報道陣を見て天を仰いで…「テレビがつかない」で口論となって実の母親を殺した49歳息子の素顔
母親を死に至らしめた後悔なのだろうか、検察へ向かう車に乗り込む際、容疑者の表情は憔悴しきっていた──。
4月3日の夜、神奈川県警高津署は、同区在住の自称アルバイト・朴舘(ほうのきだて)隆容疑者(49)を母親(75)への殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
「事件が起きたのは同日午後9時半ごろ。自宅で『テレビがつかない』と話していた母親がテレビのケーブルを別のところに差していたことがわかり、そこから口論になったようです。朴舘容疑者は母親を突き飛ばして床に倒し、首にビニールなどを巻き付けるなどして殺害しようとしたといいます。
朴舘容疑者は’22年4月と’25年4月の2度、近隣住民から110番通報されています。署はどちらの場合も高齢者虐待と判断。市に通報し、母親は2度目の事案の後、施設に避難していました。しかし、その後、自らの意思で自宅に戻っていたようです」(全国紙社会部記者)
母親は病院に搬送されたが、その後、死亡が確認されている。
4月5日、送検のため、高津署の建物から出てきた朴舘容疑者の表情は茫然自失(ぼうぜんじしつ)といった様子だった。それでも、報道陣に気がつくと、「しまった」という表情で眉間に皺を寄せ、目を瞑(つむ)って天を仰いだ。
事件現場となった朴舘容疑者の自宅は閑静な住宅街にある。木造モルタル造りの2階建てで、2人で暮らすぶんには決して狭くはない。
近隣住民によると、当初は父親と容疑者の兄弟合わせて4人で暮らしていたが、数年前に父親が亡くなり、その後、兄弟も家を出て、いつしか2人で暮らすようになっていたという。
「朴舘容疑者は道ですれ違ったら挨拶はするけど、会話をしたことはありません。働いていたようだけど、窓のブラインドはずっと閉めたままでした。確かに、変わったところはあったけど、高齢者虐待で通報されたことがあると聞いて信じられない気持ち。
2人が喧嘩とか口論したところを見たことも聞いたこともなかったので、正直、ピンと来ないですね」
「親子間で消耗してしまう」
母親、容疑者とも、周囲とコミュニケーションをとるタイプではなかった、というのが近所の住民の印象だ。新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)の碓井真史氏が言う。
「現代社会におけるいろいろな問題が絡み合っている気がします。福祉や行政の人に言わせれば、“そんな家庭からは避難してください”となる。でも、『施設みたいなところには行きたくない』『自分の家がいい』『家族との縁が切れない』という理由で、せっかく避難したのに戻ってしまうのはよくあること。親に虐待されている子ども、夫に虐待されている妻も同じですよね。
若い子どもが親を手にかける場合もあれば、介護していた子どもが親をというケースもありますが、今回の事件は両面を含んでいる気がします。決して健康的な家庭ではなかったのでしょう。
容疑者は、周囲とは挨拶する程度の人間関係はあるが、逆に言えば、その程度の関係しかない。悩み相談ができるような人間関係もなかったのかもしれない。引きこもりでもニートでもないが、社会的なつながりは薄かったのかなと感じました。
母親もSOSが出しにくかった。行政や警察は助けの手を差し出すけれども、信頼関係を築けるほどではなかった。家庭を捨ててそちら側へ行ってしまうのが怖いから、家庭に戻ってしまったのでしょう」
そう分析したうえで、碓井氏は以下のように続けた。
「親に対する暴力はストレス発散にならないといいます。勢いでやってしまうが、その後、自己嫌悪に陥ってますますストレスが溜まってしまう。一方、殴られる側は力を失い、冷静な判断を失ってしまう。お互いが消耗してしまうのです。
ご近所付き合いがあれば、逃げ込むこともできたでしょうが、それもできない時代になった。行政が代わりにやるようになりました。それをうまく活用できる人はいいけれど、できない人もいる。
福祉行政は本当に一生懸命、やっています。民間で助けるところもありますが、本当に必要としている人になかなか届かないというジレンマに陥っている現状があると思います」
朴舘容疑者は、警察の調べに対し、「殺そうとは思わなかった」と供述しているという──。