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8月6日は、80年目となる原爆の日です。広島では平和祈念式典が行われました。外国人観光客に英語でボランティアをしている小学6年生の佐々木駿さん(12)が子ども代表として「平和への誓い」を読み上げました。佐々木さんに、平和に対する思いを聞きました。
英語でガイド始めた理由
8月6日、広島に原爆が投下されてから80年目を迎えました。朝日に照らされた平和公園には、多くの人が集まっていました。
佐々木駿さん
「たくさんの人が平和に関心を持ってくれたらうれしいなと」
6日の平和記念式典で「平和への誓い」を読み上げる佐々木駿さん。なぜ、駿さんが「平和への誓い」を読み上げることになったのでしょうか。
海外からの観光客向けにボランティアガイドをしている
駿さん
「あの石棺には、『安らかに眠ってください。過ちは繰り返しませんから』と刻まれています」
駿さんは、平和公園で海外からの観光客向けにボランティアガイドをしています。
駿さん
「無料で観光ガイドをしています。お時間ありますか?」
ガイドを受けた外国人観光客は、次のように話します。
メキシコ人観光客
「私たち外国人は、あまり多くは学んでいません。原爆が投下されたのは知っていますが、後に社会に与えた影響については知らなかったので素晴らしい説明でした」
スペイン人観光客
「非常に上手な説明でした。とても若いのに素晴らしいわ」
ガイド中、突然呼び掛けられる場面もありました。
外国人観光客
「握手してもらっても良いですか?式典でスピーチをするそうですね、おめでとうございます。活動に感謝します」
英語を話せるようになったきっかけは、生後7カ月から始めた教材でした。
生後7カ月から始めた教材で、英語が話せるようになったという
母・佐々木美緒さん
「自宅で遊んでいるうちに英語がしゃべれるように、いつの間にかなってました」
留学経験はなく、海外旅行にも行ったことがないといいます。
駿さん
「勉強みたいな感じじゃなくて、楽しんでいたら気が付いたら英語をしゃべっていました」
ガイドを始めたのは、小学2年生の時です。
駿さん
「原爆ドームを小さいころ初めて見た時に、どうしてあの建物はボロボロなのに壊されずにそのまま残っているんだろうって思ったんですけど。お母さんと一緒にインターネットや原爆資料館の中に入って、広島に原爆が落とされたことを知りました。せっかく広島のことが知りたくて来ている外国人が多いから、日本のことを伝えられたらいいなって思って」
これまでガイドをした外国人はおよそ2000人。そのなかで印象に残っていることがあるといいます。
駿さん
「2人の外国人が『はじめは核兵器のおかげで戦争が終わったと思っていたけど、君の話を聞いてやっぱり核兵器はなくすべきだって思ったよ』って言ってくれたことがあって。自分が話すことによって、誰かの気持ちが変わるんだなって」
ガイドでは、自分のひいおばあちゃんについても伝えています。
駿さん
「実際、私の曽祖母は被爆者です。彼女が逃げている時に黒い雨が降り出しました」
「ひいおばあちゃんの話を入れて、戦争が終わったとしても、その人に残る苦しみは一生続くということをより深く伝えています」
曽祖母の百合子さんが被爆したのは12歳の時。その後38歳で乳がん、60歳で大腸がんを患い、69歳で亡くなりました。原爆死没者名簿にも名前が刻まれています。
駿さん
「(Q.会ったことは?)ないんですよ。被爆者が自分の身近な存在にいたことに、すごいびっくりしました。もし原爆が落とされてなかったら、今なくなってしまった多くの命は、今ここにいたかもしれないんですけど」
6日の平和記念式典で、こども代表として関口千恵璃さん(12)とともに「平和への誓い」を述べる駿さん。平和についての作文をもとに、広島市内の小学生およそ1万人の中から選ばれました。
作文のタイトルは「平和な未来のために僕ができること」
駿さん
「最初は書きたいことがたくさんありすぎて、原稿用紙4枚くらいいったんですけど」
作文のタイトルは「平和な未来のために僕ができること」。一行目には英語で「たとえ一つの声でも真実に希望を込めて語れば、世界に変化をもたらすことができる」という言葉を書きました。
駿さん
「一人の力は小さいけれども、伝えた人がまた伝えることによって平和は広がっていくといいなって」
被爆者が少なくなるなか、これからも広島が経験した惨劇を伝えていきたいといいます。
2023年には、訪日外国人グループから「ハグしてもいいかな?」と声を掛けられました。
「事実を知って戦争の悲惨さや平和の大切さについて少しでも興味を持ってもらえるように話したい」
駿さん
「広島に原爆が落とされたことは知っていたけど、その下で何が起きたのか知らない人が世界中にたくさんいるので、何が正しいとか何が違うかとかじゃなくて、事実を知って戦争の悲惨さや平和の大切さについて少しでも興味を持ってもらえるように話したいなと思っています」
子ども代表「平和への誓い」
そして、6日に行われた式典で、平和への思いを世界に伝えました。
佐々木駿さん(12)・関口千恵璃さん(12)
「平和への誓い。いつかは訪れる被爆者のいない世界。同じ過ちを繰り返さないために、多くの人が事実を知る必要があります。原子爆弾が投下されたあの日のことを思い浮かべたことはありますか。
昭和20年、1945年8月6日午前8時15分、この広島に人類初の原子爆弾が投下され、一瞬にして当たり前の日常が消えました。誰なのか分からないくらい皮膚がただれた人々、涙とともに止まらない絶望の声。一発の原子爆弾は多くの命を奪い、人々の人生を変えたのです」
「被爆から80年が経つ今、本当は辛くて思い出したくない記憶を伝えてくださる被爆者の方々から、直接話を聞く機会は少なくなっています。どんなに時が流れても、あの悲劇を風化させず、記録として被爆者の声を次の世代へ語り継いでいく使命が私たちにはあります。
世界では今もどこかで戦争が起きています。大切な人を失い、生きることに絶望している人々がたくさんいます。その事実を自分のこととして考え、平和について関心を持つこと。多様性を認め、相手のことを理解しようとすること。一人一人が相手の考えに寄り添い、思いやりの心で話し合うことができれば、傷つき、悲しい思いをする人がいなくなるはずです。周りの人たちのためにほんの少し行動することが、いずれ世界の平和につながるのではないでしょうか」
「大人だけでなく子どもである私たちも、平和のために行動することができます」
「OneVoice。たとえ一つの声でも、学んだ事実に思いを込めて伝えれば、変化をもたらすことができるはずです。大人だけでなく子どもである私たちも、平和のために行動することができます。
あの日の出来事を、ヒロシマの歴史を二度と繰り返さないために、私たちが被爆者の方々の思いを語り継ぎ、一人一人の声を紡ぎながら、平和を創り上げていきます」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年8月6日放送分より)