キュアエクレール歌い演じる長谷川育美 あの頃が今につながっている:朝日新聞

インタビュー

聞き手・寺下真理加

「長谷川育美のキュアット解決!」

 連載「キュアット解決!」では放送中のアニメ「名探偵プリキュア!」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語ります。

 長谷川育美さんが演じるキュアエクレール/帆羽くれあは、キュアアルカナ/森亜るるかとの強い絆を確かめ合い、2人は名探偵プリキュアとして再び歩み出しました。明智あんな、小林みくると4人で「キュアット探偵事務所」での活動がスタート。あんなとみくるが通う、まことみらい学園にも一緒に通うことになりました。

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香りと記憶は結びついている

 キュアエクレールは、トップオブリリーの香りを嗅ぐことで、名探偵プリキュアとしての記憶を取り戻しましたが、私も演じる中で、香りと人間の記憶はすごく結びついているということを今回、あらためて考えました。

キュアエクレールの変身シーン ©ABC-A・東映アニメーション

 たとえば私自身、普段の日常でも、街中でふと香りに気付き、「あの頃の香り!」と突然、記憶が学生時代にまで、さかのぼってしまうことがあります。気に入っていた香水をもう一度買おうと思って探したら、期間限定商品で、手に入らなくなっていたのでガッカリした、という経験もありました。

 小学生の頃も、桃やイチゴの香りがついたペン、練り消しなどを気に入っていました。だから、キュアエクレールの変身アイテムが「トップオブリリーフレグランス」だと知った時は、「『名探偵プリキュア!』を見てくださっているお子さんたちにとって、これが人生で初の香水デビューになるのかな」と、うれしかったですね。実際にその香りを嗅いでみると、上品で素敵な香りで、私も普段使いしたいと思いました。

キュアエクレール ©ABC-A・東映アニメーション

 キュアエクレールの変身シーンは、バレエの優雅な動きを取り入れています。一つひとつの動きがきれいなので、最後に「名探偵 キュアエクレール!」と名乗るところでは、安心感や頼りになる感じを、パシッと決められたらいいなと思って演じています。「名探偵プリキュア!」のキャラクターデザインを担当されている矢野茜さんのお話では、名乗る時に両手をクルクルと回しながら上げる独特の動きには、バレエの「踊りましょう」という意味が込められているそうです。

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社交的なくれあ 不器用なるるか

 これから注目したいのが、明智あんな、小林みくる、帆羽くれあ、森亜るるかの4人の学校生活です。あんなとみくるが通うまことみらい学園に、くれあとるるかも通うことになりました。

森亜るるか(左)と帆羽くれあ ©ABC-A・東映アニメーション

 るるかは最初は学校に興味がなさそうな様子でしたが、大好きなくれあから「るるかと一緒に、学校に通ってみたいな~!」と言われたら断れない、かなわないのです。

 くれあは本来、社交性が高いタイプなんだと思います。パティスリーチュチュのパティシエとして、色んな年代のお客さんと接してきた経験もある。初日なのに、もうずっとこの学校にいるような空気でしゃべることができています。

(左から)ジェット先輩、シュシュタン、帆羽くれあ ©ABC-A・東映アニメーション

 一方で、るるかに対しては、彼女が少しずつ周囲に溶け込んでいくのを見守る姿勢です。「私が何かをしてあげなくても、るるかは絶対に愛される子。不器用なところも含めて彼女の魅力」という確信があるからなのでしょう。

高校時代、声優への強い憧れ

 私自身の高校時代を振り返ると、バイトも部活も勉強もしていませんでした。自転車で片道1時間かかるので、行って帰るだけで疲れ果てていた。ただ、声優さんへの強い憧れだけはありました。親が寝た後で、持っている漫画を声に出して読んだり、それを音楽プレーヤーに録音して、自分で聞き直したりしていた。

(左から)キュアミスティック、キュアエクレール、キュアアンサー ©ABC-A・東映アニメーション

 だから他の教科は興味を持てなくても、国語の現代文の時間に教科書を読むことにだけは、命をかけていましたね。授業で自分が当てられたら、つっかえずに、きれいに読む。週末に一人でカラオケに行って、声がかれるまで7時間くらい歌う日もあった。

 学校が終わったら、まっすぐ家に帰ってニコニコ動画を見て、ボーカロイドや「歌ってみた」を聴くのも楽しみでした。学校から課題として与えられる歌は、私自身が歌いたい歌じゃなかった。けれど、ただ「好きじゃない」「やりたくない」ということだけを理由に、授業や合唱コンクールのような行事をサボることはイヤだったんです。やらなきゃならないことは、ちゃんとやる。それをして初めて、自分のやりたいことができる。そう思っていたので。あの頃の経験が、今につながっていると感じます。

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歌でエクレールの心情描く

 歌には、演技とはまた違う表現、気持ちの込め方が求められます。だからこそ「名探偵プリキュア!」のボーカルアルバムはぜひ、聴いて頂きたいです。キュアエクレールとして「私は謎」という曲を歌いました。

キュアエクレール ©ABC-A・東映アニメーション

 短い1曲の中で、どうキュアエクレールの心情を描くかと考えた時、やはりトップオブリリーの香りを嗅いで、記憶を取り戻す瞬間、その前後に焦点をあてようと思いました。彼女自身が、まだ自分のことをわかりきっていない。それでも、自分の内側に「きらめき」があって、だからこそ、人を救いたいという思いが湧いてくる。

 前半は悩んでいる時に近いような声の質感で、後半に行くと明るさのある声に変わっていきます。ちょっとジャズっぽい雰囲気の楽曲で、自分もあまり歌ってこなかったジャンルなので、すごい楽しかったですね。

 実は私、高校時代は「絶対に声優になれる!」みたいな自信があったんです。今思うと謎なんですが。だけど事務所に所属すると、オーディションを受けても受かるとは限らない。待っていれば仕事が来るわけでもない。同じ世代がどんどん活躍していく中で、くすぶっていた時間が長く、「向いていないんだな。やめよう」とまで考えていました。

帆羽くれあ ©ABC-A・東映アニメーション

 私は基本は「負けず嫌い」なんですが、負けず嫌いなだけで、目指した道で成功するわけじゃないことを実感しました。だけど「今回ダメなら、もうやめよう」と最後に思ったタイミングで、たまたま受かったオーディションがあった。そこから少しずつ、道が開けていったんです。だから常に「これがずっと続くわけじゃない」って感覚を持って生きていますし、これからもそうだと思います。

 与えられる選択肢を全部こなす必要なんてない。本当に興味を持ったことだけを突き詰める。そんな高校生活があってもいいのではないでしょうか。

この記事を書いた人

寺下真理加
文化部|be編集部
専門・関心分野
音楽、民俗学、サブカルチャー

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