<トクリュウ警戒中>繁華街の平穏 目光らせ
府警捜査に記者同行
勧誘や客引き 浄化に力
摘発された客引きを乗せた捜査車両(11月26日夜、東山区で)=画像の一部を修整しています世界中から観光客が集まる京都市中心部の繁華街で、客引き行為などが相次いでおり、府警が浄化に力を入れている。こうした違法行為は、SNSなどでメンバーを集めて事件を繰り返す「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の関与も疑われている。捜査員らに同行し、摘発の現場を取材した。(東大貴)
東山区の繁華街・祇園は11月26日夜、平日にもかかわらず子連れを含む観光客らで活気にあふれていた。
そんな日本を代表する観光地の一角には風俗営業店が軒を連ね、スカウトとみられる男性が物色するように女性を探す様子があった。洗練された日本文化を求めに来る外国人の中には、悪いイメージを抱く人もいるだろう。
祇園などではかつて、若者のけんかなどの迷惑行為が相次ぎ、府警は2005年、木屋町(中京区)を含めた歓楽街の環境浄化を図るために「祇園・木屋町特別警察隊」を結成。パトロールなどを進めた結果、一帯の刑法犯認知件数は同年の2089件から21年に434件まで減ったが、コロナ禍が落ち着いた23年は610件と増加に転じ、外国人観光客が絡む事件も起きているという。
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府警はこの日、しつこく付きまとって風俗営業店の従業員に勧誘するなどの違法行為を取り締まる方針だった。男女複数人の警察官が私服姿で人波に紛れながら街に繰り出し、悪質行為が確認されればその場で検挙する捜査だ。
記者は「帰宅途中のサラリーマンのような格好で」という東山署員の指示を受け、上下スーツにネクタイ姿で同行した。「ちょっと散歩しますか」。同署幹部の呼びかけで歩き出した。
強引な勧誘を受ける女性の姿は確認できなかったが、一つ隣の筋にはキャバレーが多く、客引きがずらりと並んでいた。ただ、客引きの男性も条例や法律に抵触しないよう小声で「どうですか」と呼びかけてくるのみで、細心の注意を払う店側の徹底ぶりも感じた。
捜査には府警生活保安課や木屋町を抱える中京署の警察官も加わり、広範囲で街を見て回ったが、一筋縄では摘発できない。深夜に差し掛かり、エリアの変更を模索していた頃、幹部のスマートフォンに「逮捕」の連絡が入った。
すぐに近くの雑居ビルに向かうと、府迷惑行為等防止条例違反容疑で現行犯逮捕された男(43)が警察官に囲まれ、捜査車両に乗り込んでいった。男は私服警察官に声をかけ、性的好奇心をそそる言葉で「セクシーキャバクラ」と呼ばれる店に誘客した疑いがあるという。
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キャバレーなど飲食接待を伴う風俗営業店は府内に923軒あり、うち7割弱にあたる621軒が東山区内に集中する。
違法な客引きやスカウト行為は以前からあるが、近年はこうした誘客で得た売り上げの一部が、トクリュウ側に流れているとされる。特殊詐欺に使うスマートフォンや銀行口座の購入などに充てられているとの指摘もある。
東山署の幹部は取材の最中、「世界的な観光都市の京都に迷惑行為は必要ない。引き続き環境浄化に努める」と話し、きらびやかなネオン街の様子に目を光らせていた。街の平穏を保つため、犯罪の芽を摘む警戒の重要さを改めて感じた。
違法行為 幅広く関与か
繁華街では、風俗店や賭博店の経営、スカウト行為などに幅広くトクリュウが関与しているとされ、全国の警察が警戒を強めている。
警察庁は今年3月、京都を含む12都道府県警に対し、部門横断での専従態勢の確保を指示。トクリュウは特殊詐欺などの違法行為で得た資金をもとに、繁華街で事業を行っている可能性があり、府警では刑事部門と風俗関係事犯を担当する生活安全部門が連携し、実態の解明を進めている。
府警捜査4課は「トクリュウとその主要メンバーを見定め、風俗や薬物などあらゆる法令を駆使した取り締まりを推進していく」としている。(林興希)