ゴールデンゲートブリッジ、人種差別禁止決議の廃止を検討
サンフランシスコの象徴的存在のつり橋、ゴールデンゲートブリッジを管理する特別区の代表が人種差別の禁止に関する決議の撤回を検討している。トランプ政権が橋の維持管理に必要な4億ドル(約580億円)の資金を凍結する恐れがあるためだ。
トランプ大統領は「人種で判断されない実力主義社会」の構築を目標に掲げ、多様性・公平性・包摂性(DEI)のプログラムを終了させる大統領令に署名している。
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トランプ氏の大統領令は今後、連邦政府の助成金契約に組み込まれる見通し。ゴールデンゲートブリッジの運営や維持管理を行うカリフォルニア州の特別区は耐震補強工事に必要な4億ドルを連邦政府に依存している。
特別区のゼネラルマネジャー、デニス・マリガン氏は、ゴールデンゲートブリッジは非常に有名なため、DEIに関する文言が注目を集めることなく連邦政府からの資金を無事に確保できると期待するわけにはいかないと語る。
マリガン氏は訴訟の検討もしたがリスクが高く、必要不可欠な資金の確保が遅れる恐れもがあるため断念したという。同氏は「われわれの価値観が変わったわけではない。ビジネス判断と言われるかもしれないが、将来の世代のために橋を守るという観点からの決断だ」と話した。
トランプ氏は、ここ数カ月にわたってサンフランシスコをたびたび批判している。ゴールデンゲートブリッジを一望できる公園を管理する団体の閉鎖を要求したほか、60年余り前に閉鎖されたアルカトラズ島の刑務所を再開するよう指示もしている。
現地紙サンフランシスコ・スタンダードが報じた内部メモによれば、マリガン氏はトランプ氏が署名した大統領令に従うため、二つの決議の撤回を推奨している。
決議の一つは、特別区は「黒人や先住民、有色人種が歓迎される安全な施設・サービスを提供する」という内容で、別の決議は、調達手続きにおいて「社会的公正」を考慮するとしている。
この二つの決議を撤回するかどうかは、今月27日に開催される特別区の理事会でメンバー19人が投票して決定する予定。
2020年に白人警官によって殺害された黒人男性ジョージ・フロイドさんの事件に対する怒りが、政府や企業がDEIを導入するきっかけとなった。しかし、トランプ氏はその撤廃を進めていて、小売り世界最大手の米ウォルマートや世界最大の資産運用会社ブラックロックなどを含む企業はDEIプログラムを縮小した。
首都ワシントンでは、共和党の議員が連邦資金の交付を停止すると圧力をかけたことを受け、路上に描かれた「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」の黄色い文字が消された。
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