ガソリン暫定税率の廃止に歓喜するドライバーが知らない「恐ろしい事実」(ダイヤモンド・オンライン)

 ガソリン税の暫定税率は、昨年末に廃止された。燃料費の負担軽減に歓迎の声が上がる一方、日本はすでに2009年に道路特定財源を一般財源化し、道路整備を安定的に支える仕組みを手放している。全国で橋や道路の老朽化が進むなか、更新費用はどこから捻出するのか。目先の値下げの先に生じる財源の空白を、専門家の視点から検証する。※本稿は、経済学者の根本祐二『インフラ崩壊 老朽化する日本を救う「省インフラ」』(日本経済新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● インフラ老朽化の大波は 過去の近視眼政治のツケ  筆者は現在のインフラ老朽化問題を生んだ歴史の転換点は2つあると考えている。  第1は、1970年代である。1950年代末からの高度成長は1960年代にほぼ完了するが、インフラ投資比率はその後上昇し1970年代にピークを迎える。結果的に、この時期に積み増されたインフラが現在老朽化し大きな更新圧力となっている。その背景には、地方公共団体がこぞって公共サービスのレベルを高めようという政治的な動きがあった。立派なハコモノや道路があることが豊かさの象徴であるという意識は、この時期に形成されたと考えている。  第2は、バブル崩壊後の1990年代である。この時期は、すでに全国のインフラはほぼ完成していて地方側から切実なニーズがあったわけではない。しかし、実際には、政治は、景気対策の名のもとに多くのインフラ投資を行うとともに、低迷する税収のもとで資金を調達するために負債依存度を高めるという道を選んでしまった。  以上の通り、筆者は、わが国のインフラ投資は現場での必要性よりも政治的な意図によって行われてきたと考えている。政治的な意図とは、短期的に有権者の支持を得るための行動であり、インフラ老朽化という長期的視点で取り組むべき問題に目を向けることを妨げた。そしてそれは現在も続いている。

 2000年代以降、インフラ投資比率は低下するが、これは長期的視点を身につけたというよりも、増大する社会保障関係費を捻出するには公共事業を減らすしかないという切実な事情があったためである。現在は、インフラ投資比率は5%台であり、もはや公共事業の圧縮で社会保障関係費を捻出できる状態ではない。結果的に、負債依存度は高まっている。インフラ老朽化と負債依存度の高さが共存する異常な状態となっているのである。 ● 民間インフラはなぜ崩れない? 適正な投資の2つの型とは  ここまで、日本の歴史の中で、インフラ投資の集中がインフラ老朽化の集中を生んでいることを指摘した。しかし、そうしたことは今までも起きていたのではないか、あるいは、民間企業でも同じではないか、であれば何らかの方法で解決されてきたのではないかという疑問が生じると思う。筆者も、インフラ老朽化は今までもあったことだから心配する必要はない(だから、新しい公共施設や道路を作ってもよい)と主張されたことがある。だが、この主張は明らかに間違いである。その点を明白にするためにインフラ投資パターンによる分析を紹介する。  第1が、製造業に多い投資平準化パターンである。製造業の企業にとって工場設備の競争力は経営のカギであり、工場設備が老朽化してある日突然使えなくなって倒産したり、廃業したりするということは許されない。計画的に工場設備を更新して競争力を保つために、景気が良くても過大投資をしないし、景気が悪くても一定額を投資するという行動をとる。  図表1-2は、3つのラインを持つ工場設備を順番に更新していくイメージを描いている。おおむねキャッシュフロー(利益+減価償却費)の範囲内で一定水準の投資を続けていれば、工場設備の一部が老朽化しても、それを更新する予算は常に確保されていることになる。これが投資平準化パターンである。

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