【日本市況】株式反落、米関税懸念再燃と円高を警戒-債券は買われる

30日の日本市場では株式が反落。トランプ米大統領の関税政策に対する違法判断の効力が一時的に停止され、米関税を巡る懸念が再燃した。為替の円高推移も嫌気された。米長期金利が低下した流れを受け債券は上昇。

  米連邦高裁は29日、トランプ関税に対する米国際貿易裁判所の違法判断について、効力を一時的に停止する判断を下した。同日発表された1-3月の米実質国内総生産(GDP)改定値や失業保険統計では、景気の減速感が相次ぎ確認された。

   ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のストラテジスト、ウィン・シン氏は何が起こっても市場は長期的な不確実性の時代を迎えていることを認識していると指摘。米関税政策が維持されることはスタグフレーションのリスクを高め、ドルと株式双方にマイナスだと見方を示した。

  一方、全国の先行指標となる5月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコア)は2023年1月以来の高い伸びとなった。ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は、トランプ関税を巡る先行き不透明感が引き続き強く、「日本の物価指標だけでは日本銀行の利上げ期待にはつながらない」との見方を示した。

30日の日本市場の株式・為替・債券相場の動き-午後3時33分現在
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.4%安の2801.57
  • 日経平均株価は1.2%安の3万7965円10銭
  • 円は対ドルで前日比0.2%高の143円95銭
  • 長期国債先物6月物の終値は前日比14銭高の139円9銭
  • 新発10年国債利回りは1.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.5%

株式

  東京株式相場は反落し、日経平均は一時600円以上下げる場面があった。米関税政策を巡る懸念が再燃したほか、為替相場の円高推移も嫌気され、電機や精密機器など輸出セクターが下落。その他製品やサービスも下げた。この日の取引終了時には、MSCI指数の銘柄入れ替えに伴うパッシブ資金のリバランスも出た。

  業種別33指数は下落が13、上昇は医薬品など19、空運は変わらず。売買代金上位ではディスコやアドバンテスト、東京エレクトロンなど半導体関連が下げ、任天堂やキーエンスも下落。電気自動車(EV)用次世代半導体の生産を断念したとの報道を材料にルネサスエレクトロニクスも安い。半面、NTTや日本郵政、武田薬品工業は堅調。

  岡三証券の大下莉奈シニアストラテジストは、為替が円高方向へ動いていることは輸出関連銘柄の逆風となっており、その結果昨日の上昇分はほぼ帳消しになったと述べた。

外国為替

  東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台後半で推移。5月の東京都区部CPIが予想を上回ったことを受け円買いが優勢となった。米経済指標の不振や関税政策を巡る不透明感もドル売り・円買い要因で、一時は143円台半ばまで上昇した。

  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、東京CPIの上振れに加え、「仲値にかけて企業から少しドル売りが出ていた」と説明。前日にドルが上昇したことで損失確定の動きもあり、ドル・円が下押す場面があったと述べた。

  29日の円は東京市場で一時146円台まで下落した後、海外時間に上昇に転じた。米10年国債利回りは6bp低い4.42%程度に低下し、ブルームバーグ・ドル・スポット指数は0.4%下げた。

  ソニーフィナンシャルグループの森本淳太郎シニアアナリストは、トランプ関税を巡る解釈が定まらず、ドルの上値は重いと指摘。142円から145円のレンジを中心とする推移が目先続くとの見方を示した。

債券

  債券相場は上昇。米市場で弱い経済指標を受け長期金利が低下した流れから買いが優勢となった。この日行われた2年利付国債入札は波乱なく消化された。

関連記事:日本債券:2年利付国債の過去の入札結果(表)

  SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、2年債入札は最低落札価格が予想を上回り、大きいと需要の弱さを示すテール(平均落札価格と最低落札価格の差)と応札倍率も過去の平均程度で「無難な結果だった」と言う。

  日銀の利上げはまだ先との見方に加え、先に行われた3カ月物国庫短期証券入札で応札倍率が低下しており、超長期債の発行減額の代わりに増額されるとしても、短期国債の方が規模が大きくなり、「2年債の方がまだ安心という見方もあったようだ」と田氏は話した。

  超長期債は値動きの激しい展開が続いているが、この日は20年債が買われた。ソニーフィナンシャルグループの宮嶋貴之シニアエコノミストは、超長期債はやや落ち着きを取り戻していると指摘し、来週の30年債入札も「超長期債の地合いが最悪期を脱したことを示す結果になる」と予想した。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.740% 1.015% 1.500% 2.410% 2.970% 3.100% 前日比 -1.0bp -1.5bp -1.5bp -4.0bp -0.5bp -2.5bp

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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