プロテインパウダーからも検出、「食品中の鉛」から身を守る最善の方法とは? 毒物学者に聞く
プロテインパウダーやアップルソースなどの食品やサプリメントから鉛が検出されている/Farion_O/iStockphoto/Getty Images
(CNN) 食品に鉛が含まれているなんて、あってはならない――。誰しもそう思うだろう。
鉛への暴露は健康への幅広い影響が指摘されており、子どもでは発達障害や神経系の損傷、聴覚障害、大人では高血圧や関節痛、生殖障害などが挙げられる。
それでも、アップルソースやシナモンパウダー、プロテインパウダー、チョコレートなどの食品に高濃度の鉛が含まれていることを示す報告は後を絶たない。米食品医薬品局(FDA)は今年、ベビーフード内の鉛含有量の上限について新たな指針を策定した。
当然ながら、「そもそもなぜ私たちの食事に鉛が含まれているのか」という疑問が湧く。
鉛はどのようにして食品に入り込むのか
米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)によると、鉛は地球上に自然に存在する金属で、ガソリンや塗料、配管、化粧品、陶器、電池などに使用されている。
食品中の鉛は多くの場合、土壌に由来する。「最も一般的な理由は、鉛が他の金属や重金属と同様に、地中や地球の地殻に自然に存在する構成要素だからだ」。そう指摘するのは毒物学者で、ミシガン州立大学成分安全性研究センターの助教を務めるジョセフ・ザゴルスキー氏だ。
ザゴルスキー氏によると、一部の植物は土壌中の鉛を吸収して、自らの組織に蓄積しやすい性質を持つ。環境中の鉛濃度がより高い地域で栽培された作物は、より多くの鉛を含んでいる可能性がある。
しかし、環境内にある鉛の発生源がすべて自然由来なわけではない。ザゴルスキー氏によると、製錬などの人為的な活動が鉛汚染を引き起こすことも多く、鉛を含む農薬も存在するという。
「エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ」の上級科学者ターシャ・ストイバー氏は、有鉛ガソリンの使用でも空気を通して植物の汚染につながる可能性があると説明する。自動車用のガソリンからは鉛が排除されたが、一部の燃料には今も使用されているのが実情だ。
2023年には、一部のアップルソース製品のパウチに鉛が混入されたとみられる事案が起きており、何者かが食品に鉛を混入させて汚染が発生する場合もある。ただし、これはめったにないケースだ。
ゼロに近づける
重金属は環境内に存在するものなので、食品であれ何であれ、鉛への暴露が完全にゼロになることは考えにくい。ただしストイバー氏によると、鉛はわずかな量でも健康への影響がある。
FDAによれば、子どもは体が小さく代謝も未熟なため、暴露による健康被害を受けやすく、特に懸念が大きい。
FDAはこれまで、食事による子どもの汚染物質暴露を可能な限りゼロに近づける取り組みを進めてきた。米疾病対策センター(CDC)によると、鉛への暴露について安全とされる水準は特定されていない。
だがFDAは目安として、食事による子どもの鉛への暴露量を1日あたり2.2マイクログラム、妊娠可能年齢の女性では1日8.8マイクログラムとする基準を採用している。専門家はこれらの数値をもとに、暴露がどの時点で潜在的に懸念すべき水準になるのか、製品への注意喚起が必要かを評価する。
鉛から身を守る最善の方法
こうした食事からの鉛暴露に関する指針を家庭内で実践するのは難しく、自分が食べている食品にどのくらいの鉛が含まれているか正確に把握するのは困難だと、ストイバー氏は指摘する。
ストイバー氏が勧めるのは、食品内の鉛水準を定期的に検査しているブランドを選ぶことだ。またザゴルスキー氏によると、鉛や他の毒素から身を守る最善の方法は、多様性に富んだ栄養価の高い食事を心がけることだという。
多様な食品を取ることには二つの利点がある。まず、鉛を含む可能性が高い特定の食品を過剰に摂取するリスクを減らせる。
例えば今年初め、プロテインパウダーから鉛が検出されたとの報告があったが、こうしたプロテインパウダーをたまに利用する程度なら、1日3回プロテインシェイクをつくる人に比べ、それほど懸念する必要はない。
「プロテインパウダーはサプリメントという位置づけであり、食事ではない」とザゴルスキー氏は指摘する。
第二に、栄養価の高い多様な食事は、不要な元素に対する体の自然な防御機能を高める助けにもなり得る。人体は鉛より鉄を吸収することを好むため、食事に十分な鉄分が含まれていれば、消化器系によって鉛が体外に排出される可能性が高まるという。
「毒になるかどうかは量次第だ」とザゴルスキー氏。「人体は自らを守り、毒素を排出することに非常に長(た)けている。だから、体に必要な栄養素を与え、特定の食品を取りすぎないように心がけよう」