いまさら聞けないPER低下と金利上昇との関係(土信田雅之)
今週の株式市場は、先週からの軟調地合いを引き継ぐ展開から持ち直す動きとなっています。
例えば、日経平均株価は20日(水)の取引終了時点で5日続落、そして節目の株価水準である6万円台も下回ってしまいましたが、翌21日(木)の取引では前日比で1,800円を超える急反発を見せています。
また、日経平均ほどの大きさではないものの、米国株市場でも20日(水)の取引で反発しており、ひとまずは、ホッと胸をなでおろす印象となっています。
<図1>国内外の主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年5月21日時点) ※欧米市場は5月20日時点
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを基に作成
直近までの株式市場が軟調となっていた背景としては、中東情勢で大きな進展が見られずに、原油価格が高止まりしていたことや、日米の金利(債券利回り)の上昇が目立っていたこと、そして、注目の米エヌビディア(NVDA)決算を控えた様子見などが挙げられます。
とりわけ、株式市場が意識していたのは金利の上昇でした。実際に、今週の日米の債券市場の動向を見ると、国内の10年債利回りが一時2.8%に達し、29年ぶりの高水準を記録したほか、米10年債利回りも4.67%まで上昇する場面がありました。
<図2>日本10年債利回りの推移(日足)(2026年5月21日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成
<図3>米10年債利回りの推移(日足)(2026年5月20日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成
こうした金利の上昇は日米だけでなく、欧州では英国の10年債利回りが19年ぶりの5.2%台、ドイツでも15年ぶりの3.2%台まで上昇するなど、多くの地域で債券が売られ、金利(利回り)が上昇しています。
こうした中で20日(水)の米国株市場と、21日(木)の国内株市場が反発したのは、トランプ米大統領が米国とイランの交渉について、「最終段階にある」と述べたことがきっかけとなり、中東情勢への不安が後退し、原油価格や債券利回りなどが低下したことが主因となっています。
「結局は中東情勢に左右される」という状況に変わりはありません。2月末に始まった米国とイランの衝突からまもなく3カ月がたとうとする状況下で、金利が上昇基調をたどっていることは気掛かりです。
確かに、金利の低下が今週の株価反発の要因となりましたが、米10年債利回りは中東情勢が緊迫化する前の2月27日時点では、3.93%、国内10年債利回りは2.12%でしたので、まだ現在の利回り水準はそれぞれ0.5%以上も上回っています。
それだけ中東情勢の緊迫継続による原油高の影響や、旺盛なAI投資需要がもたらす部品価格の上昇などがもたらすインフレへの警戒が根強いことを意味していると思われます。
株式市場にとってネガティブに働く金利の上昇
金利の上昇は、住宅や自動車などのローン金利をはじめ、企業の資金調達コスト、政府の国債利払い増加など、実体経済に打撃を与えることになるため、一般的に株式市場にとってネガティブに働くことが多いとされています。
さらに、株式市場では、金利が上昇すると、いわゆる「マルチプル・コントラクション」と呼ばれる、株価収益率(PER)が低下する状況が発生しやすくなります。
実際に、足元の株価の値動きが大きい日経平均で確認すると、2026年のあたまから最近までおおむね19倍台から20倍台で推移していたPERが、最近になって17倍台まで急低下しており、株式市場でも金利の上昇が意識され始めたタイミングと重なっています(図4)。
<図4>日経平均、PER、EPSの推移(日足)(2026年5月21日時点)
出所:日経新聞掲載データを基に作成
そもそも、PERとは、株価の割高・割安感を探るために用いられる指標で、「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算されます。ちなみに、株価を1株当たり純資産(BPS)で割ったものが株価純資産倍率(PBR)です。
理屈の上では、株価は企業の価値を表しますが、企業の価値は「稼ぐチカラ(事業価値)」と「保有している資産価値」に分けられます。つまり、株価を事業価値で評価したものがPER、資産価値で評価したものがPBRになります。
ちょうど、図5のようなイメージです。
<図5>PER・PBR・ROEの関係
このような考え方に基づくと、稼ぐチカラが強い企業ほど、株価上昇への期待も高くなり、それに伴ってPERの数値も大きくなっていきます。AI・半導体銘柄や新興株市場の銘柄で高いPERのものが多いのはこのためです。
また、日経平均のPERはここ数年の間に、「14~16倍台」から、「18~20倍台」へと水準を切り上げていますが、旺盛なAI需要を背景に業績が大きく上振れしそうな企業が牽(けん)引していることや、証券取引所が旗振り役となって、上場企業に求めている資本効率改善(発行済み株式数の減少など)の効果が出ていることで、日本株の適正PERの水準が切り上がってきたと考えられます。
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