なぜ飛び降りた? 娘を巻き添えにした男性に、父がぶつけた怒り

真相・ニュースの現場から

毎日新聞 2026/10/7 11:00(最終更新 10/7 11:13) 有料記事 2507文字
歩道を歩いていた稲葉朋来さんが転落男性の巻き添えとなった現場マンション=名古屋市中区で2026年9月6日午前0時59分、木谷郁佳撮影

 夜でも明るく人通りの多い歩道を、自宅に向かって友人と歩いていた。あるマンションの前を通りかかった時のことだ。それは、ほんの一瞬の出来事だった。

 主な内容 ・予期せぬ転落者との衝突 ・逮捕の男性「巻き添え承知で転落」 ・「未必の故意」はあったのか ・衝撃は1~3トンに匹敵

 ・補償、置いてきぼり

予期せぬ転落者との衝突

 7月19日午前1時ごろ、名古屋市中区の歩道を歩いていた飲食店員の稲葉朋来(ほうら)さん(23)が、12階建てマンションの11階ベランダから飛び降りた男性(29)に巻き込まれた。

 父健二さん(50)=三重県度会町=の元に朋来さんの姉(27)や病院から連絡が入ったのは午前2時半ごろ。「落ちてきた人に当たって病院に運ばれた」「長くないかもしれない」。状況を理解できぬまま、約100キロ離れた名古屋市内の病院へ急いだ。

 夜明け前、集中治療室で対面した朋来さんは、たくさんの管につながれ、苦しそうな表情で眠っていた。手を握り、「お父さんたちが来たよ」と何度も声をかけたが反応はない。間もなく、息を引き取った。

 背骨や首、胸の骨が折れ、内臓も激しい損傷を受けていた。次第に冷たくなっていく朋来さんの体を、健二さんはなで続けた。

 本当なら翌20日は、久しぶりに家族が実家に集まり、食卓を囲む予定だった。家族がそろうのは昨年10月にあった姉の結婚式以来。普段は名古屋で忙しそうに暮らし、実家から足が遠のいていた朋来さんも、「その日なら行けるよ」と楽しみにしていた。

 火葬炉に運ばれるひつぎに、健二さんは涙ながらに語りかけた。「行ってらっしゃい。ちょっと寂しくなるけど、待っててね」

逮捕の男性「巻き添え承知で転落」

 朋来さんが巻き込まれた現場に、健二さんは何度も足を運んだ。繁華街にほど近い大通り沿いで、夜でも街灯や店の明かり、車のライトが歩道を照らし、自転車や歩行者も多い。「朋来が下を歩いているのも見えていたはず。巻き添えにするのを分かっていてなぜ飛び降りたのか」と怒りと疑問が湧いた。

 転落した男性は意識不明の状態が続いていたが、その後会話ができるまでに回復。愛知県警は8月末、朋来さんに対する重過失致死容疑で逮捕した。

 健二さんはすぐに接見を申し込んだ。聞きたいことは山ほどあった。男性が鑑定留置に入る前までに計3回、愛知県内の警察署で男性と対面した。

 男性は車いす姿で、「大切な娘さんを死なせてしまい、大変…

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