羽生結弦さんが感じた意味 野村萬斎さんと舞った「SEIMEI」
東日本大震災の発生から14年となるのを前に、フィギュアスケート男子で冬季オリンピック2連覇を果たしたプロスケーター、羽生結弦さん(30)が座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata(ノッテ・ステラータ)2025」が7~9日、宮城県利府町のセキスイハイムスーパーアリーナで開催された。3回目を迎えた今回は狂言師・野村萬斎さんがスペシャルゲストとして出演。
ショーの詳報、羽生さんと野村さんの談話は既に配信したが、今回は異次元とも言えるコラボレーションを通じて感じたことをコラムとして書き残したい。
鬼気迫る表情を見せた「SEIMEI」
会場のどよめきはしばらく収まらなかった。描写を書き留めていたメモは途切れ、ペンを握るその手は自然と2人への拍手に変わっていた。
報道陣に公開されたショー初日の7日、第2部の冒頭で、暗転した空間のつり上げステージに野村さんが現れた。映画「陰陽師」で演じた安倍晴明の装いをした野村さんが「出現、羽生結弦、急急如律令(きゅうきゅうにょりつりょう)」と唱えて人型の紙を落としたところから、「式神」として召喚された羽生さんによる「SEIMEI」が始まった。
地上に降り立った野村さんはリンクサイドを駆けては呪を唱え、羽生さんはサルコウ、トーループの2種類の4回転ジャンプを決めるなど、よどみのない滑りを見せた。鮮やかな動きのコレオシークエンス(振り付け要素)から最後のスピンまでを終えると、氷上には安倍晴明の象徴とも言える五芒星(ごぼうせい)が描かれていた。
「SEIMEI」は、ファンのみならず羽生さん自身も「僕の代表曲」というほど思い入れのあるプログラムの一つだ。
2連覇を果たした2018年平昌冬季オリンピックはもちろん、プロとしてスタートを切った22年夏の公開練習「SharePractice(シェア・プラクティス)」ではミス無くできるまで滑り続け、初の単独公演となった「プロローグ」でも最初の演目とした。
ただ、今回は鬼気迫るような表情だけでなく、野村さん演じる安倍晴明に「式神」としてひざまずく後ろ姿一つとっても、所作に引き込まれた。撮影した貝塚太一カメラマンも画像を確認しながら「いつもと違う」と言って配信写真に加えた。
背後から感じ続けた威厳
公演後の羽生さんは、野村さんと共演した「SEIMEI」について次のように語った。
「何か威厳のようなものを常に背後から感じながら。決してミスをすることができないというプレッシャーとともに、本当にオリンピックかなと思うぐらい緊張しながら滑りました」
これまでとの感覚の違いも口にした。
「いつもは僕自身が安倍晴明をモチーフになって滑るということが一番多か…