40万円近い「iPhone Duo」は大量に売れなくても別にいい? アップルが折りたたみiPhoneに託す「別の狙い」

 筆者は、例年通りクパチーノのアップル本社で開催されたiPhoneの発表会に行ってきた。  ジョブズ亡き後の約15年を支えたティム・クックがCEOを退き、ジョン・ターナスCEO体制になってから最初の発表会。その中の『目玉』としてiPhone Duoは発表された。  会場で実際に触ってみたが、いつも通り製品の出来は非常に良く、ユニークな形状、インターフェイスによって「ぜひ使ってみたい!」と思える製品に仕上がっていた。

 一方で、折りたたみスマホ自体は2018〜2019年ぐらいから市場に登場しており、そこにアップルの革新はないとの声もある。  革新的な会社というイメージの強いアップルだが、iPodはRioやCreative NOMAD Jukeboxの後追いだし、iPhoneの前にもBlackBerryやザウルスはあったし、Vision Proも最初のARデバイスだというわけではない。  アップルは後追いではあるが、アップルの要求するクオリティの製品を可能とするだけの技術力が熟成され、市場が必要としているという結論を得てからローンチに踏み切り、完成度の高い製品を作り込む。つまり、『折りたたみスマホ』に関して言えば、すでに登場してる製品によって「ディスプレイの折り目」という問題が、おおむね解決したことを確認して、その上でiOSのインターフェイスを折りたたみスマホのために徹底的に最適化して登場したということになる。


Page 2

 また、それでも残るウネリに対して、カスタムの光硬化樹脂を3Dプリントし、ウネリを消している。ディスプレイは何層もの樹脂とガラスでできており、それが交互に逆の方向に動くことによってヒンジ部分の曲がりが発生しないようにしている。さらに、表面のガラスにはNano-texture仕上げを施しており、見た目に目立たなくなっている。  本機はApple Pencil(USB-C)が使えるとのことだが、ヒンジ部分に凹凸があってはディスプレイ上で書いた線が揺れてしまう。Apple Pencil(USB-C)のサポートを発表するということは、その問題が解消したということだと思う。

 開いたら広い画面でコンテンツを楽しみ、ちょっとした絵まで描くことができる。iPhone Duoの可能性の大きさを感じる部分だ。  ただ、展示品はかなりウネリは少なかったが、製品によっては若干ウネリを視認することができるものもあったので、個体差や、今後の経年劣化によって、若干のウネリを感じることはあるだろう。 ■安くはない価格を、どう受け止めるか?   とはいえ、最大の難点は256GBで36万4800円という価格だろう。

 折りたたみだろうがなんだろうが、40万円近い価格は多くの人に受け入れられないように思う。SamsungのGalaxy Z Fold8の256GBが26万9880円、GoogleのPixel 10 Pro Foldが256GBで26万7500円なので、iPhone Duoはずば抜けて高い。  もちろん、アップルユーザーの使い慣れたOSやエコシステムへの依存度は高いので、だからといってGalaxyやPixelと直接比較する人は多くはないと思うが、それでも価格は購入を思いとどまらせる要素にはなるだろう。

 ストレージを増やすとさらに価格は上がり、補償であるアップルケアに入るとさらに価格は跳ね上がる。  アメリカの値段は1999ドルで、税別だとはいえ2000ドルを切る価格設定となっている。原稿執筆時点の為替レートで考えると30万4000円。日本の価格設定がかなり割高に感じられる。これは、少し前の円安が極限に達している時に価格設定されているからで、ここ2週間ほどの円高を考えに入れて計算すると日本の価格設定があまりにも高いように思える。この点に関しては、円高傾向が本当に続くのであれば次回の価格変更の時に多少の値下げが行われるかもしれない。だが、それはだいぶ先の話だろう。


Page 3

■実際に持って驚く「ひらくこと」にフォーカスしたインターフェイス  まず、閉じた状態で、右側のディスプレイの角が強く丸まった非対称な形状であることに注目したい。  本来、アップル製品は『左右対称』にかなりこだわってデザインする。そのアップルがこんなアンバランスなデザインを出してきたことに、筆者は違和感を覚えていた。  しかし、実物に触れてみてビックリ。このデザインによって、ディスプレイのどちらから開けばいいのか一目瞭然なのだ。そして、開くとLiquid Glassを上手く活用したトランジェントデザインによって、外側のディスプレイに映し出されていた表示が、左右に広がり、内側ディスプレイの広さを体感できるようになっている。

