国債入札に警戒強い、金利高騰の恐怖と利回り妙味葛藤-きょう20年債

日本銀行の追加利上げ観測を背景として予想外に弱い国債入札が続いており、きょうの20年債入札に対する投資家の警戒感は強い。入札結果は金利の上昇が続くかどうかの試金石となる。

  日銀の利上げ観測やトランプ米政権の政策不透明感から、国債の利回りは年初から上昇(価格は下落)基調にある。ただ3月末の決算で保有債券の評価損計上を回避したい投資家は積極的な国債購入を見送っている。10年債や5年債に続き20年債の入札も不調に終われば、年度末に向けて金利は一段と上昇し、長期金利が世界主要国で最低という現状からの脱却が現実味を帯びてくる。 

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Sources: Bloomberg, Japan’s Ministry of Finance

  20年金利は2.3%前後と2008年以来の高水準に上昇した。大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、足元の債券相場は年度末を意識して値動きが極めて荒く、イールドカーブ形状も定まりにくいことを挙げ、入札で「新たな買い手が出てこない可能性があり、慎重に臨む必要がある」と述べた。

  10日の5年債入札は投資家需要の強弱を示す応札倍率が22年以来の低水準となり、大きいほど低調な結果を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は20年以来の水準に拡大。投資家不在を印象付けた。

  20年債は、銀行が主要投資家である10年債と生命保険会社が主体の30年債に挟まれ、投資家層が薄い。このため、20年国債を購入し、同年限のスワップ金利を支払って(債券の売りに相当)金利上昇をヘッジするアセットスワップ取引が需要を支えてきた。足元では20年債利回りのスワップ金利に対する上乗せ幅が急拡大しており、国債の売り圧力の強さを示す。

  三菱UFJアセットマネジメントの小口正之エグゼクティブ・ファンドマネジャーは、「アセットスワップ取引の解約が出ている」可能性に言及し、テールの急拡大など入札の不調を警戒する。

  超長期債には供給面の懸念もある。ドイツでは防衛費増額のための大規模な財政改革案で国債利回りが急上昇した。このあおりで国内でも国債増発懸念が再燃している。債券市場では、来年度の国債発行計画で超長期債の減額を好感して利回り曲線が平たん化(ブルフラット化)していたため、その反動が出ている。

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  日銀の追加利上げ観測による金利先高観から長期金利は一時1.5%台後半と08年以来の水準に切り上がった。年限が近い20年債はこの影響を受けている。

  大和証券の小野木氏は「通常ならば利回りが2.3%近辺の20年国債に買いにくさはない」ことから、「投資家需要にある程度期待が高まりやすい水準で迎える入札」であることも指摘した。

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