中国が10年ぶりに南シナ海で1500ha超の人工島を造成、完成すれば最大規模に!アンテロープ礁とはどこか?米国はなぜ沈黙を貫くのか?(Wedge(ウェッジ))
2026年4月9日付Economistが、ほぼ10年間静かにしていた中国が南シナ海で埋め立てを再開したことには幾つか謎めいたことがあると指摘するとともに、米国が沈黙していることは驚きであると報じている。 昨年10月以来、中国は南シナ海の砂州を600ヘクタール(ha)の環礁に変えた。中国外務省報道官は、この計画は「島々の生活と労働条件を改善し地域経済を成長させることを目的としている」と言うが、そうとは信じ難い。 中国自身の数字でも、南シナ海の島々には2000人弱の市民(数千人の兵士を除く)が住んでいるにすぎない。ほとんどの市民は海域に対する権利を主張するために中国政府によって送り込まれたのである。 アンテロープ礁は、ミスチーフ礁の中国の大きな軍用航空基地のような姿を現しつつある。ミスチーフ礁は、13年から15年に至る人工島造成期間に建造された3つの基地の1つである。 ミスチーフ礁と同様、アンテロープ礁には2700メートルの滑走路を建設可能な長い土地がある。アンテロープ礁は間もなく南シナ海における最大の島となるであろう。 何故、約10年経って、中国の浚渫船が南シナ海に戻って来たかは謎めいている。もっと奇妙なことは、アンテロープ礁の場所である。 かつての埋め立てでは、中国が最も活動的だったのは南シナ海の南端のスプラトリー諸島(南沙諸島)で、ミスチーフ礁はそこに位置する。他にはマレーシア、フィリピン、台湾、ベトナムが領有権を主張している。 ところが、アンテロープ礁は、南シナ海の北部のパラセル諸島(西沙諸島)に位置していて、領有権を主張しているのは中国とベトナムだけである。また、スプラトリー諸島は緊張した状態にあるが、パラセル諸島は74年以来中国が全体を実効支配している。
中国はパラセル諸島に既に1つの滑走路を有するが、ベトナム沿岸からは遠い。アンテロープ礁は石油・ガスの埋蔵地域であり、かつ豊かな漁場に近い。 過去4年、ベトナムは自身が支配するスプラトリー諸島の島々で埋め立て作戦に乗り出している。ベトナムは新たな広い陸地を既に造成し、本年のある時点で陸地面積において中国を凌駕することになると言われる。他方、アンテロープ礁で中国による新たな埋め立てが進行しているので、中国が恐らくリードを保つであろう。 去る3月、アンテロープ礁での浚渫について問われたベトナム外務省の報道官は、不法だと言明した。中国外務省の報道官は、パラセル諸島は中国の「固有の領土」だと応酬した。 しかし、近年、両国は大体において舞台裏で問題を処理することを選好している。両国外務省がやり合う数日前、両国の国防相はトンキン湾でベトナム海軍の艦艇に乗艦し、中国の艦艇とともに共同パトロールを実施した。 米国の沈黙はもっと驚きである。オバマ、バイデン、一期目のトランプ政権はいずれも南シナ海における中国の争いのある島々の埋め立てに批判的だった。しかし、1月に公表された国家防衛戦略では、将来の焦点は日本から台湾、フィリピン、マレーシアを通る「第一列島線」であるとしている。 パラセル諸島は「第一列島線」の外側になるようである。米国の沈黙は、米国の新たな防衛の外周境界線を超える所では、米国は中国にフリーハンドを与える意図であることの最初の兆候の一つかも知れない。 * * *