 実際、外側のディスプレイの表示は約5.4インチの約1:1.455、内側のディスプレイは約7.6インチの約1.422:1となっている。  これはひとつには白銀比(1:1.414)に近く、たたんでも広げてもほぼ同じ比率を保つことができる(紙のA判B判にも使われる比率)。もうひつは2:3(1:1.5)にも近く、たたんだ時は初代iPhone、開いた時は初代Macintoshという、アップルにとって歴史的なディスプレイサイズでもある。

 たたんだ状態では『パスポートサイズ』。iPhone 17 Proなど従来の一般的なスマホより縦に短く、横に広い。  ワイドになる分持ちにくいかもしれないが、従来多くのデバイスに使われてきた『パスポートサイズ』であるから、馴染む可能性はあるだろう。  これまで、縦長のスマホでは下にあったドックや、一番上にあったステータスバーは右端に寄せてデザインし直され、Xなど、縦スクロール型コンテンツで、限られた縦の長さを有効に使えるようにされている。

 開いた時も前述のように初代Macintoshに近いコンテンツサイズだから、さまざまなコンテンツを見やすいサイズだといえるだろう。 ■ヒンジ部分の「ウネリ」はあるかどうか?   多くの人が気にする折り目部分だが、非常にさまざまな工夫が盛り込まれており、少なくとも展示機ではほとんど目立たないレベルに仕上げられているものが多かった。  基調講演によると折りたたみの仕組みは100点を超える細かい精密部品から作られており、寸法のバラつきはAIアルゴリズムを利用してマッチングの良い部品と組み合わせることで解消されている。


Page 4

■そもそも、iPhone Duoは大量に売れるのか?   そもそも、アップルはiPhone Duoが売れると思っているのだろうか?  多くの人が40万円近いスマホを買うと考えているのだろうか?   答えは『No』だろう。  発売されてしばらく経つと、ショップの販売データから「iPhone Duo販売不振」「販売された台数は○○台」というニュースが出るかもしれないが、アップルはこの製品の売上台数に社運をかけているわけではない。

 売上の中心は、iPhone 18 Proシリーズ、iPhone 17などのコンベンショナルな形態のスマートフォンだ。  市場調査会社Counterpoint Researchによると、iPhone 17世代向けディスプレイパネルの出荷構成では、Proが28%、Pro Maxが38%を占め、Airは7%にとどまったとのこと。ちなみに、調査会社IDCによると、2025年のiPhone世界出荷台数は約2億4700万台となっている。

 参考までに、世界市場でアップルと同規模の市場を持つSamsungの販売台数に占める折りたたみスマホの比率は約4%とロイターが報じている。  Samsungの出荷台数は2億3000〜2億4000万台程度と言われているので、Galaxy Fold/Flipの出荷台数は約700万〜900万台ということになる。  一方、調査会社CanalysはSamsungの800ドル超級のスマホにおいては折りたたみスマホが16%を占めるとも言っており、Samsungより高価格帯製品の多いアップル(明確に800ドル以下なのはeだけ)の場合、4%より多くの割合の人が折りたたみスマホ、つまりiPhone Duoを買うという推測も成り立つ。

 いずれにしても、多くの人は従来の無印iPhoneやiPhone 18 Proを買う。上記のデータから推測すると84〜96%の人が『普通の形のiPhoneを買う』というわけで、電車に乗っている人たちが手にしているiPhoneは変わらないと思っていいだろう。  それを踏まえてか、iPhone 18 Proは外形を変えず着実なアップデートを施している。コンサバ層を受け止めるためだ。ちなみに、多くのiPhoneケースは17 Pro、18 Proで共通して使える。


Page 5

 また、iPhone DuoはTouch ID(指紋認証)で、他のiPhoneはFace ID(顔認証)だという違いもある。どちらが便利かは使い方によるかもしれないが、これもひとつの違いだ。  また、当然のことながらiPhone Duoの方が重い。254gは過去一番重いiPhoneであるiPhone 14 Pro Max(240g)より、さらに14gも重い。ケースも複雑化するから、実際に持つ時の重量感はさらに増すだろう。

 それらを差し置いても「開いたら大画面」というiPhone Duoに魅力を感じるかどうかが大きなポイントだ。  着実に老眼が進んでいる筆者は、iPhone Duoを選ぼうと思っている。

村上 タクタ :編集者・ライター

東洋経済オンライン
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: