「奈良監獄ミュージアム」全容公開 96室の独居房が連なる保存エリアなど

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート

星野リゾートが重要文化財「旧奈良監獄」の保存活用事業として整備を進めている「奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート」の全容が公開された。4月27日に開館する。料金は大人2,500円~。

旧奈良監獄は、明治政府によって計画された五大監獄のうち、唯一現存する建築物。奈良監獄ミュージアムでは、歴史的建造物の保存を担うとともに、建築美や歴史的価値を未来へと継承していくための拠点となることを目指す。奈良以外の明治五大監獄は「長崎監獄」「金沢監獄」「千葉監獄」「鹿児島監獄」。

ミュージアムゲート
シンボルマーク

旧奈良監獄は、1908年(明治41年)に近代化を目指した国の一大プロジェクトとして誕生した。設計者は、数多くの裁判所や監獄の建設に関与した山下啓次郎氏。1946年(昭和21年)には「奈良少年刑務所」と改名し、社会復帰と更生教育を重視する矯正施設となった。その後、歴史的価値と美しい建築の意匠が評価され、2017年(平成29年)に国の重要文化財に指定された。

奈良監獄ミュージアムの特徴として、美しき監獄、展示、ミュージアムカフェ&ショップ、構想とデザインの4つを挙げる。

美しき監獄については「壮大な建築を辿り、明治の精神に触れる」をテーマに、中央の見張台から放射状に舎房(独居房・雑居房といった居室の総称)が伸びる「ハヴィランド・システム」やイギリス積みの赤レンガ壁など、当時から残る意匠と機能性を兼ね備えた建築美を公開する。

ハヴィランド・システム

「保存エリア」となる全96室の独居房が連なる「第三寮」は、ヴォールト状の天井や高い場所に設けられた窓から自然光が差し込み人権への配慮がうかがえるとしている。近代監獄の面影とその場の空気感を直接肌で感じられる、監視窓を備えた重厚な木製扉と堅牢な鍵も見どころの1つに挙げる。

保存エリア 第三寮

展示は、A棟の「歴史と建築」、B棟の「規律と暮らし」、C棟の「監獄とアート」の3エリアを展開する。

A棟では、8つの展示室で奈良監獄の歩みを日本の行政制度とともに紹介する。明治政府は、不平等条約改正を見据え、諸外国に法治国家として認められるため、人権を重んじる監獄を目指した。展示では、プロジェクトを担った設計者の山下啓次郎氏の足跡や、中央看守所から全容を見渡す構造と当時の先進技術が集結した構造について1/420の再現模型で展示する。

8つの展示室が連なるA棟
明治五大監獄の模型

耐火性と耐久性を重視したレンガで造られた奈良監獄は、職人の指導下で受刑者が製造・積み上げたもので、1906年だけで延べ15万人以上が携わった。その後の「奈良少年刑務所」時代には、日本初の総合訓練施設として改善・教育の指導だけでなく、高校通信制課程が導入され、受刑者は「生徒」と呼ばれていた。地域住民向けの「若草理容室」やスポーツ交流など、社会との接点が数多く設けられたという歴史もあり、A棟では当時の作業やレクリエーションの様子をイラストや写真で展示する。

B棟では、刑務所という特殊な社会での生活における「規律」「食事」「衛生」「作業」「更生」「お金」「自由」の7つのテーマを、デザインを通じて紹介する。

B棟 自由

「規律」は起床から就寝、布団の畳み方に至るまで厳格なルールが定められた様子、「食事」は全国の刑務所の個性が現れる献立や食器を展示。「衛生」は受刑者は清潔を保つこともルールとされ、「トイレに行くには。」「入浴時間は。」など、決められた時間に定められた方法で身を清めた様子をグラフィカルに紹介する。

B棟 規律

C棟はかつての医務所を改装したエリアで、「罪と罰」「時間と命」といった普遍的なテーマのもと、5組のアーティスト作品と受刑者による刑務所アートを展示する。また、展示の締めくくりとなる「むすびの部屋」では、アーティストや身近な人へ言葉を届ける「プリズン ポストカード プロジェクト」を実施する。

参加アーティストと作品は、花輪和一「刑務所の中」、西尾美也「声を縫う」、三田村光土里「過ぎてゆく部屋」、風間サチコ「秩序とNEW僕等と」、キュンチョメ「海の中に祈りを溶かす」。刑務所アートについては、2023年から続く「刑務所アート展」の応募作から、受刑者が自主的に制作した絵画や書、文芸作品を展示する。

西尾美也「声を縫う」
キュンチョメ「海の中に祈りを溶かす」

むすびの部屋の「プリズン ポストカード プロジェクト」では、ミュージアムでの体験を通して新たに浮かんだ問いや誰かに伝えたい想いをカードに記して、ポストに投函できる。投函されたカードは壁面に展示されるほか、その一部を刑務所へ届けるプロジェクトを進めている。

ミュージアムカフェ&ショップは余韻に浸る場として設置。おすすめは赤レンガをモチーフにしたカレーパンとご当地ソーダで、明治の洋食文化を映したカレーは少年刑務所時代に人気のメニューだったという。そのほか、明治のレシピに着想を得たチーズケーキ等を用意する。価格は、「レンガカレーパン」600円、「チーズケーキ 1908」600円など。

レンガカレーパン

ショップでは、建築美を収めたポストカードや雑貨、アパレルなどのオリジナルアイテムを販売。全国の刑務所作業製品を紹介するギャラリーも併設する。

ミュージアムショップ

構想とデザインについては、監獄という特異なテーマを深く掘り下げるにあたり、世界で活躍するクリエーターたちの協力得ており、その表現力により、この場所が持つ本質的な価値を発信するとしている。アートディレクターは佐藤卓氏で、スーパーバイザーとしてAdrien Gardère(アドリアン ガルデール)氏を招聘した。

所在地は奈良県奈良市般若寺町(はんにゃじちょう)18。アクセスはJR奈良駅・近鉄奈良駅からの直通バスで「奈良監獄ミュージアム前」下車徒歩1分。バスの所要時間は、JR奈良駅から25分、近鉄奈良駅から18分。開館時間は9時~17時(最終入館16時)。

星野リゾートはミュージアムのほか、旧奈良監獄を活用したラグジュアリーホテル「星のや奈良監獄」を、6月25日に開業する。

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