ドコモ“一人負け” 通信改善待ったなし

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の決算が出そろった。KDDIとソフトバンクが2020年の「官製値下げショック」からすでに立ち直る中、NTTドコモの「一人負け」が改めて鮮明になった。 【もっと写真を見る】

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の決算が出そろった。KDDIとソフトバンクが2020年の「官製値下げショック」からすでに立ち直る中、NTTドコモの「一人負け」が改めて鮮明になった。    NTTドコモのモバイル通信における営業収益は昨年同期に比べて200億円の減収だ。    昨年度上期の顧客減の影響を受けて、モバイル通信サービスの収入減が響いている。    ただ、決算の数字は厳しいものの、足元では改善の兆しが見えつつある。   ショッピングセンターなどで顧客獲得    現在、NTTドコモが注力しているが顧客基盤の強化だ。    家電量販店やショッピングセンターなど、人の多いところでの顧客獲得に注力している。    顧客獲得を強化していることもあり、販促費がかさんでいるのだ。    かつてNTTドコモは「ドコモショップを減らし、オンラインを強化する」と言っていたが、見事に失敗に終わった。オンラインシフトで顧客が流出するなか、一転してリアルの現場に本腰を入れたのだ。    その効果か、MNPにおいては3四半期連続でプラスとなった。他社から顧客を持続的に奪えているという結果だろう。また、解約率も他社に比べて低い状態が続いている。    ショッピングセンターなどに出店することで、普段キャリアショップに立ち寄らない人を取り込めているというわけだ。   新プラン「ドコモMAX」で新規獲得    NTTドコモが6月に開始した新料金プラン「ドコモMAX」は、スポーツ配信サービス「DAZN」の視聴料が組み込まれているのが特長だ。当然のことながら、NTTドコモからDAZNに対して、DAZNを視聴する契約者の数に応じた何らかの「支払い」が発生しているのは間違いない。    DAZNの視聴料は4200円にも関わらず、ドコモMAXは従来のプランから1000円程度の値上げに収まっている。また10月からはバスケットの「NBA」がドコモMAXに仲間入りする。    ドコモMAXは、DAZNやNBAへの支払いなど、結構「コストが高いのではないか」という見方ができる。NTTドコモは大盤振る舞いしすぎてはいないかと心配にもなってくる。   しかし一方で、ドコモMAXは「新たな顧客を獲得する施策」として、とても期待できるようだ。    特に面白いのが、各サッカーチームとの連携だ。   コンテンツの“ファン”を新規顧客に    前田義晃社長はかつて筆者のインタビューで「JリーグのチームにもドコモMAXの新規契約獲得をお手伝いしてもらう。もちろん、チームには獲得に応じた報酬をお支払いする」と語っていた。    Jリーグのファンからすれば、やはり自分が応援しているチームをDAZNで見たい。Jリーグのチームが接点となり、ドコモMAXの契約にこぎ着ければ、チームもファンも、そしてNTTドコモもハッピーだ。    DAZNにJリーグやプロ野球チーム、F1、さらにNBAなど、コンテンツを拡大すればするほど、ファンとの接点が広がり、結果として、新規顧客を獲得しやすくなる環境が整うわけだ。    ドコモMAXでは、今後、スポーツだけでなく、音楽や映画、ドラマなどのコンテンツが入ってくるようだ。Jリーグでの取組が成功事例になれば、他のファンにも応用が利くようになるだろう。   ドコモMAXで足元の数字は改善    実際、ドコモMAXを始めたことで、足元の数字に改善が見られている。    提供を開始した月の移行率を見ると、2023年7月の「eximo」に比べて6ポイントも増えている。    また、ドコモMAXにより、ギガライトからの乗り換えがeximoに比べて20%も伸びている。一方で、irumoであった低容量プランを廃止したことで、ダウンセルを30%抑制することができた。    さらに1ヵ月あたりの通信料収入であるARPUも増え、大容量プランを契約する比率も29%に高まっている。    「スポーツファン以外にはあまり魅力がない」と揶揄されるドコモMAXではあるが、NTTドコモとすれば、いまのところ、導入して良かったという判断になりそうだ。    ドコモMAXは現在、70万契約を突破しており、年度末には300万契約を見込むという。    さらなる顧客基盤の強化、さらにARPU上昇にはネットワーク品質の改善が不可欠だろう。   ネットワーク品質の早期改善待ったなし    ここ数年、同社のネットワーク品質の低下が問題となっている。「つながらない」「データが流れない」という不満を解消すべく、基地局を増設したり、アンテナの向きを調整するなどの対策を打ってきた。    島田社長は「2025年は昨年よりも工事を増やしている。例年、年度の後半に工事が増える傾向があるが、それも前倒している。チューニングに関しては2024年にほぼやり切った。渋谷駅など再開発でビルが建ったりなくなったりするところ以外は対応をほぼ完了した」と語る。    実際のところ、これでNTTドコモのネットワーク品質がKDDIやソフトバンクと同等になっているとは言いがたい。    先日、ネットワーク品質を調査するOpensignal社が発表した5G SAのデータでは、KDDIが1位となり、ソフトバンクが2位となっていたが、NTTドコモは「5G SAのエリアが不足している」として、調査対象外となってしまっていた。    島田社長は「4Gと5Gが両方使えるところが多い(筆者註、そういうところはNSAと呼ばれる)。そういう観点で調査から外されたのではないか。他社も数がまちまちなので、今の段階で評価するのは難しい」と語っていた。    5G SAを面展開できるようなると、5Gのさらなる機能を提供できるようになる。現状、NTTドコモはKDDIやソフトバンクから大きく引き離されているだけに、ネットワーク品質の早期改善は待ったなしなのだ。       筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)    スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。   文● 石川温

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