米アップルが関税回避で切り札、18年続くガラスメーカーとの契約拡大

アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、トランプ米大統領との良好な関係を維持するため今回も得意の戦略を取った。従来の取り組みを維持・拡大することで、トランプ氏の「メイド・イン・USA」政策への支持を示すというアプローチだ。

  クックCEOは6日、アップルが4年間の米国への投資額を6000億ドル(約88兆3700億円)に引き上げると表明した。従来の5000億ドルから1000億ドル規模の増額となる。 ホワイトハウスでトランプ氏とバンス副大統領の間に挟まれながら、この計画を明らかにした。

  計画の中心は、同社に長年ガラスを供給するコーニングへの25億ドル規模の投資だ。これに伴い、全てのiPhoneやApple Watch向けのカバーガラスが、ケンタッキー州にあるコーニングの工場で製造されることになる。これまでガラスの一部は、海外で製造されていた。

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  トランプ氏は計画を巡り「アップルはこれまで、他の国々にも少し投資してきた。どの国かは明かさないが、数カ国だ。それらが戻ってくる」とコメント。6000億ドルの投資は「これまでで最大だ」と胸を張った。

  アップルは半導体製造に関する契約の拡大についても説明。サムスン電子やテキサス・インスツルメンツ(TI)、ブロードコムなどとの取引を拡大するとしている。

  アップルが「米国製造プログラム(AMP)」と呼ぶ今回の発表は、米国への注力を示す上で十分な内容だったものの、同社に大きな変化を迫るものではない。コーニングは2007年に初代iPhoneが登場して以来のアップルの供給元だ。

  クックCEOもかねてiPhoneの米国製ガラスをアピールしており、新たな点は取り組みの規模がやや拡大されたところにある。

  アップルは、こうした取り組みを打ち出し、関税措置の軽減を得ようとしている。トランプ政権は、スマートフォンなどへの除外措置を終了させインドからの輸入品に新たな関税措置を導入しようとしている。これは、米国向けiPhoneの組み立てを最近インドに移したアップルにとって懸念材料となる。

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  一方、トランプ氏は今回、米国へ投資を行う企業は、プロジェクトが初期段階であっても、一部の関税が免除されると表明。「アップルのような企業にとって朗報なのは、米国内で生産しているか、疑いなく国内生産を約束している企業については、一切の課税を行わないという点だ」と記者団に語った

  アップルの計画は、iPhoneなど主力製品を米国で製造していないにもかかわらず免除の基準を満たすとみられている。スマホの組み立ては、今後も中国やインドで行われる予定だ。

  クック氏は組み立ての工程について、「しばらく別の場所にとどまる」とした上で、「米国製の部品が数多く含まれており、それを非常に誇りに思っている」と話した。

  トランプ氏もまた組み立てが「他の場所で行われ、長年続いてきた」と認める一方、将来的にその工程を米国に移すことを望んでいるとあらためて表明。「これが、米国で販売されるiPhoneが、米国で製造されるようになる目標に向けた重要な一歩だ」と強調した。

原題:Apple Expands 18-Year-Old iPhone Glass Deal to Avoid Tariffs(抜粋)

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