語った。「悪いニュースだ。我々がこれを潰す」「対抗する法案提出なども含めて検討している。司法省にそんな権限はない」 メリーランド州選出の民主党下院議員ジェイミー・ラスキンは、「連邦資金をトランプの反武器化基金の設立や支払いに使用してはならない」と明記した法案を提出する予定で、フィッツパトリックも支持している。 フィッツパトリックは、トッド・ブランチ司法長官代行宛ての書簡で「基金の透明性、監督体制、そして法的権限」に重大な懸念を示した。
フィッツパトリックは、基金の資金源、法的目的、連邦犯罪で有罪判決を受けた人物や暴力行為に関与した人物は対象となるのか否か、さらに過去の政権が「議会の承認を受けない裁量的補償プログラム」を設立した前例について、ブランチに質問した。 司法省は5月18日の声明で、「(法律の)武器化や法的攻撃の被害を受けた人々の申し立てを聞き、救済するための体系的なプロセス」と、この基金を説明した。 トランプや他の共和党議員は、ジョー・バイデン前大統領時代の司法省が保守派に対して法律を「武器化」したと主張しており、トランプに対する選挙結果の転覆疑惑や機密持ち出し事件での起訴や、議会襲撃事件に関与した人物への訴追をその例として挙げている。 多くの法律専門家は、これらは正当な訴追であり、「武器化」ではなかったと見ている。 司法省によると、この基金には被害者に対する正式な謝罪や申請者への金銭的救済を行う権限が与えられ、党派による制限は設けられていない。財源は、トランプのIRS(米国内国歳入庁)に対する訴訟の和解・判決処理に使われる政府資金から、17億7600万ドルを回すことになっている。 ブランチは、司法省が「法的攻撃や武器化の被害者が声を上げ、救済を求められる合法的なプロセスを整備している」と述べた。 5月19日に上院の公聴会に出席したブランチはこの基金について、「異例ではあるが、前例がないわけではない」と擁護し、共和党員に限らず誰でも申請できると強調した。