“死刑廃止国家”と化した韓国 刑務所は「国立ホテル」と呼ばれ…死刑が確定した凶悪犯57人の今
韓国で「死刑制度」をめぐる論争が再び水面上に浮上した。2024年12月3日の非常戒厳宣布に伴う内乱首謀の容疑を受けている尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領に対し、チョ・ウンソク特別検察官が死刑を求刑したためだ。裁判は2月19日、ソウル中央地裁の1審判決を控えている。
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ただし、裁判部が死刑を宣告し最高裁で最終確定したとしても、実際に執行される可能性は大きくないとの分析が出ている。韓国は金泳三(キム・ヨンサム)政権末期の1997年12月30日を最後に、約30年間死刑を執行しておらず、実質的な“死刑廃止国家”に分類されているためだ。
韓国国内において、死刑制度は凶悪事件が起きるたびに論争の中心に立つ。各種世論調査の結果を見ると、国民の60%以上が死刑制度に賛成するほど、国民世論と現実の間に温度差が大きい。犯罪被害者たちは「凶悪犯には人権があり、被害者には人権がないのか」と訴える。韓国における死刑制度は、今どこに向かっているのだろうか。
現在、裁判で死刑が確定して収監されている死刑囚は計57人(民間人53人、軍人4人)だ。死刑を宣告され服役中だった死刑囚2人が2024年に持病で死亡し、2人減った。
拘置所の中でも悪名を轟かせるユ・ヨンチョルこのうち1人が、宝城(ポソン)の漁師として知られたオ・ジョングンだ。当時70代だった彼は、2007年8月と9月、全羅南道(チョルラナムド)宝城郡沖の海上で、自身の漁船に乗せた20代の男女大学生4人を残酷に殺害した容疑で起訴され、2010年に最高裁で死刑が確定した。その後、最高齢の死刑囚として光州刑務所で服役していたが、2024年7月に87歳で死亡した。
もう1人はカン・ヨンソンだ。彼は暴力団員として活動していた1996年1月、慶尚南道密陽(キョンサンナムド・ミリャン)のあるカラオケ店で対立組織の構成員2人に刃物を振るって重傷を負わせ、その後病院まで追いかけて殺害した。1996年に死刑が確定した後、オ・ジョングンと同じ刑務所で服役していたが、彼が死亡した1カ月後に持病で死亡した。58歳だった。
現在収監中の死刑囚を性別で見ると、全員が男性だ。過去には女性の死刑囚も存在したが、すべて刑が執行されるか、無期懲役に減刑された。女性死刑囚に対する最後の刑執行は、男性と同じく1997年、23人の死刑囚が一斉に処刑された時だった。
韓国社会を騒がせた保険殺人犯オム・インスクや、元夫を残酷に殺害したコ・ユジョンなどは、検察が死刑を求刑したものの、裁判で無期懲役を宣告され服役している。オム・インスクの場合、整った顔立ちと残酷な犯行手口、前例のないサイコパス満点スコアなどで、最も話題となった凶悪犯の1人だ。
オム・インスクは2000年から5年間、保険金を狙い計10人を対象に残酷な犯罪を行い、このうち夫2人を含む3人が死亡し、5人は失明を含む永久障害を負った。犯行対象には実母や実兄も含まれていた。オム・インスクはサイコパス診断で40点満点中40点を受け、歴代最高点だった。2006年、尊属重傷害など24件の容疑で起訴され、無期懲役が確定した後、清州(チョンジュ)女子刑務所で服役している。
最後に死刑確定判決を受けた犯罪者は、軍の死刑囚イム・ドビンだ。彼は2014年6月、江原道高城郡(カンウォンド・コソングン)の陸軍第22師団GOP哨所で同僚兵士に向けて手榴弾を投げ、銃を乱射して5人を殺害し、7人にけがを負わせた。犯行後、武装脱走したが、軍との対峙の末に自傷を試み、最終的に逮捕された。イム・ドビンは2016年2月19日、最高裁で死刑が確定した。
民間人では、2015年8月に死刑が確定したチャン・ジェジンがいる。彼は交際相手が別れを告げると、彼女の家に侵入して両親を殺害し、帰宅した元交際相手を監禁して性的暴行を加えた容疑を受けた。
現在の最長期収監者はウォン・オンシクだ。彼は妻と宗教問題で対立し、1992年10月、江原道原州(ウォンジュ)にあるエホバの証人王国会館に放火した。この事件で15人が死亡し、25人が重度の火傷を負った。
ウォン・オンシクは翌年の1993年11月に死刑が確定し、32年間収監されている。死刑囚の中でユ・ヨンチョルに次いで多くの人命を奪ったが、連続殺人犯ではなく「大量殺人犯」に該当する。通常、1回目の犯行後、一定の心理的冷却期間を経て再び犯行に及び2人以上を殺害した場合、連続殺人と分類されるが、ウォン・オンシクは1カ所で心理的冷却期間なしに1度の事件で短時間に多数の人命を奪い、大量殺人に該当する。
最年少の死刑囚は、2013年の「江華島(カンファド)海兵隊銃乱射事件」の主犯キム・ミンチャンだ。この事件で4人が死亡し、2人が負傷した。彼は19歳の時に死刑判決を受けた。
外国人死刑囚は中国国籍のワン・リーウェイが唯一だ。彼は2001年、京畿道安山市(キョンギド・アンサンシ)一帯で深夜に1人で歩いていた女性8人に重傷を負わせ、このうち2人を強制わいせつした後、石や鉄ハンマーで殺害した。
