明治安田社長「為替かなり気を使う」と警戒、トランプ関税下の運用戦略
明治安田生命保険の永島英器社長は、米トランプ政権の関税政策を受けてさらなるドル安・円高が進む可能性に警戒感を示した。今年度の資産運用方針の前提としている為替相場の見直しを迫られる可能性もあるという。
永島社長はブルームバーグとのインタビューで、トランプ大統領が米国の貿易赤字を問題視する中でドル高是正を図る動きに注視しているとした上で「為替はかなり気を使う」と言及。機動的な為替ヘッジなどで対応する構えだ。
4月に発表した今年度の運用方針では、前提として1ドル=138円までのドル安・円高進行を見込むとした。ただ、足元の変動は大きく、さらなる円高方向に見直す可能性も示唆した。円相場は4月に一時1ドル=139円89銭と140円の節目を突破し、昨年9月以来の高値を更新。138円を割り込めば2年ぶりの円高水準となる。
2025年度の運用方針は、外国の債券やプライベート・エクイティー(PE、未公開株)などを中心に積み増す内容。昨年12月末時点での有価証券残高約39兆7000億円のうち外国証券が35%を占める。為替見通しがぶれれば、投資の時期や規模など実際の運用に影響が出かねない。
永島社長は、トランプ政権の関税政策が日本や世界経済に与える影響は不透明で、先行きの不確実性は高まっていると指摘。日本銀行による利上げペースが緩やかになるものの、米国の利下げペースは速まるとして、内外金利差縮小の方向に変わりはなく、基本的にドル安・円高を見込むと説明した。
また、トランプ大統領による関税政策によって最適な拠点での生産が制限されれば、経済の非効率性は増すとして「確実に世界全体の成長は下がる」と述べ、地域に関わらず「株式も慎重に見なくてはいけない」と語った。
4兆円目標を1年前倒しへ
資産運用ではトランプ政権に対する警戒が必要だが、保険ビジネスへの影響はあまりないとみる。国内では金利上昇を受け、資産形成に向けた機運が高まっているとして、予定利率の引き上げに伴う貯蓄性保険商品の販売拡大や海外M&A(企業の合併・買収)効果などにより、保険料等収入4兆円の目標時期を1年前倒しして今年度中の達成を目指す考えを明らかにした。
同社は2月、英金融大手リーガル・アンド・ジェネラル・グループ(L&G)から米保険事業を約3500億円で買収することで合意。30年の保険料等収入の目標5兆円に占める海外保険事業の割合を35%程度(23年度末は15%)に高める目標を掲げる。海外M&Aについては「常にショートリスト、ロングリストを調査している」と述べた。
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