超加工食品が大腸がんを引き起こすメカニズムを解明…カギは「体内の炎症」

腫瘍を分析した新しい研究で、腫瘍の中では、炎症を引き起こす化合物が不均衡な状態にあることが明らかになった。さらにこの状態は、加工食品の占める割合が高い食生活と関連しているという。

University of South Florida

超加工食品(大量生産され、糖分や脂肪分、添加物などが多い食品)は、大腸がんの症例増加の一因となっている可能性がある。一方で、健康的な食品は、この疾患を防止・治療する新たな道を開く可能性があるとする新たな研究結果が発表された。

この研究では、サウスフロリダ大学とタンパ総合病院がん研究所の研究者が、患者から採取した100件以上の腫瘍の標本を分析した。その際に研究チームは、「生理活性脂質(bioactive lipids)」と呼ばれる化合物を探した。これは、体内の炎症を増大させたり緩和したりするメカニズムに関わる分子だ。

その結果、研究チームは、腫瘍の標本では健康な組織に比べて、これらの炎症を引き起こす化合物の割合が高いことを発見した。

これまでの研究でも、ポテトチップやソーセージ、市販のデザートや精製された炭水化物など、加工食品の割合が高い食生活が炎症の増大と結びついていることを示すエビデンスはあった

我々の食生活の至るところに存在する加工食品が、健康状態を悪化させることを示すエビデンスが続々と現れている。それと同時に、比較的若い人のあいだで大腸がんの症例が増加しており、アメリカでは今や、がん関連死の原因で第2位にまで上昇している。

今回の研究チームはまた、分析した腫瘍には、炎症の治癒や軽減につながる分子が欠けている点も指摘している。

腫瘍の内部状況を観察することで、がんと戦うための武器が手に入る可能性がある。具体的には、炎症を引き起こす化合物の量を減らし、健康に良い影響があるものを増やすことで、腫瘍の成長を妨げたり遅らせたりして、体の免疫反応のバランスを保つことが、その手段となるだろう。

健康に良い化合物を構成する分子の供給源の一つが、我々の日々の食事だ。特に、緑色の葉物野菜や、オメガ3脂肪酸が豊富な魚介類といった食材が挙げられる。

今回の論文共著者である、サウスフロリダ大学医学部心臓研究所のガネーシュ・ハラーディ(Ganesh Halade)教授は、「(化合物の)分子が加工食品に由来する場合、これらの分子は直接、免疫系のバランスを崩し、慢性的な炎症を引き起こす」と解説する。

「我々の体は、摂取するアボカドなどの健康に良い脂肪から得られる生理活性脂質を通じて、炎症を積極的に緩和するように作られている」

2024年12月10日付けで学術誌『Gut』に掲載されたこの研究は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から提供された、5年間で310万ドル規模の助成金で運営されるプロジェクトの最初の成果だ。

論文の上席著者を務めた、サウスフロリダ大学のティモシー・イェーツマン教授(外科)はプレスリリースで、今回の研究結果は、がんのリスクに食物が影響を与える仕組みについて、研究者の理解を深めるのに役立つと述べている。

イェーツマン教授によれば、がんは「治らない慢性の傷」のようなものだ。毎日の食生活で超加工食品が多くを占めていると、炎症が増大するため、体ががんと戦うことが難しくなるという。

「ホウレンソウや魚介類の方が、ドーナツやソーダよりも健康に良い」というのは、特に目新しい知見とは言えない。ただし、食品と炎症のあいだにある関連性を特定すれば、将来的に、より効果的にがんを食い止める戦略へと道を開くことになる。

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