死刑囚の中で最も注目されるのは連続殺人犯たちだ。国民を恐怖に陥れたユ・ヨンチョル、カン・ホスン、チョン・ドゥヨンなどは刑が執行されておらず、未決囚の身分だ。彼らの収監生活も依然として話題になっている。
韓国国内で最短期間(10カ月)、最多(20人)殺人犯であるユ・ヨンチョルの場合、2009年に米国の有名雑誌の「世界の連続殺人犯31人」に選ばれるほど国際的に悪名を広めた。ユ・ヨンチョルは自身の悪名と死刑囚という身分をまるで勲章のように考え、拘置所内でも絶えず問題を起こし、最悪中の最悪として定評がある。
一部は常に脱走の機会をうかがっている。代表的な人物が金を稼ぐために9人を殺害し、いわゆる「職業殺人犯」と呼ばれたチョン・ドゥヨンだ。彼は2009年8月、大田刑務所の塀を越えて脱走を試みたが拘束された。当時は三重の柵のうち2つを越え、最後を越えようとしたところで発覚し、目的を果たせなかった。彼が脱走に成功していれば、十中八九また誰かを犠牲にしていた可能性が高い。
女性10人を殺害したカン・ホスンは、拘置所生活に最もよく適応した事例だ。単に規則をよく守るというより、収監生活に完全に適応し楽しんでいるという表現がよりふさわしい。彼は今まで一度も被害者や遺族に罪悪感を感じたり、心から謝罪したりしたことがない。その一方で、独房の中で絵などの趣味生活に没頭していると伝えられている。
死刑囚たちは刑務所でさまざまな待遇を受けている。一般受刑者とは異なり、刑が執行されていない「未決囚」の身分だ。拘置所の中では「最高刑受刑者」と呼ばれる。より重い刑を受けた収監者がいないという意味だ。彼らは原則として刑務所ではなく拘置所に収監される。一般の確定受刑者とは異なり、矯正・教化プログラムの対象でもない。
だからといって、自然死するまで死刑囚であるわけでもない。罪質や受刑態度などを総合して減刑の恩恵が与えられる場合もある。無期懲役に減刑された後、10年以上服役すれば仮釈放も可能だ。
韓国の現行刑法第73条によれば、有期懲役刑を宣告された場合は刑期の3分の2、無期懲役は10年を服役すれば仮釈放対象に含まれる。死刑囚から無期受刑者になると確定受刑者の身分に変わり、刑務所に移送される。この場合、死刑囚として収監されていた期間は矯正期間から除外され、新たに刑期が始まる。
死刑を執行しない現在、死刑囚にとって拘置所や刑務所はホテルと変わらない。実際、犯罪者の間では「国立ホテル」と呼ばれている。
問題は、彼らのために莫大な国民の税金が使われているという点だ。死刑囚1人を管理するためにかかる年間費用は数千万円に達する。単純計算だけでも、死刑囚を食べさせ寝かせるために年間数十億円がかかる計算になる。
さらに年1回以上健康診断を実施し、その費用は税金で負担する。2006年以降、健康保険預託金が割り当てられ、国家負担で健康保険加入者と同じ診療を受けることができる。加えて死刑囚は独房収容が原則であり、ほとんどが1人部屋を使用する。もちろん拘置所の収容施設の水準によっては雑居房に収容される場合もある。
死刑囚は本人が望まなければ労役もしない。2008年に法律が改正され、現在は死刑囚も希望者は定役(一定の労役)に参加できる。作業時間は1日5~6時間で、作業の種類によって賃金が支払われる。とはいえ、危険で重労働というわけでもない。人形の目を付けるような単純作業が大半だと伝えられている。
作業をしない場合、独居の死刑囚は1日1時間、雑居の死刑囚は1日30分の運動時間が屋外活動のすべてだ。ほぼ毎日拘置所にいて、刑の執行を待つことが日課といえば日課だ。
刑務所の中で、死刑囚は一般受刑者と異なり赤い名札を付ける。昔から刑務所内では赤い名札に慣行的な便宜が提供されてきた。死刑が執行されていた当時は「まもなく死ぬ人」に対する最後の配慮という側面があったが、今ではこれが死刑囚の収監生活の特恵として作用している。
死刑制度、憲法裁で「違憲決定」の可能性高まる死刑制度は再び復活できるのだろうか。結論的に言えば、その可能性はゼロに近い。
韓国国民の多くが死刑制度廃止に反対しているが、国民感情に迎合して死刑を執行できる状況でもない。国際社会における国益や外交問題などが絡んでおり、死刑を執行して得られる実益もほとんどない。
これまで、憲法裁判所は2度にわたり死刑制度の違憲性を審査した。
1996年は7対2で死刑制度維持の意見が圧倒的だった。14年後の2010年は様相が大きく変わった。「違憲法律審判」で「合憲決定」が出されたが、5対4で維持と廃止の意見がほぼ拮抗した。死刑を宣告しても執行されない有名無実の現実を反映した側面がある。現在、憲法裁判所は3度目の死刑制度違憲性を審査中だ。今回は「違憲決定」が出る可能性に重きが置かれている。
現在の韓国の刑罰制度や刑務行政などは、死刑が施行されていた時代に合わせて設計されている。そのため専門家たちは以前から「現実的な法改正」を求めてきた。死刑制度廃止の代案としては「仮釈放のない終身刑」が有力に取り沙汰されている。国会でも死刑制度廃止の動きが続いている。これまで死刑制度廃止法案は計10回発議された。
昨年11月には与党系議員65人が参加し、死刑制度を廃止する特別法案を発議し、終身刑新設を代案として提示した。この流れが続けば、李在明(イ・ジェミョン)政権で死刑制度廃止が現実化する可能性もあると見通されている。
(記事提供=時事ジャーナル)